2023年2月20日月曜日

臓器斡旋事件の背景には深刻なドナー不足 国の予算は

  いま移植関係では海外での臓器斡旋が事件になって、日本移植学会などの関係学会は臓器売買をやめるよう声明を出し、政府に働きかけています。厚労大臣も動きました。今日にニュースでは国会が動き出して法改正という言葉も出てきています。でもこれはこれとして重要で対応しないといけないとは言え、根本は臓器提供が少ない、深刻なドナー―不足があることに、メデイアも学会関係者も社会に訴えることを忘れているとしか思えません。関係学会が中心となってドナー不足解消に国は真剣に対応すべきであることを社会に働きかけるいいタイミングと思います。死の定義や臓器移植法の更なる改定(臓器斡旋関係以外)といった社会的混乱を生じる手法ではなく、国の予算が足らない、という単純かつ明快なキーワードを軸にし、提供側も交えて医学会がまとまって動く、そのきっかけを作って欲しいしと思います。

 こう言っても行政側はこれまで種々の施策でもって対応し、提供数は右肩上がりになっている、と言われます。それは認めますが、肝腎のアカデミアの動きはどうでしょうか。日本学術会議の臓器移植に関する提言は総花的に諸々のことを書いています。ここで私が指摘したいのは国が出す臓器移植関連のお金の話がないことです。国家予算として臓器移植、脳死臓器提供になりますが、そこの額が妥当なのか、国際比較するなどの検証がされていないと思います。現状から見て妥当である、と人は反論するかも知れませんが、年間の臓器提供数を倍増、いや5倍にする、人口100万人当たりの年間提供数を少なくとも5%(現在はやっと1%弱)にする、といた抜本的な対応にはどれだけ予算がいるかの試算が要るのです。わが国の行政の予算の仕組みは、全て実績主義で、目標に達しなければ削減ですから、臓器提供に当てもなく倍増なんて馬鹿が言うことだといわれるでしょう。そうでしょうか。臓器提供を確実に増やすには提供施設の5類型のなかでの提供できていない施設を減らすことが最重要という意見もあります。さらに現状で頑張っている施設にも手厚い支援が必要です。都道府県ドナーコーデイネーターを増やせば提供数は確実に増えるのでは明らかです。スペイン方式が世界のお手本です。こういった下支えをする現場への予算が根本的に少ないのではないですか。

臓器斡旋事件をそれだけで終わらせるのではなく、この際臓器提供対策の見直しも必要です。 そして国の予算からみた臓器提供の課題の分析が必要です。