もう今年も2月に入り、一昨日は立春、厳しい寒さもやや緩んできたようです。今回は読売新聞の1月31日付けで出された大阪本社からの提言に絡んで、表記の再生医療と産業化についてコメントしたいと思います。
タイトルは、「地方回帰へ文化力生かせ…読売新聞大阪本社提言」で、人口減少、東京一極化、などのなかで関西の復権を何とかしようということで、有識者組織「関西よみうり懇話会」の「地方の未来を考える委員会」で交わされた議論を踏まえ、専門記者らによる研究会で地域再生方策を探ってきた、ということです(記事)。5つの柱があり、私が注目したのは「大学を活性化の拠点にせよ、1iPS細胞の産業化を急げ」である。説明では、産学連携で企業や研究機関の連携を強め、イノベーション(革新)を起こし、なかでもJR大阪駅北の再開発地域「うめきた」2期地区に産学の橋渡し機能を備えた公的機関を誘致し、研究成果の事業化を支える拠点を整えたい、とあります。
この背景には、京都大学の山中教授率いるiPS細胞研究所の存在が大きく、さらに再生医療への応用を進める神戸や大阪での活動もあり、関西の大学は学術のみでなく産業という面でも日本の牽引役を果たし、関西復権のキーになる、という筋書きである。iPS細胞の産業化に向けた研究開発が急がれるとし、起業家精神を養う教育プログラムを充実させて大学発ベンチャーを増やしていくほか、導入が進む「地域学」に地域支援活動を組み込み、地域の担い手を育てる役割も求められよう、と書かれている。
私の言いたいことは、提言で言う大学発べンチャーの育成や再生医療研究の産業化は、果たして大学の頑張りだけで出来るのか、ということである。確かに再生医療新法で臨床治験への道が近くなり、保険診療への取り入れによる研究成果の産業化が促進されようとしてきている。そういうなかで、大学も多額の国や他の競争的資金を集めて拠点化してきている。大学の活性化は地域振興に繋がる、ということから、大学にはっぱをかけている。
再生医療と産業化については先に豪州メルボルンでの展開について紹介しそこでも触れたことであるが、例えばiPS細胞の培養については幾つかのベンチャーが企業として参加し、国際的に活動している。その背景に、財政的優遇措置があることは先に指摘した。我が国は確かに先駆的研究推移には多額の研究費を投入してきているが、産業化については具体的にどういう課題があり、いかなる施策が求められるか、という視点での議論が少ないのではないか。
新聞社の提言も結構であるが、大学に頑張れというからにはそこに潜在する我が国特有の課題の分析や海外での実態のレビューが欲しい。それがないと、せっかくの提言が打ち上げ花火になるのではないか。海外での(特に豪州や東南アジア)ベンチャー企業への税制優遇措置はどうなのか、規制緩和策は、といったことである。かかることは、既に国が(経財産業省)が海外事情の調査をしているはずであり、知る人は知っていることである。そこを乗り越えて前に行くには、国や地方行政は何をすべきかの具体的提案が出てきてほしい、というのが私の感想である。新聞社の役割は提言までで、後は大学や行政がすることです、ということなのか。
先端的医学研究の産業化には、国の医療制度そのものも関係してくる。国民皆保険制度と先進医療の推移とは拮抗するところもある。革新的医療が産業化に結びつけられたら、最終的に病気が減り医療費が抑えられる、というシナリオがいつ実現するのか。
何れにせよ、再生医療の産業化はまさに今始まろうとしていて関西が牽引していることは素晴らしいことである。
読売新聞の記事)(1月3日関西版朝刊1面)の一部を紹介します(勝手に使っていますが)
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