今週は月曜から米国カリフォルニア州サンディエゴに来ています。国際心肺移植学会(ISHLT)への参加で、学会自体は11日の木曜からですが、その前の3日間は教育セッション(アカデミー)があり、今年は補助人工心臓に集約されていたので月曜から来ています。サンディエゴには成田から直行便があり、伊丹で最終地までのチェックインができるのでかなり楽に来れました。この学会は1981年に始まっている歴史の長い心臓・肺・心肺移植の最大の学会で、2000年には大阪で開催されています。開催地は米国とカナダで2年やって3年目はヨーロッパに行くというパターンです。現役時代は毎年という感じでしたが、今でも2-3年に一回は参加しています。サンディエゴは2011年にも開催されていて参加していますが、当時のことは兵庫医療大学長ブログで紹介したと思います。他の学会でもサンディエゴには何度か来ている所で、カリフォルニアの青空のもと今回も学会の合間にアウトドアーも楽しんでいます。
以下は途中までの印象です。参加者は年々多くなっていて今年は異常なくらいの数で2800人と紹介されています。演題も1500を超える応募があって76%の採択です。会場も6つに分かれ、ポスター演題も多く、幅広く聞くということが難しく、しかも補助人工心臓のオンパレードで何か人工臓器学会に来ている感じです。何故か? それはドナー不足が世界も深刻で、日本もそうですが補助人工心臓などの機械的補助がないと心不全患者が心臓移植に到達できないことや、もっと大きなことは心不全の最終治療は補助人工心臓で、という傾向が強くなっていることです。そこには沢山のデバイス企業が参入して小型で耐久性のある植込み型補助人工心臓を登場させています。かっては免疫抑制剤の製薬企業が幅を利かせていたのが、今は人工心臓関係の企業が大きな顔をしています。こういった企業の隆盛が学会を経済面で支えているという感じです。人工心臓だけでなく、肺移植では、脳死ないしは心停止後の肺を体外で灌流させて臓器を無駄にしない工夫が進んでいます。
ドナー不足と言いながら、世界では昨年度には心臓移植が3800肺移植が3500例も行われていて、米国では年間7000件近くの臓器提供が有り、心臓移植は2000例くらい、肺移植もほぼ1700例と大変な勢いです。かっては心臓移植での補助人工心臓のからのブリッジは20%程度だったと思いますが、今は40%を超えてきていることから、補助心臓のマーケットは拡大している訳です。日本では移植へのブリッジしか植込み型補助心臓は認可されていませんが、米国や欧州では(英国以外)永久使用(Destination
Therapy, DT)が盛んで、5年を超えて移植なしで生存して社会復帰している方も多くなっています。今回の出席は、日本でのDTについての議論おすすめ方について、自分なりにまとめておくという目的がありました。ドイツからのDTの紹介では、80歳を超えた方が補助人工心臓のおかげで人生を満喫している姿の紹介がありました。日本ではまず心臓移植の適応年齢の上限を超える65歳以上が検討されるでしょうが、上限をどうするかは全く議論されていません。例えばここで70歳までするようなことがあれば、それは年齢差別age
discriminationになる訳です。ドナーの臓器を頂くからには年齢制限があってもいいでしょうが(海外ではあまり厳しくはありません)、DTの場合は医学的なある程度の標準はあってもテクノロジーの進歩を享受できる権利で年齢制限を付けることはできないでしょう。健康保険の治療で年齢制限があるものはないはずですし。
今年から日本で採用になった小型の植込み型補助心臓のJarvik2000というユニークなデバイスがありますが、展示ブースに行くとジャービック先生(人工心臓のパイオニアー)がおられました。その横におられるのが何と7年でしたか長期に補助されているフランスの方でした。この機種は体外に出すケーブル(バッテリーとコントローラーに繋ぐ)をお腹ではなく耳の後ろの骨を通して出していて、普通にお風呂も入れるし、プールで泳ぐことも出来る素晴らしいものです。日本ではまだこの耳の後ろに出す方法は取られていませんが、今回は直接その患者さんとお会いして、まさに実物を拝見しました。写真はジャービック先生と時差ボケ顔の私の間におられるのがその方です。ベルトのところにバッテリーとコントロ-ラーが見えると思います。テクノロジーの進歩には圧倒されます。
ドナー不足の問題が深刻ななかでの人工心臓の役割はどんどん広がっていますが、といって海外では脳死からの移植が基本でありドナーを増やす努力が続けられています。今回は、従来の米国、カナダ、欧州以外に、中東、東欧州(ロシアも)、アジア(インド)などの国の成果も発表されていました。結構の数の臓器提供が進んでいて、日本が一層取り残されているという感じです。ロシアの発表を見に行ったのですが、ポスターは貼ってなく、誰もいませんでした。
植込み型は日本でもう4種類も認可され、また新しいものの治験が始まるようです。どういう補助人工心臓を使うのか、各施設は頭を悩ますのではと思われます。日本発のエヴァハートについて、まとまった発表がされてました。治験後はもう100例にも達していて、合併症も少なく、その利点を海外の方が再認識したようです。同じ日本人として誇りに思いました。
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