2013年11月24日日曜日

外科医の偏在

  昨日は名古屋で臨床外科学会というのがあり、座長もあったので一日だけ出かけてきました。朝8時前に新大阪に行ったら大変な混雑。普段の土曜とは随分違うと思ったら祭日でした。この学会は、幅広く外科の実際の臨床について発表するところで、大学主体ではなく最前線で日々外科の臨床で頑張っている若い人が多く集まります。私の出番は慈恵会医科大の大木教授(大動脈ステントの大家)の司会でした。会長は藤田保健衛生大学の前田耕一郎教授で、特別企画にいくつか面白いものがありました。その中の一つを紹介したいと思います。表題のものです。

 ここ10年近く医師の偏在が地域医療を破綻させ医療崩壊をもたらしていると言われていて、いつもいろんな学会で取り上げられます。ここは外科医の集まりなので、外科医の偏在で、それが是正できるか、という企画でした。まず厚労省から地域医療対策室の佐々木室長が行政の立場から現状分析とこれからの方針を述べられ、ついで国立病院機構の桐野理事長がご自分の脳外科の話を含めて、これからどうしたらいいかを話され、現場からは高知県、大分県、そして最後に岩手県から医師確保に頑張っておられる方々の苦労話が紹介されました。この3県とも若手医師確保でなんとか頑張っているが、限界もあることが述べられました。途中で、患者・国民目線での意見として、読売新聞の本田さんも登場しました。

 この医師の偏在は、外科ではそもそも大学の外科講座が其々の中域の外科医の配置(派遣)の大きな役割を果たしてきたのですが、2004年に始まった初期臨書研修制度でこの構図が崩れ、卒業した医師が大学に残らす、環境の良い都会に多く集まって行って今の姿になっていることは明らかです。行政の資料では、確かに医師の偏在は人口当たりの医師数や外科医数でかなりの差があり、これからどうしたいいのかが議論の焦点でした。

医師配置は欧州では国が強制(公的)しているが、米国は市場主義(私的)、日本は折中的なものでありますが、桐野先生はやるなら国が強制力でやらないと実現は無理、というちょっと過激な発言でした。医師会や医学会、大学に任せてもこれまで出来ていないし、初期研修制度で厚労省は半強制を目指したが、返って混乱を招いているのですから、思い切った施策がいることは皆さん了解の雰囲気でした。出来るか出来ないかは別ですが。ここで、議論に登場するのはやはり専門医制度でした。新しい制度では、各領域の専門医の定数をおき、専門医研修施設を病院郡プログラムで認定するので、地域性も配慮できるからです。ここで、本田さんは医師の計画配置、という言葉でその必要性を訴えられました。国民目線で専門医制度の進め方に期待し、注目する、という話でした。

フロアーからの意見の中で、私も本田さんの発表に発言しましたが、それは新しい専門医制度で基本設計で地域性を考慮しても、各学会がどう対応するかによるので、マスコミとして注目し評価して欲しいと言いました。専門医とは何か分かりにくいということもあり、これからは社会との対話が必要であることを再認識しました。

後で関係の方々と少し話をしましたが、私の感想は、今度の専門医制度改革を絵にかいた餅に終わらせないようにしないいけない、ということでした。それと、最初に戻って医師の偏在是正対策ですが、特に地域医療の破綻を食い止めるのは、桐野先生が言われた、思い切った国の措置がないと進まない、とも感じました。医師集団は国の管理は嫌がりますが、地域医療で困っている分野、いわゆる初期治療、救急医療、に限るとすれば皆さん賛成するのではないでしょうか。兵庫県もそうですが、都道府県という自治体任せには限界があることは明白なのですから。

というのが、このセッションの私のまとめでした。

以下は、厚労省調べ(2010)の標榜している医師の専門科別推移。平成6年を基準にした%推移。最上段の麻酔科が急に増えているが、もともと少なかったので、実数はこれほど増えていない。外科と産婦人科が最下位を競っている。共に最近少しは増えているが。

 

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