2021年1月23日土曜日

Covid-19と共に年明けしました 論点は施設集約から

    大寒も過ぎた今になって遅まきながら新年のご挨拶となりました。Covid-19の猛威がわが国でも続いていて新春を祝う雰囲気でもなかったので新たな投稿も滞っていました。Covid-19以外の話題があればいいのですが、残念ながらこれで書こうというネタがないというか、以前から自白していることですが付き合う環境が限られてくることもあって書くというモチベーションが上がらないということです。歳のせいかもしれません。でも、70歳代最後の約9か月、なんとか書き続けけたいです。 
     
  さて、横浜へのクルーズ船でのCovid-19集団感染が起こってほぼ1年になります。昨年4―5月の第一波もその後収まり、このまま収束へと繋がると思っていたわけですが、その後の第2波、さらに11月からの第3波と大変な勢いは周知の如くです。今年に入って1月にようやく出された緊急事態宣言、もう既に2週間になりますが、何も変わらないといった様相です。With Coronaではなく打倒Coronaだ、と言い難くなってきたのではと感じます。 医療崩壊がもう始まっていると我らが代表の日本医師会会長も盛んに発信しておられます。知事さん方も、病床ひっ迫と警鐘を鳴らし、感染拡大を止めるための呼び掛けをしています。私の勤めるごく普通の一般病院、というか療養病床を持ちながらICUもない病院、にもベッドを空けるようメッセージがどんどん出ています。社会的使命もあり、post-Covid-19は受け入れるようにしていますが、一歩間違うと病院自体が崩壊します。地域の中小病院はもともと倒れるかどうかの瀬戸際で医療を行っているわけで、空きベッドを活用するよう私的病院も頑張れと言われても、そうしたいのは山々でもクラスターになったらと考えたら二の足を踏まざる得ないというのが実態です。医療現場は疲弊してきていますが、崩壊ではないと思います。でも、崩壊を止めるのは今だと思います。国の施策が問われます。 
  
   我が国は世界に類のない位病院の数が多い国で、メデイアでも紹介されていますが、医療体制が分散しているわけです。大学病院や基幹病院、私的な大病院でも、1病院当たりのベッド数に制限を置き(せいぜい900)、韓国や中国では普通にある1500 床2000床の大病院が作れないこともおかしな規制です。これは日本医師会が開業医の代表の立場で反対してきたという歴史があります。日本医師会会長が盛んにメデイアに出てきますが、公的病院の代表は出てきません。全国国立病院長会議、全国医学部長会議、国立病院機構、日本赤十字、といったところが沈黙を保っています.独立行政法人となった国立病院機構は140の病院を纏めていますが、昨年の5月に日本医師会内の会議で出された資料があります。これまでの対応の紹介とこれ以上の感染が拡大したらどうするかについては、①今後の中長期的な医療提供体制については、国を挙げて議論する必要があると考えている。 ②国難ともいえる健康危機管理問題が発生した際に病床も人員体制も余力がなく、必要な体制を速 やかに構築することが難しい。例えば、NHO でいえば現有の結核病床の一定数を新興感染症にも 対応できる機能を持つ病床として都道府県等の支援を得つつ確保することも、検討されるべきではないかと考える。としているが、その後の発信はないようです。思い通りに動けない実態があることも理解はできますが。地域医療推進機構(JCHO)もCovid-19対策のリーダー尾身氏が理事長ですが、その活動が問われているようです。ここで問題は、何が課題かの「分析と発信(公表)」がないことです。これ無くして改革はできないでしょう。わが国の医療供給体制(病院)がいかに脆弱で問題を孕んでいることが国難時に明らかになってきたわけです。この時期を大事し、医療界が自分たちの世界に安穏と暮らしてきたこれまでを振り返って、論点整理がまず必要です。そして大事なのはその後の課題解決です。  

   私が尊敬する東京慈恵会医科大学外科講座の大木隆生教授のCovid-19対応での提言が最近出ているようです。医療崩壊とは何を基準に言っているのか、病床ひっ迫の根拠は信頼できるか、ICUの活用は出来ているか、という問題提起です。心臓血管外科医の働き場が手術室以外はICUであり、私も大学病院のICUの異常に少ないことを長らく憂いて来たことでもあります。大学病院は現在の全ベッド当たり阪大病院のように特段多い所で5%(救急部門を除く)と思いますが、地域の中核的大学病院では少なくとも10%にするということが出来ない、あるいはしようとしないのは何故かということも問題でしょう。  
  さて長くなりましたが、ここでかねてからの私の持論を展開すれば、施設集約、です。このテーマは、医師の専門医制度や医療(外科手術)の質の担保、ということで使われるキーワードであります。かなり昔ですが、フランスのパリ市には5つほどの市民病院があってそれぞれ独自に活動していたものを、英断で一つの新しい病院に纏めたことがあります。当初は各病院の医師が反対していたそうですが、今はそんなことは昔話です。現在、Covid-19での活動が知りたいところです。我が国でも、自治体病院が沢山あって資源の活用上無駄が多く、複数が関わる地区では一つにまとめる、という方針がありますが現実はそうはいきません。でも兵庫県では既に進みつつあります。機能的には大阪府下、北摂地区での小児救急体制の集約はかなり前から行われています。しかし、ハードや人材、市民の意見、といったことで簡単ではないわけですが、Covid-19への対応で施設の分散が大きな壁になっていることも分かってきました。施設(ハード)集約が出来ないからベッドやICUを分散させるしかない、という望ましくない事態です。一方で大阪市の十三市民病院の機能特化、大阪府の専門センター開設、東京都立広尾病院、という動きも出てきていますが限定的です。これを維持し伸ばせるか、Covid-19以後もそれが有効に活用されるか、が課題でしょう。市民病院移転反対、市民病院統合反対、という市民的エゴが長く続いてきた壁でもあります。この国難時に意識が変わるといいですが。  

  まとめですが、施設集約はすぐにはできませんが機能集約は何か強いきっかけがあれば進み出せると思います。施設集約のハード改革の前にできることがあるはずです。Covid-19の痛い教訓をどう生かすか、施設集約は避けて通れないという社会のコンセンサスが必要で、今こそ社会の意識改革が問われています。