2020年12月29日火曜日

 COVID-19に明けくれた1年でした 投稿の振り返り

   新型コロナ(Covid-19)で翻弄された2020年も残すところ3日となりました. わが国では依然として感染者数の増加が続いているなかで年を越すことになりましたが, ウイルスの亜型の出現と早々とわが国への侵入, 空港検疫での水際作戦の効果, ワクチン接種の見通しは, など不安材料ばかりですが2021年は収束が始まる年であって欲しいと思います.

   さて, 今年のこのブログもCOVID-19の出現で皮肉にも生き返ってきた感があり, これまで2月のクルーズ船の検疫隔離の問題から始まり, 6月まで毎月の投稿で, 4月の2回を入れて計6報になりましたので, 今日はその振り返りをして今年の締めにしたいと思います. なお, 今になって振り返ってあれこれ言うことは憚れるし, あまり意味もないことですが, もう一度自分なりに振り返ることも大事と思いますのでご理解ください.

   投稿のスタートは横浜のクルーズ船の集団感染についてでしたが, 今振り返ってみてクルーズ船の検疫体制は関係の方々のご努力である程度の防御効果はあったとは思われます. しかし, 初動作戦としては試行錯誤の段階はやむをえなかったとは言, 行政として, また関係専門機関として, その後の国としての対応はなんとも歯がゆいことばかりでした. 経済優先策をとったことから対応が後手にまわってしまったことは明らかでしょう. この投稿の最後は, 標準防御(standard precaution)の考えを広く社会に伝える必要があること, 船外でのアウトブレイクが起こらないことを願う, ということでした. 残念ながら後者は, クルーズ船というより他の水際作戦の不徹底からクラスターの多発に繋がっていったようです.

   3月の第2報では, 今国が取るべき対応への私見を述べましたが, 国としての危機管理体制の強化, 情報発信の統一, ニュージーランド首相のメッセージにあるようなステージによる危機管理把握と国民への具体的周知を(これまでの大水害での経験がいかされていない), そして医療危機が迫っている中で全国に沢山ある国立病院(今は機構)が感染者対応で緊急的役割を果たすよう国は至急検討することでした. 旧国立病院にお出まし願いたいことは, 今まさに医療体制が逼迫しているなかで再度訴えたいことであります. 補足として, NEJMやLancetに新型コロナの新しい医学的情報が毎週のように出ているが, わが国からの世界に向けた情報発信は皆無ではないか, ということも指摘している. そ

   の後は, 臓器移植(臓器提供)のことや感染者(疑いを含む)への心配蘇生の問題, 米国のICUでの家族の面会の話などでしたが, 改めて紹介しておきたいのは, 4月のNEJMの論文紹介です.

    Ten Weeks to Crush the Curve. By Harvey V. Fineberg, M.D., Ph.D.  10週で感染拡大の勢いをとめよう, というものでした. 即ち, 1)大統領を補佐する統合指揮官に最大の力を与えること.   2)PCRを次の2週間で100万件. 3)医療従事者にPPE(個人用防御装置や器具)を充分支給する. 4)症状やリスク分析で5つの群分けをして対応する.   5)国民とともに戦う(inspire and mobilize the public).   6)実行しながらこのウイルス感染の基本となる研究を進める.

   この中で今もわが国で肝に銘じるべきことは, PCR検査と5の国民と共に戦う, です. わが国ではこの期に及んでもまだPCR検査ばかり広めても意味がないとか, 今度は検査できるところを増やそう, 民間医療機関に協力依頼, などが続いている. 私がよく使う言葉ですが, ガラパゴス状態のわが国は, 良い面ではウイルス進入を抑える, 一方では現実の施策での世界とのギャップでしょうか.

   6月は, ポストコロナ時代における発想の転換と働き方改革でした. この問題はまさに2021年に我々が何すべきか考える上での基本でしょう. 既にかなり進めている分野とのんきに脱コロナだけを考えている分野に二極化しています. ほとぼりが冷めたころには元に戻っていたでは済まされない問題です. 今年の締めとしては, このポストコロナ時代に向けての発想の転換と無駄なことは止める, 思い切った改革を, でしょうか.

   ということで, 来年もお付き合いのほど宜しくお願いいたします. 新しい職場でのことは年明けに書かせてもらえればと思います. 皆様のご多幸とCOVID-19の1日も早い収束を願います.

