早いもので今年(2021年、令和3年)も残すところ後1週間となった。今年は新型コロナの第5波で日本中が翻弄された後、このまま収束か思いきやオミクロン株の登場で再び先行きが見えなくなっている。この一両日には市中感染も出てきて正月休みにも影響が出てきそうである。私の勤務先の病院も小規模ながら行政の要望に応える形でコロナ対応病床を作って軽症と中等症の患者さんを引き受けてきた。高齢や合併症がある方が多く、1週間以上の隔離管理で肺炎が治っても体が弱ってしまって元に戻れない、という現実を見てきた。
保健医療の国難的危機では、何度も書かせてもらったように公的ないし急性期センター的な病院に大胆な機能集約をすることが必要である。今また医療崩壊の予防線を、一般病院を巻き込んで体制を組み立てようとしているが、3-5波の時に学んだのは何だったのか。とにかく施設を増やすという姑息的な手法がまたぞろ始まろうとしている。保健所機能は限界があるなかで、成田空港管轄の保健所が濃厚接触者対応で右往左往している。フロントラインを保健所に任せることに限界があることは分かっているし、クルー船以来2年にならんとしているのに、である。
要旨:わが国の臓器移植は法改正後も深刻なドナー不足が続いているなかで、海外でのドナープール拡大への動き、特に心停止ドナー(donation after circulatory death, DCD)中でも生命維持装置を中止するcontrolled DCDが欧州を中心に腎臓だけでなく肝臓, 肺へと応用が進み、ここ5-6年で心臓移植でも始まっている。わが国では従前の死体腎移植でのun-controlled-CDCが行われていてその復興を移植学会が進めようとしている。
一方、心臓移植ではcDCDでないと移植が成り立たない。しかし、学会のDCDの議論に心臓は加えてもらっていない。何故除け者にするのですか、ということである。終末期医療での生命維持装置の中止は法律では禁止されていないが現実には広く行われるものではなく、まして臓器提供はとんでもない、という意見が多い。まず、心臓も加えて臓器横断的にドナープール拡大のためのDCD導入を検討して欲しいという訴えである。しかし移植学会は腎臓と肝臓の専門家の意見が主流のようで、私の発表への反応は、ごく一部の提供側の先生以外は今一つである。問題は肝心の心臓移植担当者がこれに及び腰であることである。胸部外科という南江堂が発行している専門誌の2022年度第1巻で「心臓移植の今」という特集の企画があり、いい機会と思って投稿した。阪大第一外科教室では曲直部先生や川島先生の教授時代からDCDの心臓移植の動物実験が行われており、私も盟友の白倉良太先生と共にこの研究を引き継いできたので、3名の連名で投稿した。心停止ドナー(DCD)からの心臓移植を我々はどう考えるか、で1月には発行される。
ということで、今年の締めとさせて頂く。
皆様良いお年をお迎え下さい。
PS:年末には北海道はニセコでの初滑りも出来たので少しは気分が晴れた年末となった。