コロナ騒動で明け暮れているうちに8月になってしまいました. 何か書こうと思ってもコロナコロナでは息が詰まりますし, 我が国の対応を見ていてもいっこうに新しい道を開けずに堂々巡りで, ほとほとあきれて何か言う気持にもなれません. ということで, 今月が話題を変えてみます. Covid-19で学会が軒並み中止かあってもWeb開催です. 先般も3月から8月に延期された日本循環器学会総会では幾つか興味あるセッションを聞いた中で, 一つ紹介したものがあります. それは私が現在取り組もうとしている心不全地域連携であり心不全緩和ケアに関係するものです.
今回紹介したいのは日本循環器学会が中心となって立ち上げようとしている心不全療養指導士制度です. 一昨年でしたか, 循環器疾患(脳卒中を含む)対策特別法が成立した後の関係学会としての対応の一つです. 病院, 地域, 在宅における慢性心不全患者への支援をサポートする学会認定制度で, 多職種連携に加わる新たな資格制度です. 心不全パンデミック時代において, 心不全チーム医療を支え, 増悪と再入院を少なくし, QOLの改善を目指すものです. 2021年度から開始するので今年に最初の試験を行うのですがCovid-19の影響でオンラインになったようです.
具体的なことでは, 医師以外の医療専門職が, 各々の専門職が持つ専門知識と技術を活用しながら, 心不全患者への適切な療養指導を行うと謳われています. 受験資格は看護師, 保健師, 理学療法士, 作業療法士, 薬剤師, 管理栄養士, 臨床工学技士, 社会福祉士, 公認心理師, 歯科衛生士, の国家資格を有するというのが資格の基本です. そして, その他の条件には, 日本循環器学会会員(正会員, 準会員)で年会費を納めていること, 現在心不全療養指導に携わっていること, などです. E-Learningでの研修も必要とのことです. 来年度からどういう方々が資格を取って心不全チーム医療に参加するのか楽しみです.
ということで, 心不全, 特に慢性心不全で在宅管理が必要な場面での活躍が期待されると思います. しかし, この玉虫色の制度も実際に根付くにはかなり年月が必要でしょう. これだけ多彩な専門職の参加で一体チームはどうなるのか. やはり次はこれらの方々からコーデイネ-ター役が出るのでしょうか. また既に看護師には心不全認定看護師があります. 心不全ケア領域で看護師に二つの認定資格が混在することになり, どう棲み分けるのでしょうか. また, この資格を持った人がチームに加わると診療報酬加算が付くのかも大事なことです. 心不全ケアチームへの参加する医療職者が増え, チーム医療が発展していくでしょうが, このように沢山の課題も見えてきます. 資格筆記試験を通って認定された方が, 新たにチームに加わるには時間がかるでしょうし, 医師側がどれほどその役割を理解し育てていくかが問われます. 当面は, 現在動いている心不全ケアチームのなかの専門職者がこの資格を取ることで在宅管理を含め円滑な包括的なケアへと進むステップにはなることが期待されます.
私はこの制度の発展に期待する一人ですが, 一方で些か, あるいは大いに失望したことがあります. それは受験条件のなかにある日本循環器学会会員資格です. 医師の専門医制度でも, 学会資格を強要するのは時代遅れである, という指摘が長らくあるなかで実際は学会認定制度が続いています. 更新要件でもしかりです. 学会は専門医制度で経済的に潤い, 勢力を強める構造はポストコロナ時代でも続けるのでしょうか. そういうなかで, 心不全療養指導士制度では真っ向から学会所属(会費納入)を基本条件にしています. 個人的には大変残に思わざるを得ません. 一歩下がって, スタートは仕方ないとしても, 5年の経過措置とする位の度量はないのでしょうか. E-Learningや教育ツールの使用や試験には自己負担も必要でしょうが, この資格を取れば会費無しで学会に参加出来るようにするとか, 継続教育に参加出来るかとか, 天下の日本循環器学会においてこの英断が何故出来なかったのか, 一度幹部の方に聞いてみたいと思っています.
宝塚地区の心不全地域連携プロジェクトもCovid-19で立ち遅れていますが, そろそろ動き出すようです. しかし, 感染者がまだ増え続けている中で, どういう動きをするかが現場に問われています. 停滞をコロナのせいにしてはいけないと思います. 逆に, この時こそWith Coronaでもって前に進むことが必要と感じています.