2023年11月29日水曜日

 その後:ドナー不足対策と医師の働き方改革

  ブログ終了と言いながら往生際の悪いことです。ここ数日のメディアにこれまでの課題事項について大事な記事や放送がありましたので要点だけ述べます。

1)ドナー不足について。読売新聞が取り上げていた海外の臓器斡旋について、このほど当該者に8か月の実刑判決が出ました。被告は控訴するということで、当分結論はつかないでしょうが、この問題を契機にドナー不足へ社会の目(メディアの目といった方がいいでしょう)が向いてきたことは歓迎されます。同時に、読売新聞によると(令和5年11月29日夕刊)厚労省がやっとドナー不足対応の実際の施策を打ち出したということです。拠点病院と地域の病院の連携を進めて脳死ドナーの掘り起こしをするということで来年度に進めるようです。これはこれで結構ですが、どうして臓器斡旋の法的不備が突かれるまで行政は動かなかったのか、という疑問は残ります。今回の動きは国会議員(議連)の働きかけによるということですが、どうして臓器移植関係のアカデミアが今回も黙っているのでしょうか。当事者責任を問いたいです。

2)医師の働き方改革。NHKのクローズアップ現代(11月29日放送)でこのテーマが取り上げられ、現場の医師(特に若手)の負担が大きいことが紹介されていました。これは改めて報道する話でもないのですが。大学病院の対応が紹介されていました。大学病院が医師の勤務を働き方改革にわせると、それまで出来ていた地域の病院に医師の派遣が出来なくなる、医局に戻す医師が増える、という話です。かっての初期臨床研修制度導入の時を思い出させる話です。これは本末転倒と言われても仕方のない対応で、働き方改革と病院病院経営を如何に両立させるかが、文科省、厚労省、公立病院に問われていると言えます。

 一方、新潟市民病院では外来体制を見直して、外来患者を地域に戻す、逆紹介を進めて効果を上げているということです。我が国の大学病院の外来については私も予てより問題提起(資源の無駄使い)をしており、国立大学の外来診療は抜本的に見直すべきで、働き方改革に合わて実行に移すべきチャンスであると発信してきました。新潟市民病院の対応に拍手を送ったわけです。直近でも身近の大学病院の院長先生に、大学病院では「従来の外来診療は止めます宣言」を出してくださいと具申しているところです。

 といったところで追加発言は一先ず終わりです。

      






2023年11月19日日曜日

 脳死臓器提供が1000件に

 

日本臓器職ネットワークはこの1026日において脳死での臓器提供が1000件になったと発表した。法律ができて最初の脳死での腎臓を含む臓器提供が19992月に高知赤十字病院でスタートでした。大阪大学で心臓移植、信州大学で肝臓移植が行われてすでに四半世紀にならんとしている。1110日には1005件となり、その内訳では、心臓移植は800、肺は847,新肺同時3,肝臓834,肝腎同時53,肝小腸同時2、膵臓75,膵腎同時443,腎臓1280小腸30,である。1000人のドナーのおかげで、4377人の方が移植を受け、命を長らえていることになる。お一人にドナーの方から平均で4.3の臓器が移植されたことになる。素晴らしいことである。我が国では提供された臓器を最大限移植できるよう臓器提供施設でのきめ細かい医学的ケアが進んだお陰である。因みに心臓では提供に至った比率は80%であり、諸外国に比し格段に高い。改めてこれまで提供されたご本人やご最大の敬意を表するところである。

1997年の臓器移植法ができた時は、その厳しい条件から移植禁止法とまで言われ、提供が100件になるのに何年かかるのか懸念されたが、法改正でもってその危惧は軽減され今日に至った。とは言え、2010年からこれまで12年ほどかかっており1000件ではまだまだ厳しいドナー不足状態は続いている。この勢いで年間300件の時代が這う悪来ることを願っている。また、昨今では海外での臓器売買が我が国の負の面が社会を賑わしているが、この1000件達成でもって社会の理解が進むと共に、ドナー不足の対策にも新たな展開が出てくることを祈念するものである。

新聞記事ではドナー不足の背景について識者の意見が述べられているが、提供施設側への支援や仕組みの改革については藤田医科大学の剣持教授が指摘しているだけで、大方は総論的な話に留まっていたのは物足りない限りである。この2月の投稿にあるように、提供側の課題は概ね明らかであり、その改革計画のロードマップ作りが関係省庁やアカデミアに求められていることを最後に指摘したいと思います。


 

長らくお付き合いいただいたこのブログもここ数年は沈滞しており、年齢のこともありこの投稿でもって終わりとさせていただきます。長らくご支援いただき有難うございました。