2016年3月31日木曜日

成人先天性心疾患への心臓移植


 今日で3月も終わりで、明日から新年度です。世の中は時代の変換点にあったり、人では新旧交代も多いのですが、自分自身では28年度は何か新たに目標があるわけでもなく、何となく新年度が始まるという雰囲気です。後期高齢者群に入るので健康に気をつけないといけませんし、27年度は振り返ると体の故障に明け暮れた年であったので、まずは健康維持を目指す、というところです。高齢者の医療費増に加担しないようにしたいです。
今日の新聞で、成人の先天性心臓病の方への心臓移植が行われたことが報じられています。国立循環器病研究センターで50歳代の先天性心疾患の患者さんに心臓移植手術が成功裏に行われたということです。この成功に心より敬意を表します。この後の経過が良いことを願っています。さて、記事にはこのような患者さんへの心臓移植は我が國では大変まれ、と書かれています。実は私が阪大で心臓移植を担当した時の一人が、この成人先天性心疾患でした。心臓が右側にあったりする複雑な解剖で移植術に苦労をしました。手術は無事終わったのですが、4ヶ月後に感染症などで亡くなりました。ということで学術的にきちんと報告していなかったものです。私が退職後も長らく報告がされないまま放置されていたのですが、私の責任もあって昨年に症例報告をまとめました。長期生存例ではないのですが、その概要を紹介する意味があると思ったからです。この症例報告の1ページ目だけ紹介でお許し下さい。今後増えてくるこのような症例の心臓移植に何か役立てれば有り難いです。

桜もどんどん咲き出して、この週末は関西も満開近くなるでしょう。健やかな春の到来です。冒頭の話しと異なりますが、明日から心機一転、また何か挑戦して行きたいです。近場の桜も紹介します。


2016年3月14日月曜日

人工知能が囲碁でも世界一を破る

 奈良では東大寺二月堂のお水取りも済んで、いよいよ春到来ということですがここ数日は寒波の再来で道行く人もマフラーが放せないようです。私は例年ではこの頃では雪上での日が2週間近くなるのですが、今年は暖冬と言うより私の体の事情でまともにスキーで滑ったのは2-3日と異常なシーズンでした。ただ、先週は役員をしている全関西学生スキー選手権大会で野沢温泉におりましたが(4日から9日)、雪不足でアルペン会場が変更になったり、強風で一部中止になったりしましたが、対校戦も無事終了したことで地元の方々に感謝しながら帰ってきました。この関西学生スキー選手権大会は今年で86回にもなる長い伝統がありますが、最近は関西(西日本といってもいいですが)の大学で体育会に入って競技スキーをする学生も少なくなりました。とはいえ何とか400名ほどの登録選手も確保でき大会も盛り上がりました。
3月に入ってこのブログのアップが出来なかったのは上記のせいもありますが、最近はなかなかテーマを見つけるのが難しくなっているのが現実です。そう考えている中で、面白いニュース、がありました。面白いというか凄いことと言った方がいいでしょう。人工知能(AI)が囲碁でも世界一の棋士を連破したといニュースです。新聞では一面トップ扱いで、まさに人工知能が人間の思考能力を越えた日でもあります。深層学習(Deep Learning)という科学的手法がスーパーコンピューターと連携して、新たな人工知能の世界が現れていることに驚きます。
さて、誰も考えますが「AIは医療にも入ってくるのか?」ということです。当然入ってくるでしょうし、従来のコンピューター医学や医療情報の世界が変わると思います。究極は、ロボットとAIの連携で医師は必要なくなるのか、ということです。どれだけお金をかけるのかにもよりますが、流れはそういう方向に向くでしょう。医療とコンピューターは私の学生時代に既に内科のある教授がその将来性を指摘し、診断コンピューターについては神経疾患の診断ではすぐにも出来るような話しでした。50年経ちましたが医師に変わるIT技術の普及は実現していません。しかし、今のAIの登場では話しが違うようです。以下、私なりに20-30年後の医療現場を想像してみます。

1.    総合診療の診察室では初診患者さんが来るとまずロボットが主訴や症状、既往歴、簡単なバイタルサインをとります。その後で診察医(あるいは専門ナース)が登場して確認した後、検査を進め、総合判断もまずロボット(AI)が出して、専門医が確認して患者さんに説明、という流れになる。
2.    癌のような複数の選択肢がある場合、医学的根拠からその患者さんの最適の治療と予後が即座に出てきて、医師は質問へ回答や説明の補助を行う。
3.    癌に限らず神経変性疾患や腎疾患、糖尿病、高血圧、など、診断から最適治療法の選択までは格好の対象となる。
4.    診断から治療法の選択まではいいが、治療となるとどうか。特に外科的な領域はどうなるか。ロボット手術はAIほどは進歩しないと思うが、読み違えになるかもしれない。眼科、耳鼻科、整形外科、脳外科、など沢山の外科系技術、内科でも内視鏡治療やカテーテル治療は人が関わらないと出来ない技術で在り続けるのか。

こうなると診断面でのIT化(AIの前段階)が進むと、医学教育はどうなるのか。自分で触って、自分で検査所見から診断し、治療を進める、という基本のトレーニングは今と同じようにしておかないと、とんでもないことになるのでは。AI機器の端末が地域医療の現場にくまなく配置されるのか。医師不足の地区はその恩恵をより受けるのか。そして医師の裁量は何か、となってくる。また、医学教育は今のまま6年で続くのかも興味がある。学生が全ての知識を頭に入れて置く必要があるのか。とはいえ、iPadの様なものが眼鏡に組み込まれていて患者さんに対応する姿は想像したくない。AI技術をどう活用し、費用対効果(医療経済)を高めるかも問われてくる。心のこもった医療はロボットでは出来ないがAIは出来るのか。

少なくとも言えるのは、医師過剰の時代になるであろう。今の半分で十分でと言う時代が到来するであろう。一方でAI医療を補助する専門の看護師や新たな職種は増やすことになる。医師が必要なのは過疎地や在宅医療、遠隔医療ではなかろうか。外科系も今のままの数が必要とは思えない。ITAI技術が進めるなかで、医学部の定員は徐々に減らされていくのではないか。勿論、お金の掛かることであり、Google社のソフトが日本の医療を席巻するようになれば大変である。この世界では日本は遅れているやに報道されているのが懸念される。AI導入は医療費削減になるのか? 医師の数を減らせばいい、といったことになるのかもしれない。何か恐ろしい話でもある。現実的にはAIというより従来のIT医療がまず必要で、これを進めるのが先決であると思う。こういう発想がそもそも古くなるのかもしれない。ここでも発想の転換が大事であり、ダーウインの言う、変わることが出来るものが生き残る、ということを思い出した。

ということで、AIの登場で医療はどうなるのか、想像をたくましくして好きなことを言わせてもらったが、年寄りよりも若い人が考える大事なことになってくるのは間違いないであろう。

写真は野沢温泉スキー場での関西学生大会最終日の写真。母校の阪大チームの一部残留をOBとともに喜んでいるところです。FBからの転用です。



3月28日のネットニュースで(読売新聞かったのきじでしょうか)、AIの診療での応用が自治医科大で開発されたと言う記事がありました。やはり総合診療分野での取り組みです。
 

  人工知能で診療サポート、自治医大などが開発