2020年10月28日水曜日

日本循環器看護学会にて: 心臓移植レシピエントコーデイネーターと心不全看護認定看護師

10月も後半に入り関西も大分涼しくなってきました. 週末は好天続きで行楽地もかなりにぎわっているようで,先日は梅田界隈を少し歩いたのですが,何か特別の日なのかと思うくらいの人出でした. 新型コロナがまだ収束の気配が見えない中で社会活動ではかなり活気を取りもどしつつあるのかと思います. 特に小さな子供さん連れの親子が多く見られ何か心が温まる気がしました.

新しい働き場所勤務もそろそろ2ヶ月になりだいぶ慣れてきました. 心不全ケアチーム作りも看護部と共に始めていますが,チームメンバーを決めてもらって,ハートノートを見ながら準備段階です. 心不全の患者さんは結構おられますが,高齢,多臓器障害,独居,認知症,など一筋縄ではいかない方ばかりで,ハートノートを渡しても見てもらえるかどうか心配される方が多いので,まずは退院以後もフォローできそうな患者さんを選ぶことからは始めることにしています. 一方で,教材作りも大事で,心不全ケアチーム概要のpower pointを作り,解説付きにして病院の閲覧ファイルに入れたり,参考資料を配ったりなどを始めている段階です. 一方,近隣の大阪市立大学附属病院,府立急性期・総合医療センターなどの循環器専門医が集まる大阪市南地区の会にも参加し交流を始めました. この病院でのハートケアチーム作りはなかなかのチャレンジマターであり,遣り甲斐があると思っています. 楽しみがまた出来たというところです.

 

10月に入って学会活動も活発になってきたようですが,ほとんど,あるいは全てでしょうか完全Web開催になっています. 学会から特別講演依頼のあった10月上旬の第17回日本循環器看護学会(宇都宮明美京都大学大学院クリティカルケア看護学教授が会長)は京都開催で楽しみにしていましたが,最終的に完全オンラインになってしまいました. 講演自体は会場で話している雰囲気を出して40分ほどの独演会をさせてもらいました. 今日はこの学会の報告会とさせていただきます.

タイトルは,「心臓移植から見た心不全医療における看護師の役割と期待」,でした. 超高齢化社会と共に心不全パンデミック時代が到来しているなかで,心不全ケアには当然ながら多職種連携チームが重要で,そのなかで循環器に関係する看護師の役割を,心臓移植レシピエントコーデイネーター(RCo)と慢性心不全看護認定看護師について概説すると共に私見を述べさせてもらいました.

心臓移植RCTは日本移植学会が中心となり認定しているもので,始まって10年ほどになり,設立に関わったものとして注視していました. この機会に経過を調べたのですが,心臓移植のRCoは当初の認定者が10名でしたが,現在も全然増えていないことが分かりました. 増えない背景を考え,採用する心臓移植実施施設(移植施設は11)の病院の問題が大きく,看護部や病院長の支援が難しい事情があることも指摘しました. 心臓移植が年間100例に届こうとし,待機患者は800人を超え,移植後患者も400人はいる中で,全国で10名とは制度として成り立っていないと言えるわけです. ではどうしたらいいか. 私の提案は,移植施設がまず最低2名の心臓移植RCoを採用することです. 一方,植込み型補助人工心臓(VAD)の急速普及でVADコーデイネーターでもある人工心臓管理指導士(VAD-Co)制度が始まり,これまで400人近く認定されています. 移植施設とVAD管理施設(40以上ある)でVAD患者( 待機患者)のケアをしているわけです. その中心は臨床工学技士MEですが看護師も149人が認定を取っている現実があります. 即ち,この150人近くの看護師VAD-Coは心臓移植RCoの仕事を現場で支えている実態があるわけです. 心臓移植RCoの認定に高い壁があることから,このVAD Co資格を取った看護師が認定RCo資格を別枠ででも取れるようにする道(認定要件)を作ることも考えるべきでしょう. 仲間を増やす策を考えることを提案しました. これはその後の日本心臓移植研究会でも提案したところです.

 

希少価値も大事であすが,医療では何事もスケールメリットが大事で,そういう意味では慢性心不全看護認定看護師はこれからの心不全ケアに重要な役割を果たすことが期待され、既に限られた施設ですが実働しておられます. しかし,ここでも認定者はこれまで400人を少し超えたくらいでおそらく需要から見て予測の半数にも届いていないのではないかと思います. 実際,近隣の基幹病院でも一人おられたらいい方で,複数の認定者がいる施設はかなり限られているようです. ここでもスケールメリットを生かすまでに至っていないのが現実ではないかと思います. 一方,ここで認定看護師制度に大きな変換期が訪れています. 特定医療行為の研修と合わせた新たな認定看護師制度が日本看護協会から発表されています. より質の高い,治療(キュア)に関われる制度と思われますが,果たして認定者が倍増になるのか. ここでのバリアーは,すでに指摘されているように高額の受講料や認定料が個人負担であることと,数か月以上の研修機関での集合教育であります. その間,休職で参加したとしてもかなりに負担になるわけです. また,資格をとっても個人的なインセンティブはなく,モチベーションも湧いてこないのが現実のように感じられます. ここでもすそ野を広げるにはどうしたらいいか,ポスト(ウイズ)コロナ時代で集合教育をいつまで続けるのか,このタイミングでの関係者の制度改革への決断が問われるのでないか思います.

なお, 既に紹介した心不全療養指導士や既に動いている特別医行為研修修了者との棲み分け、差別化、についても私見を述べましたがここでは割愛します. このような部外者からの放談ともいえる講演となりましたが,どれだけ指導層に声が届くか,さらに現場の看護師や学会執行部がどう感じるか反応を聞きたいと思います.

私の病院での心不全ケアチーム作りの進捗は時々報告をさせていただきますのでご期待?下さい.