因みに、救急医療は一般病院が参画する一次・二次が対象の救急病院と、3次を主とする救急救命センターがある。この救急救命センターの一部には、高度、地域、という名称が付けられ、機能分化を図っている。兵庫県で高度救命救急センターに指定されているのは県立災害医療センターのみで、他に中央市民病院や兵庫医科大学病院、県立姫路循環器センター、県立西宮病院など、計7か所である。神戸大学病院は救急救命センターの指定はとれていない。
今回の件は大学病院という場に限らず、我が国の救急医療の抱える問題が背景にある。地域医療では小児(救急)医療が破綻して時期があったが、救急、あるいは一般外科も同じである。要は医師不足、というより医師の偏在が根底にある。神戸大の救急は医師のベースとなる専門分野としては外科が多いようである。多くの救命センターは、救急をプロパーとしてやる医師と、他科が専門で救急分野を勉強したいと来る医師の混成部隊が多い。救急専門医も外科専門医も希望者が少ない分野である。それは、労働環境が悪く、しんどい割には報われない、という分野でもある。しかし、救急医療はまさに失われようとしている命を救う、一刻を争って診断から治療まで、とダイナミックであり、外科系から見るとやり甲斐のある分野と思う。とはいえ、若い人に救急分野を生涯の専門としてやるかというと、しり込みされる。指導者は後を継いでくれる人が欲しいので、一生懸命若い人を育てるが、ある程度経つと他へ移ってしまう、という悩みを聞く。いま議論されている専門医制度の改革で、少しでも若い人に外科系や救急に興味を持ってくれるような追い風になればと思っている。
さて我が国の医療の供給体制から見ると、病院数が多いのがOECDの調査でも歴然としている。大学病院も精々800から多いとことでやっと1000床程度であり、米国やアジアの先進的な国では1,000床以上の病院が増えてきている。医療が集約がされている、ともいえる。我が国で救急を扱う病院は数では多いが、機能から見ると分散し、小規模病院では受け入れの余裕が少なく、社会的な問題が生じている。国や地方自治体はセンターの充実には力を入れているが、一般の救急医療は中規模の病院を当てにしている。それらの病院はすべてに医師不足があり、体制も十分ではない。高度医療は進んでいるが底辺の救急医療の体制は何年も変わっていない現状がある。断わらない救急専門病院が必要である。それを国が地域に作るなり個人病院でもいいから支援し、指導医クラスをきちんと処遇し、そして若手医師は臨床研修の1年を使って強制的にでも配置し、教育をする、といった抜本的な対策がとれないか。今の臨床研修の救急必修研修は短期間で、施設もバラバラ、実が上がっていないのではないか。
大学病院、特に国立大学病院は、全てが救急医療の第一線でも頑張るのは無理であって、棲み分けも必要ではないか。言い換えれば、高度救急をする所と一般医療に軸足をおいて総診療ができる医師を育てるところに分かれるであろう。神戸大学は若手医師を総合診療や救急医学を修練させる、新たなER 方式で再出発するように思われる。新聞は、兵庫県の救急医療に大きな支障が出るかのような報道であるが、少し冷静に見てほしいと思う。一方では、最近になって兵庫医科大学が新たな急性期病棟を作り、救急部門が充実され、ERも加味された高度救命救急センター方式と思うが、その成果にも注目したい。
勝手な意見を書かせてもらったが、大学病院や臨床現場で救急医療に日夜携わっている多くの方に失礼になっていないことを願っている。
PS:今日、神戸商工会議所(神戸国際医療交流財団のオフィスがある)についたら、玄関に日本手外科学会の看板があった。兵庫医療大学リハビリ学部長の藤岡先生の専門で、師匠の兵庫医科大整形外科の田中准教授が会長、という。藤岡先生に電話すると側の国際会議場の学会本部におられる、という。商工会議所に来てもらって、半月ぶりに話が盛り上がった。