2016年7月30日土曜日

新専門医制度、先送り決まる


   暑中お見舞い申しあげます。 皆様如何お過ごしですか。7月も何とか複数の投稿となりました。なお、前回の薬剤師さん関係の投稿には、日本在宅薬学会の皆様から沢山アクセスがあったようで感謝です。

 新しい制度の開始は294月開始へと当初予定から1年先送りとすることが、リセットされた専門医制度理事会で決まり、公表された。日本外科学会の専門医制度関連の協議会でもこれが了承され、28年度はこれまでの制度で継続することも了承された。1階部分の専門分野(学会)の対応は基本的にはこれに従うが、これまで精力的に準備してきた学会はある意味前倒し的な移行も考えているようで、そこも今後の混乱の種になるのではないか。

新たな機構への出直しの実態が機構の社員総会議事録や新たな理事メンバーを見ると分かってくる。前にも書いたが、この制度改革はあくまで我が国の医師の卒後3年目から生涯教育の基本作りであり、質の担保と標準化であって地域医療や診療科偏在云々は二次的なものである。しかし、県知事や厚労大臣まで出て来るに至って、またこれまで傍観的であった日本医師会が中核的に乗り込んできてしまったのは何故か。本来求めてきた医師の質の担保と専門教育の仕組みを生涯教育の中できちんと制度化し、グルーバルな視点での我が国の医療の向上を図ったものが、一部の地区であろうが地域の自治体病院や中核病院の医師の不足に拍車をかけるという喧伝に惑わされたものと理解している。

私もかって新制度改革でもって診療科偏在や地域医療崩壊の是正を、と書いたことがある。これは何も行政に尻尾を振ったものではなく、医師のプロフェッションが何もしないで漫然としていたらそのうち地域医療を崩壊させたのは医師集団だと、社会からのバッシングが来ることを考えろ、という趣旨である。お上から指図される前に自分達が先取りしないと、ということであったが、杞憂は現実となったようで大変残念である。

正直なところ、新制度実施に向けた第一次機構理事会(今回解散したもの)の問題もあるが、広報と説明不足があったとはいえここまでひどい結果になったのは、根幹にある専門医制度改革理念と各医学系学会の思惑(立場、学会会員確保)の違いと共に、我が国特有の大学医局制度、大学院制度と関連病院人事、とこの制度改革とのミスマッチであろう。このところを正面切ってではなく、何とか柔軟に双方のメンツも保って、という思惑が瓦解してしまったともいえる。実際、新たな機構理事会メンバーを見ても誰しも驚くことは、アドバイザー的な役割を果たすべき人が理事になっている訳で、これまで積み上げてきたところを1年で軌道修正するには実務者的な人がいるのではないか。再任が二人だけというのでは卓袱台をひっくり返したに等しいのではないか。新理事会はまさに船頭多くして船山に上る、ということになるのではないか危惧するが、これまで理事として頑張ってきた方が新理事長であることが唯一の救いではないか。

というわけで、新たな機構の船出に対して厳しいコメントではあるが、こういう意見が既に出ていることは関係者の周知のことであり、後付けながら書かせてもらった次第です。

大変暑い日が続いていますが、皆様熱中症にはくれぐれもご注意を。と言ってもこれは自分へのことでしょう。

追記 日本外科学会の会員へのお知らせを掲載します。来年4月から後期研修を外科で開始しようとする人への案内ですが、旧制度で行うので問題ないとされています。 一方、新たな制度でのプログラムとして学会が認めた188についても見切り発車を認めています。来年開始の研修医はある意味ダブルスタンダードでトレーニングが進むわけです。この188プログラムは新機構での承認がまだ出来ていない訳ですが、それを仮発進させるということは、地域医療が混乱すると社会的問題化している中で、自分たちは何ら反省というか振り返りがないのはどうかと思います。外科希望者を大事にするということですが、自分たちを大事にすること、自己組織温存、という考えが気になります。








2016年7月24日日曜日

在宅薬学会

 暑中お見舞い申し上げます。7月になってやっと一つアップです。夏バテでしょうか。

今回は薬剤師のチーム医療のなかでの最近の動きについて、久しぶりのテーマですが報告します。


先般、大阪で第9回日本在宅薬学会学術集会がありました。理事長というか仕掛け人は大学医局の後輩の狭間研至博士です。「外科医、薬局に帰る」の狭間医師で、薬剤師のバイタルサイン講習会の推進者でもあります。超高齢化社会の医療のなかで社会性が高い在宅医療ですが、国も地域包括ケア施策やかかり附け薬局を提示しています。そういうなかで薬剤師の新たな役割が出て来るところを先取りして7年前に学会にしたわけですが、私は学術顧問という格好で兵庫医療大学在職中から関わっているところです。6年制薬学教育が始まって10年、新制度薬剤師が世に出されて4年になる計算ですが、新制度薬剤師の活躍の場として在宅がどういう位置にあるのかという興味もあります。またかねて提唱してきたチーム医療の在り方を考える上でも在宅医療は大変重要で、特に薬剤師の役割次第で在宅医療の改革も進むと思われます。

