早くも12月になってしまいましたが、皆様如何お過ごしですか。突然の衆議院総選挙が飛び込んできていっそう慌ただしい師走になりました。昨日より寒波も訪れて交通等大変でしょうが、北海道や東北のスキー場でも今週末にやっとオープン出来そうな気配です。さて、この月曜日(12月1日)に国際救急災害シンポジウムというのが大阪梅田のグランフロントであったので参加してきました。近畿大学医学部救急医学講座の平出淳教授(附属病医院救急救命センター教授)の主催で、同教授が阪大救急部出身でもあり、またテーマが人材養成と言うこともあって、お誘いを受けての参加でした。いろいろ面白かったので少し紹介してみます。
このシムポジウムは文科省の課題解決型高度医療人材養成プログラムに採択されたもので、今年から5年間続きますが、大阪市立大学や旭川医大もメンバーです。参加したシンポジウムは災害医療における人材養成と言う副題で、米国のサンデイゴから災害医療での草分けでDMAT(Disaster Medical Assistant Team「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」)構築でのリーダーでもあるIrving ‘Jake’ Jacoby(ジャコビー)名誉教授の基調講演と、もう一方はイタリアはミラノの近くのNovara(ノバラ)で災害医学教育のシステム作りをされているFrancesco
Della Corte教授でした。
ジャコビー先生は、DMATの創生というお話しで、イントロは阪神淡路大震災の時の日本のTVニュース(日本テレビ、櫻井よしこキャスター)が出てきました。当時の米国の大災害の時の国を挙げての対応がDMATのみならずFEMAといったシステムで如何に迅速にかつ効果的に、そして被災した人を国がどう護るかのシステム作りと実践を当時第一線で活躍中のジャコビー教授の動きを紹介しながら、櫻井キャスターが日本との歴然とした差を指摘したものです。ジャコビー先生の講演は米国での大災害事例としてニューオーリンズを襲ったハリケーン(カタリーナ)での対応を紹介しながら、国が如何に省庁の壁を乗り越えて大災害対応を進め、またDMATのチーム作りと研修、訓練が機能し、その成果が出てきているかを、最近のテロ事件での対応を含め、紹介されました。ニューオーリンズでは、飛行場が拠点となり、被災者の収容、搬送、そして病院機能を各コンコースに振り分けているなど、さすが米国というところです。
米国では現在61のDMATが作られ(カリフォルニアには6つ、人口は全米の約10%)、人口約500万人当たり1チームと言うことのようです。米国でのDMATチーム作りの資金は寄付であると言われていましたが、さすが米国、というところでしょうか。さらに国としては、1979年にジミーカーター大統領の時に始まったFEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁Federal Emergency
Management Agency)が省庁の壁を越えて指令系を一本化する仕組みがあることも大きなことであると言われていました。その中には公衆衛生も入っていることも強調されていました。そして、主題は大災害時の指令系統で、各区地区でIncidence Command Systemがあって、そのチーフが大事な役割を果たしているということです。指揮がばらばらでは有効な救助活動が出来ないと言うことで、よく分かります。FEMAといい、現場でのコマンドシステムが日本との違いではないかと思いました。興味があったのは、DMATに参加している医療者はそれぞれの病院や施設で働いているのですが、集合が掛かったときは、施設長は迅速に許可を与えなければならないという決まりがあり、帰ってきた時もきちんと休暇が取れるなど、支援をしないといけなくなっています。この辺りは日本でも大分出来るようになっているようですが、実際はどうなのでしょうか。ただ、先の東日本大震災の時に、当時おりました兵庫医科大のDMAT対応では組織として適切に対応されていたことを思い出します。
最近の我が国の続いて起こっている大災害(ディザスター)への対応を見ながら、20年経ってDMAT自体はよく組織され、迅速な活動が紹介されています。ただ、直接災害医療には関わっていないものがどうこう言う資格はないでしょうが、我が国が行政(省の壁を越えたもの)や医師や医療専門職のプロフェッション集団の取り組みとしてはどうなのか、と感じられずにはおられません。こういうと関係者からお叱りを受けるでしょうが、我が国では阪神淡路大震災以降、厚労省や学会関係者が組織作りを進め、独立行政法人国立病院機構に災害医療センターという中央組織を作って研修制度を進めています。ただDMATとしては、中央と各都道府県別の組織構成になっているようで、この辺りで都道府県という壁が出来ない仕組みが取られているとは思いますが、狭い日本での都道府県という枠組みはどうなのかと思ってしまいます。
人材養成ということではいろいろ勉強させてもらいました。最後に質問させてもらったのですが、いわゆる専門医制度との関連です。これは適切な質問だったのか、君は分かっていないな、となったのかもしれません。ですが、災害医療に参画するのは、例えば救急医といった何か直接関与する専門分野が主体ではなく、総合的な医療チームの構築が要であることを強調されていました。全くその通りだと思い、認識を新たにしました。人材養成は日本でもDMATというなかで研修制度が進められているようですが、さて医師(専門医を含め)の参画はどうなるのか。ここは平出教授のこれからの活動にも関係するのでしょう。これか始まる新たな専門医制度で災害対応の教育を何処で取り入れるのかの論はこれからと思います。ある特定の専門医制度に入れるのではなく、関連する広い分野がその研修カリキュラムに、{災害医療}、をどう取り組ませて行くのか注目されます。
2時間のシンポジウムでしたが、大変勉強になりました。医療人育成という私の神戸での仕事にも関係することから、今後も平出近畿大学教授の活動を見させてもらいたいと思います。なお、コルテ教授の話が紹介出来ませんでしたが、次の機会に考えます。
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