2013年6月23日日曜日

一般薬のネット販売解禁、続編

このテーマでは国会や新聞誌上でも結構議論がされています。今月は地元の神戸新聞の日曜版のコラム、「神戸新聞を読んで」、の担当になっていて、全部で5本書かかないといけません。毎週週間前の日曜が締め切り。子供の新聞離れ、iPS細胞臨床研究、医療事故調、そして4回目は表記のテーマです。記事を紹介していおきます。 あと一回はまだ決めていません。地元の方に読んでもらっていたらいいのですが。


2013年6月16日日曜日

米国人工臓器学会


 また学会の話ですいません。
6月12日から15日まで米国はシカゴでの米国人工臓器学会(ASAIO)に参加してきた。この学会は、人工腎臓、人工肺、そして人工心臓に関する国際的な貢献をしてきた歴史ある学会で、若いときはよく演題を出した時期もあったが、最近はしばらくご無沙汰であった。補助人工心臓も植込み型が日本でも保険適応になるなど時代が変わってきたことや、幾つかの新しい機種も登場してきているので、キャッチアップもかねて出かけてきた。シカゴはイリノイ州のミシガン湖沿いある大都会で、最近ではオバマ大統領の出身地として知られている。サンフランシスコからさらに4時間かかり、天候も荒れていたのか予定より2時間ほど遅れて夜10時頃の到着となった。

この学会は、日本からは医学・工学系の若い基礎研究者が何人か演題を出して出席していた。ポスター発表とともに、口演もあるが、トピックスごとのパネルが沢山組まれていて、臨床の課題や進歩がまとめて聞ける。学会前日は小児の循環補助(人工心臓や人工肺)のセッションが組まれていて、日本でも小児用の人工心臓(対外型、ドイツ製)が導入されつつあるので、関心があった。とはいえ、この世界では、開発から臨床試験,保険適応までプロセスをどうするかが我が国以上に懸案事項であり、特にNIHとFDAが連携して積極的な取り組みがあり、特に植込み型の永久使用では大きな成果を上げている。安部政権が謳っている日本版NIH構想もあり、最近の動きが注目された。写真は、九州大富永教授、前東京医科歯科大教授高谷先生、ヒューストンのMotomura先生です。
 

小児用人工心臓の開発は訳5-6年前にNIHが動き出し、総額23.6億の予算出して、4つのプロジェクトを支援してきた。その経過が報告され、名前が面白く、PumpKIN,小児ポンプをモジッテいる, 前臨床 Programとされていた。そこで生き残っているのが、唯一Jarvik2000小児用であった。大人用は可って阪大で試験的に導入し、先般臨床試験も済み、最後のPMDA(医薬品医療機器総合機構、和製FDA)の審査が残っているが、その姉妹型である。これから世界の20か所くらいで臨床試験が始まる。結果が出るのは45年先であるが、体外式ではなく植込み型なので大いに期待される。ただ、我が国はその仲間にないっていないのが残念である。写真の真ん中が小児用。
 

学会はかっての肝臓や膵臓、腎臓もそうであるが、代謝系の発表が少なく、殆どが循環器ないし肺が対象で、ここでも植込み型補助心臓の勢いが感じられた。特に、移植へのブリッジ以外ん永久使用(Destination Therapy)が一般化しているかなで、新しいデバイスが登場しているし、完全人工心臓の小型と駆動装置のポータブル化を果たした    Syn Cardia(写真)が良い成績を上げていた。かって、Jarvik博士が開発した完全人工心臓Jarvik-7が世界で最初に人に使われたのが1982年で、それから30年たってその子供型が出てきている。この世界は10年では何もできないことを物語っているようである。


人工心臓以外で面白かったのは、透析療法で、米国では在宅透析(夜間透析)が進みつつあり、それが種々の健康面で好結果をもたらしているという講演があった。その紹介は次回に。

シカゴでは学会にベッタリではなく、エンジョイも、ということで、食べる方は控えて、コンサート(シカゴフィル)
Wagner Siegfried’s Rhine Journey and Funeral March from Götterdämmerung                            

  • Beethoven Piano Concerto No. 4                            

  • Bruckner Symphony No. 1


  • とレンタル自転車(ロードバイクです)で楽しみました。
    前者はムーティ指揮のワグナーとブルックナーを、自転車はミシガン湖沿いの専用道路で一走りでした。

     
     

    2013年6月7日金曜日

    一般薬のネット販売全面解禁へ

      安部政権は規制緩和と経済活性化にかなり入れ込んでいる。規制改革会議の出した規制改革の関する答申、経済再生への突破口、が6日に出され、その中に表記も含まれていた。TVでも首相が、一般薬のインターネット販売を全面解禁とする、と明言していた。このことは、以前の学長ブログでも取り上げたが、医療における規制緩和のなかでは聊か腑に落ちない部類である。現在社会でインターネットの関与はもう留まる所はないし、個人の要望と業界の思惑がネット、という所で寄り合っている。旅行一つについても、街中の店に行かなくても自宅で全てに情報が得られ、予約まで出来る。薬も確かにネット販売を解禁することでわざわざ薬屋さんに行かなくて済む、便利さはある。薬局での対面販売での薬剤師さんの関与も限られている現状で、ネット販売でもそう変わらないかもしれない。しかし、やはり薬剤師の側から見てこの規制緩和をどう思っているのか、なかなか見えてこない。

    このきっかけは一般薬の販売について規制をかけた厚労省の条例が最高裁で否定されたことによる。安部首相は一部ではなく一般薬すべてに広げることで薬業界の活性化を図っている。そもそもこれにはネット販売を手掛ける一部の薬販売企業の思惑もあったであろうが、その背景についてはもっと奥深いのではないか。一般薬の製造から販売までの流れが大きく変わるのではないか。ということで薬店業界に大きな影響が出るのは必至であろうし、薬販売での経済効果はあると思われるが、その流れは一般薬に留まるであろうか、危惧される。

    街のドラッグストアーは相変わらず赤いどぎつい看板と店の前に日曜雑貨品を並べている。こんな所、といっては失礼かもしれないが、6年制薬学部を出た若い薬剤師が働いているにかと思うと複雑な気持ちになる。ネット販売と共にドラッグストアーも活性化するであろうが、ここで調剤薬局の姿が気になる。調剤薬局の役割がより専門性の高い所に行くのであれば、また薬剤師への社会の信頼度が上がる結果になればいいが、そこが懸念される。この規制緩和策の作成に薬剤師団体の意見はどう反映されたのか。企業マインドが優先しているように思う。

    この規制緩和計画にはサプリメントなどの健康食品への取り組みもある。まだ勉強足らずで解説は出来ないが、この分野も健康と医療、という話ではもっと経済効果はあるのではないか。しかし、薬はやはり薬であり、一般薬と雖も軽々しくネット販売で手に入るのはどうかと思う。医療と規制緩和、経済活性化は両刃の剣、のリスクがあると思う。専門医制度について広告できる制度を厚労省が作ったときに、認可団体の外形基準を設定するだけで、中身のないものであった。それまで関わってきた専門医の団体が意見を言うと、時の課長は、規制緩和ですよ、皆さんそういう希望ではないのですか、と発言していた。経済とは無関係の場面であるが、この規制緩和は結局上手くいかず、今になってやり直そうとしている。医療における規制緩和は混合診療の話もある。今回は、薬剤師の教育にしばらく関わったものとしてのネット販売へ解禁への意見、感想?、を書かせてもらった。