もう6月も終わりで明日から年の後半に入る。今月の世界ニュースは何と言っても英国の国民投票でEU離脱(Brexit)が決まり、世界を驚かせた。これから欧州はどうなるのか、いや世界は、そして日本は、と何かが起こる連鎖の始まりのようである。アメリカは集団銃殺害事件があっても銃販売規制は変えないという西部劇時代の延長緯線にあり、先日はイスタンブール空港でのテロと、世界の政情は不安定である。同時にアメリカの存在感も薄れてロシアと中国が好機到来と権力拡大を図る様子が窺える。一方我が国は舛添東京都知事辞職でマスコミも政治家もそれぞれの本来の役割は何かを自覚しない未熟さを露呈し、参議院選挙をみると衆議院の選挙と変わりなく、政治も社会も国会の二院制とは何かが全く分かっていない、というか無視した状況で、我が国の議会制度は今後どうなるのか懸念される。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたが、急に選挙と言っても、今の若者は普段から自分の考えを持ってそれをしっかり人前で言える訓練が出来ていないし、新聞は読まない、ネットやスマホ依存、社会への無関心、という背景がある中での選挙である。そもそも選挙年齢の引き下げより議員の数を減らす方が先ではないか。
今回は社会問題ともなりつつある新専門医制度について動きがあったので紹介する。いよいよ来年から新制度が始まろうとするなかで、新たな制度では地域医療が崩壊する、という時期尚早論が大合唱的に病院関連の団体や地方の行政側、そして日本医師会から出て、実施計画にブレーキが掛かったことは紹介した。地元兵庫県も井戸知事が関西広域連合の代表として各知事の連盟で待ったを掛けてきた。専門医制度を取り仕切る機構が問題であり、組織構築の改革が必要との意見が日本医師会主導で急速に進んだ。そして、先日、新しい理事会構成員が決まった。理事が20名以上という大組織で、これまで新制度移行に手弁当で頑張ってきた理事はほとんど再任されず、日本医師会寄りのメンバーが連なっているようである。兵庫県井戸知事も理事の一人とは失礼ながら何をかいわんや、である。学識経験者も多いが、医師の生涯教育に精通した方ではなく、この機構は何をするのかが全く分からない。というか、これまで作ってきたものを一からやり直す、ということにしか見えない。それは許されないであろう。
私自身が旧機構で担当したのは制度の要ともいえるプログラム制の基準案作りであった。その後の新機構の理事ではなくなったので最後の準備には関与していないが、当時の作った側から見て新たなプログラム制の問題点を敢えて言えば基幹施設の決め方であった。2004年開始の新臨床研修医制度の登場で痛い目にあっている地方大学にも光を、ということで基幹施設(プログラムの取りまとめ役)を大学病院主体とし、一方で地域医療の維持、医師の偏在を助長させない、ということを忘れないで何とか踏み出そうとした。基幹施設は大学病院だけでなく地域の中核的総合病院も可能としたが、いざ準備を始めてみると(内科外科といった基本領域のみでの準備)、大都会の大学病院が張り切ってこれまで以上に人集めをするような気配が出てきたし、実際にある県では外科プログラムが大学一つという案や、全国に散らばった関連病院を全部まとめて広域のプログラムを作ったり、大きは大学医局がこれ機会に教室員集めに乗り出した。ということで地域医療を何とか改善しようとする側からの不安感が出てきたようである。これを見て、地域の行政(県立などの公立病院の医師を掌握している)が医師会と共に異議を唱えるに至った、という背景と認識している。医局講座制という我が国の独特の仕組みが医師の配置や地域寮への貢献があるにも関わらず新制度のスタートで足を引っ張ったとも見れる。本意ではないが、外からはそう見られてしまったところが誤算であろう。
ネットでも今回の騒動で機構と厚労省がやり玉(悪者)に挙げられているが、注意しないといけないのは、地域医療とへき地医療を混同している所である。それと機構が何とか厚労省の目論みの医師偏在是正をそのまま制度で導入するのではなく、結果としてそういう方向が出ればいい、という所に持って行って、医師というプロフェッションの矜持を維持すべく努力していることへの理解不足であろう。この専門医制度を悪とするなら、医師の質の担保と生涯教育の制度つくりは昭和時代に逆戻りし、世界から笑われ、国民が期待する良質の医療が提供でいなくなる恐れがあることも理解すべきである。
とはいえ、新理事会の構成員をみて日本医師会よりと思わずにはおられない。それが悪いという訳ではないが、日本医師会はこれまで勤務医主体の専門医制度には無関心で、医師の生涯教育制度構築については海外との大きなギャップを残したままであることを忘れてほしくはない。覇権主義的に走っているのではないかと危惧する。今求められているのは、プログラム認定基準の基幹施設の所を修正することである。これで心配事はほとんど解消されるのであって、これほどの機構そのものの大改革は必要がないはずである。地方の医療に関わる方々の懸念を払しょくするプログラム認定基準の一部改訂が済めば、また元に戻るくらいがいいのではと思う。現職知事さん始め大御所ばかりが集まっても、皆が利益代表的に集まっては収拾が付かないであろう。実際、大御所は理事ではなくご意見番での参加が本来の姿であろう。船頭多くして船山に上る、にならないよう願う次第である。機構の予算も乏しく、というより予算基盤がない状況で、20人以上の理事や監事が手弁当で集まる理事会も、交通費だけでも大変と思う。
新しい専門医制度の目的が正しく理解され、潰すのではなく何が問題でどうしたら良いかの論点整理改めて行う必要があるのではないか。今の機構の努力がなぜこういう破たんともいえる状況になったか検証も必要であるが、今は前向きに議論を進める時期である。要は、次世代の医療を担う医師を目標を持たせて育て、その人たちが十分活躍して日本の医療をさらに発展させることであり、その為には専門医制度が要るという共通の理解が要る。一方で専門医資格取得へのインセンティブを堂々と要求するには、まずは今しっかりと制度作を始めないと社会は付いてこないことも理解すべきであろう。
追記、外科専門医制度とその2階の部分は既に十分準備が出来ているので、新機構の意向とどう向き合うのかが注目される。Brexitのような新機構離脱、とはならないとは思うが。
Leave or Stayが我が国でもあるのか。
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