前回の宿題であります、循環器学会心臓移植セミナーについて少し紹介しておきます。なお、詳細は日経メディカルの最近のウエブ版に、「日本人の心臓移植、2013年の実績は41人と過去最高に:補助人工心臓の位置づけを見直す議論も必要」と紹介されています。http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/gakkai/jcs2014/201403/535581.html
このセミナーは日本循環器学会が我が国の心臓移植のレシピエントの元締めの機関で、特に適応判定において公的な審査機関になっていることから、毎年実態の紹介がセミナーでまとめて行われている。また、普及啓発の役割も大きい。今年はもう10回目であるが、法律が変わって脳死での臓器提供が実質的に増えた昨年度のまとめであり、また植込み型補助人工心臓の保険適応(心臓移植へのブリッジのみ)も始まったことで、新たしいステージになったことから、注目されている。会場はやや狭いところではあったが、会場に入れない方もおられるくらい盛況であり、関心の高さを示していた。
上記の紹介にあるように、心臓移植はもうすぐ50例に届きそうな勢いであるが、その一方で待機登録も増えて300例に達している。待機期間は減少する傾向にはなく、依然として3年近く、殆どが補助人工心臓からの移植である。また、登録患者さんの年齢層が上がってきて、ピークは50歳代というのも特徴である。それは、幹事の岐阜大西垣先生によれば、まず補助人工心臓装着のための登録が増えているためではないかという。発表の中でも、サブタイトルのように補助人工心臓についてのリーダー施設である、東京大学、国立循環器、大阪大、そして東京女子医大から現状の紹介があった。植込み型の管理も良くなって、成績は向上してきて、永久使用に匹敵するという見方もあるが、一方では年齢が高くなって合併症への反応が弱るのかどうか、植込み早期に合併症も多い傾向にあるともいえる。私は、フロアーから、移植適応年齢が上がっていることや将来の永久使用を考えると、高年齢層への植込み型の課題もあるのでは、と指摘させてもらった。
最後に、日循の心臓移委員会の委員長である、磯部東京医科歯科大教授から特別発言があった。その要旨は、ドナー不足についてであり、先の日経メディカルによると、2009年の国民100万人当たりの年間心臓提供数ではオーストラリアが8.6人、米国が7.3人、ベルギーが6.1人などという中で、日本は0.37人と極端に少ないのが現実だ、と紹介されています。下記の心臓移植研究会HP資料参照。 一方、臓器提供全体の数の方がインパクトがあるかと思いますが、その数では2004年には米国は人口100万あたり年間約25人で、欧州は殆どが10を超えています。日本は1以下でです。欧州移植機構の資料も添付します(http://www.eurotransplant.org/ 2012)
いずれにせと、ドナー不足をなんとか改善しないと我が国の心臓移植には限界があることを訴えておられ、6月には学会としては異例ではあるが、ドナーアクションの公開セミナーも企画されている。
いずれにせと、ドナー不足をなんとか改善しないと我が国の心臓移植には限界があることを訴えておられ、6月には学会としては異例ではあるが、ドナーアクションの公開セミナーも企画されている。
最後に、自分なりの感想をフロアーからの一般循環器内科医の意見を聞いてまとめる。心臓移植は確かに尊いドナーの善意に依存し、その臓器を誰に移植するかは倫理的にまた社会的に疎かにできないことであり、それを所掌している学会関係者や選ばれた移植実施施設は大きな責任がる。しかし、学会や施設側と一般の循環器関連の医師との間になにかしら壁が存在しているように感じられる。言い換えると、まだまだ一般の循環器診療と心臓移植の現場のギャップが大きいということではないかと感じる。学会関係者は大変苦労をしているが何かしら上から下への目線になっていないか、気になるところがある。このギャップを埋める上でも植込み型補助人工心臓がもっと普及されていくべきと感じた。
ということで、25年度も最後になりました。4月から心機一転、医療事情の紹介に努めますので今後ともお付き合いください。
見にくいですが,欧州の国別臓器提供数です。下の数字は人口100万当たりの年間提供数で、クロアチアが34.3,ベルギーが29.0,ドイツは12.5(2012年)です。なお、ここにはフランスとかスペインは入っていません。スペインは30以上を維持してこれまで世界のトップでした。この集計全体では人口総数1億3千万で提供総数は約2000です。日本の人口は幾らでしたか? 日本の臓器提供数は年約50です。人口はあまり変わらないのに欧州は提供数が40倍です。
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