2014年9月17日水曜日

iPS細胞移植の世界初の臨床応用


 少し遅れてしまいましたが、iPS細胞の世界初の臨床応用が神戸で行われました。理化学研究所と先端医療振興財団先端医療センター病院が連携して実現した再生医療の新たな道を開く輝かしい一歩と思います。網膜の難病である加齢黄斑変性症に対するiPS細胞から作った網膜色素細胞移植の臨床研究で、昨年6月に国の審査機関が承認してから約1年で実現されました。理研の高橋政代プロジェクトリーダーと神戸中央市民病院栗本康夫眼科部(先端医療センター病院統括眼科部長)とタッグを組んで第一例の手術を無事成功させたことは素晴らしことと思います。患者さんの皮膚細胞からまずiPS細胞を作ること、そしてそこからから網膜の細胞を誘導して培養、さらにがんになる可能性を最大限少なくしてここまで来た高橋線先生チームの努力も素晴らしいですが、細心の手術が求められる網膜への移植手術を難なくこなされた栗本部長の手腕にも敬意を表します。

記者会見では、栗本部長が淡々と報告する一方で高橋リーダーは女性らしさを見せながら今後への意気込みを話されるなど、京大同級生同士のいい雰囲気を出されていました。STAP問題で揺れた理研の一員である高橋リーダーとしても、理研の再興につながって欲しいという気持ちも表れていました。本当に良かったと思います。

iPS細胞の開発者でノーベル賞受賞者である京都大学の山中伸弥教授の協力による快挙ですが、山中教授も記者会見ではこれからが大事であると厳しい表情の中でうれしそうな一面も見せておられました。細胞が生着し網膜細胞として機能するのか、効果はどうか、そしてがん化の副作用はどうか、これからが注目されます。第二例、第三例が行われ、この臨床研究が安全性の検証という大きな目標があるとはいえ、やはり患者さんの視力がどう回復していくのかも当然ながら注目されるわけで、安全性も含めて成果が期待されます。
   iPS細胞の臨床応用はこの神戸での網膜への移植を皮切りに、今後は神経や心臓などへの応用が続くわけで、新聞記事でもその予想を熱く書いています。心不全を対象として阪大の澤教授のiPS心筋細胞シート移植が注目度も高く、また神経系ではパーキンソン病や脊髄損傷、目では角膜再生、も期待されています。今回の移植手術成功は再生医療への期待を一気に高めていますが、関係者の発言の通り、これからが大事であり、一つ一つ検証しながら進まれることと思います。

いつもながらの視野の狭いコメント?締めたいと思います。社会やマスコミが再生医療へ大きな期待を寄せる中で、心臓や肺の病気で明日をも知れない患者さんには臓器移植しかないという現実もあります。先週は日本移植学会が開催され、学会としては50年の節目であり、これまでの回顧と次の50年を考える企画がありました。臓器移植は肝臓や腎臓では生体移植がありますが、それでも多くは他人の臓器(亡くなった方からの提供)を頂かなくては成り立たない医療です。今回の         iPS細胞移植の成功をお祝いし再生医療これからに期待する中で、臓器移植のことも忘れないようにして欲しいと思います。脳死からの臓器提供はまだ年間50例に届くかどうかという状況です。50年先には再生医療と人工臓器が中心になるとは思いますが、今の現実も直視することが大事と感じました。

いずれにせよ、神戸の医療クラスターの一員としても(公益財団法人神戸国際交流財団)、今回の世界初のiPS細胞移植手術成功は素晴らしく、大変嬉しかったです。繰り返しますが、高橋プロジェクトリーダーと栗本部長による記者会見は、熱くならず何となく爽やかで、良かったです。

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