今回の学会のメインテーマは「薬剤師の果たす使命、負うべき責任」、としており、それを多方面から議論した学会でした。行政、医師を交えての議論で盛り上がり、個別テーマでは、在宅療養支援はもとより地域包括ケア、健康サポーと薬局とセルフメデイケーション、ポリファーマシー、薬薬連携、機能性食品、認定薬剤師、摂食嚥下障害、そして薬学実務実習、と多彩でした。学会の様子は学会のHPで見ることが出来ます(congress.jahcp.org)。全体に紹介はさておき、個人的に興味があったところを幾つかピックしながら、学会参加記、とします。

 行政からとして、厚労省に長くおられ今は国立がんセンター中央病院に移られた中井清人先生が講演されました。薬剤師への期待も大きく、在宅の現場から薬剤師が関与したらどう変わるかのエビデンスを作って日本の医療のなかでの薬剤師の役割を強めて欲しいという熱いメッセージでした。次いで、在宅でよく話題になるポリファーマシーについては、かかり付け医師、かかり付け薬剤師の連携でもって在宅患者の投薬一元化が求められ、これに対して現場からの種々の意見が交わされました。自治体病院では地域医療連絡支援室がこの問題を意識して薬剤師と共に取り組んでいるようです。この問題は薬剤の副作用とともに無駄な投薬、医療費無駄使い、という二面の問題がりありますが、処方を出す医師側への取り組みも神戸大学病院から提示されました。この学会の前に別の医療関係のセミナーで、臨床現場での薬剤師の役割、というものがあって参加してきたのですが、地元医師会のお偉方も来られていました。ポリファーマシーについては処方箋を出す医師側の問題意識はそう高くなく、特に開業医ではその傾向が高いのかと思ったのですが、実は中核的総合病院の薬剤部長さんの言ではこの課題への病院(医師側)の取り組みはあまり現実的ではないという話でもありました。この問題には地域性があるように感じました。

地域の中核病院の話としては、特別企画(ランチョンセミナー)で神戸中央市民病院薬剤部橋田亨部長の話がありました。地域の中核病院として確固たる実績を上げている病院ですが、その中で薬剤師レジデント制度について紹介されました。この薬剤師レジデント制度は私が兵庫医療大学時代に力を入れた一つで、その後どうなったかも含め興味があったところです。橋田部長はこのレジデント制度の牽引役でもあり、中央市民病院で実績を上げていることが良くわかりました。また全国的にも当初の兵庫医科大病院を皮切りに今やかなりの病院でこの制度が広まってきています。神戸中央市民病院では新卒者だけではなく、現役の薬剤師さんも参加していることからも薬剤師の生涯教育のかなで立場が認識されてきているようで大変嬉しかった次第です。6年生薬剤師の新卒者の就職先が調剤薬局やドラッグストア―にシフトして病院薬剤師への道が拡大していない現状で、このレジデント制度をどう活用するか、現場(大学病院など)の意識改革が要ると改めて感じています。まずしっかりとした処遇対応をしないといけないとのではないでしょうか。

 薬学教育についても講演があり、学生の実務実習の見直しがされるようで、平成30年のコアカリ改定の紹介がありました。これまでの5カ月間の期間を病院と薬局に二分して、それらの連携もなかったことから、この二つをかなり融合させるような柔軟な対応がとられるようです。それはそれでいいのですが、実習期間については事前学習を含め全体で6カ月というのは変らないようであります。当時から、いろんな席で6カ月では短いと主張してきたことを思いだした次第です。とはいえ、実習受け入れ病院や指導できる調剤薬局の数も含めた体制が整われない限りなかなか進展は難しいと思います。

 学会参加者が1500人ほどで、年々増えていて盛況ですがまだまだ小さな組織であり、ここ数年が正念場と言えます。バイタルサイン、チーム医療(多職種間連携)、かかり付け薬剤師、というキーワードに加えて次に何を持ってくるかが問われていると感じます。学会のテーマである「薬剤師の果たす使命、負うべき責任」を考えると、「社会が認める新たな時代の薬剤師作り」、でしょう。そのためには、認定制度を含めしっかりした継続教育と多職種連携のなかでの実績作り、が求められます。

 以上、摘み食い的な紹介でしたが、薬剤師は変るぞ、という熱気がむんむんとした学会でした。医師も頑張らねば、です。

 写真は、関係ないですがその前にあった福岡であった学会で、唐津まで足を延ばして、名護屋城跡を訪れてきました。真田丸に刺激されての訪問でした。