2020年12月24日木曜日

今年の振り返り;その他

  新型コロナウイルス感染蔓延で世界が翻弄された2020年も後1週間ですが, わが国でも感染の勢いは止まるところを知らずに日々拡大しています. 問題は重症例や死亡例が増えてきていることで, 医療現場は対応に限界があり医療体制が逼迫していると連日報道され, 日本医師会はじめ地域医師会も医療提供側の窮状を訴え, 現在の感染の歯止め施策の不備を訴えています. 私の病院でもno Covic-19ではなく, 柔軟に対応し回復期の患者の受け入れ態勢や, 自前のPCR検査の導入も始めています. 疑わしい患者や回復期患者の受け入れは, 職員を一層厳重に感染から守ることができないと実現しないわけで, 中小一般病院としてのコロナ対応の役割は依然として足元が盤石ではないことも知るべきでしょう.  さて, 今年の振り返りですが, 何といっても最大の出来事は職場が変わり心臓外科医から心臓内科医に変身(転身)したことでしょう. このことは既に紹介していますので, その後の経過は折に触れて書かせてもらいますが, 心不全ケアのハートチームへの立ち上げを宣言してから約3か月, やっと, というか早くもというか, チームも立ち上がり, ハートノートの運用も試行錯誤の中で始められたことは, 病院の多職種連携のへの体制が既に構築されていたことが大きかったと思います. 2週に一度の症例カンファレンスも始まって, 何とはなく形が出来つつあるといったところですが, 高齢, 独居, 低い活動性, 認知機能低下, 合併疾患(糖尿病, 高血圧), 摂食嚥下障害, などが慢性心不全の状況を複雑にしています. このような対象への心不全地域ネットワーク作りが果たして可能なのか自問自答しながら, ここで出来ることは何か, 何かあるはず, という視点でこのプロジェクトを進めて行けたらと思っています. 来年4月ごろには少しは形になって成果が出てきたことを紹介できればと思っています. 乞うご期待というほどのものではありませんが.   学術活動としてはコロナ自粛のおかげでじっくり机に向かうことができたことで, 昨年の11月でしたか, 大阪で行われた国際人工臓器学会で会誌(Artificial Organs*)編集長からオファーをもらった依頼原稿, Pioneer Editorial, を書き上げたことです. 晴れがましいタイトルですが, 日本の補助人工心臓と心臓移植のこれまで(といっても2010年くらいまで)の発展を纏めたものです. タイトルの副題に, How people workedとしてオールジャパンとしての成果を紹介しました. 1ページ目だけ紹介しますが, 一緒に写真映っているのはECMO装置で, この装置は1990年頃から阪大で簡便な心肺補助装置の開発を進めていたのですが, PCPS(経皮心肺補助)という名前で世に出しました. 今回のコロナ禍で呼吸補助としての役割で注目され, ECMOとして広まっていますが, 懐かしい思いでもって背景に使ったという裏話です.  余談的なことでは, 今年はYouTuberになったことでしょうか. 外科手術トレーニングについてはシミュレータ―を用いる方法が学生や修練途中の外科医を対象に広まっています. この領域について評価法の標準化や指導法の開発を目指し, 福島を拠点に世界手術教育フォーラムを立ち上げておりますが, そこでデバイス関係で大きな役割を果たしているEBMという企業であり, 今年はそこが主催して教育的放送,アカデミー,をYouTubeで始めました. その先兵として私に白羽の矢が当たり, 症例報告の書き方で登場しました. 興味ある方は覗いてください(< https://www.youtube.com/watch?v=EpwaVzzwt6A&t=329s&ab_channel=EBMCorporation). 症例報告が臨床研究のスタートであり, 終着駅でもあります. たかがcase report, されどcase report, といった感じです.
 ということで, 後1本年内に書けるかどうか分かりませんが, 今日のところはこの位にしておきます. *:Artifial Organs、総説の第一ページ

2020年12月4日金曜日

今年の振り返り:移植関係

      2020年も残すところ1月となりしたが、今年は新型コロナと共に始まり終息の気配も見えずに年を越しそうです。昨日は(12月3日)は大阪で赤信号が灯りました。現実になっている医療崩壊を社会が真剣に認識してもらう意味でも重要な決断です。 さて、8月でもって長らくなんとか続けていた心臓外科医に終わりを告げ、一般医療のある意味最前線ともいえる今の病院に変わりました。長い人生での一つの区切りでもあり、また真の終活への超えないといけないステップとも言えるかもしれません。余分に頂いた医師としての余生を、正に現在社会が抱えている問題が集積しているような医療現場で働かせてもらうことの有難さに感謝している日々であります。ということで、懸案というか関心事について今回と後幾つかで振り返ってみたいと思います。 Covid-19関係でまず気になるのは臓器移植領域で臓器提供がどうなったかです。救急現場がコロナ対応でそれこそ医療崩壊が危惧されてきたなかで、脳死ないしそれに近い状態で搬送されてきた患者さんや家族への対応など、ドナーコーデイネーターに聞きたいところです。現実として、今年の脳死下の臓器提供は11月まで66件、心臓移植は51例であることが日本臓器移植ネットワークJOTNのHPから見ることが出来ます。臓器提供が最近右肩上がりで年間の脳死での提供が100件に近くなり、心臓移植も80例に届くまでになっていた最近の傾向から見て、その勢いはやや減弱していると言わざるを得ないでしょう。しかし、難局の中でここまで維持されたことは、救急医療現場や移植関係の皆様の努力に、そしてドナーのご遺族に最大の敬意を表するものであります。  

    さて、この1年ほど学術的な活動、と言ってはおこがましいですが、少し振り返ってみます。論文投稿ではもう最後の最後でしょうが、二つありました。一つは昨年の今頃に日本移植学会学会誌に投稿したものです。* 心臓移植関係では臓器配分の基本ポリシー(Status-1,,2,3)が開始以来未だに改定されていない問題で、JOTNに依頼して待機中死亡についての分析をしたものです。待機中死亡を減らすにはまずは臓器提供を増やすことですが、それ以外に大事なことは待機中死亡の危険因子を分析し、臓器配分の仕組みを改定することです。このことは誰しも理解し、海外では実践されてきた歴史があります。私の論文はその背景を分析し、これからの道筋を書いたものですが、この問題提起が現場の関係者にしっかり伝わっていないというか、暖簾に腕押しなのか、期待する反応がないのが寂しい限りであります。難しい事項ばかり上げても前には進まないと思います.何か大きな壁があって(誰もわかっていること)を押し開けるエネルギーが欲しいというところでしょうか。 一方の米国では、UNOSが2018年に心臓の臓器配分で大きな改定を実施したわけですが、そのフォローアップ研究が最近の国際心肺移植学会雑誌に掲載されていました。** このUNOS-2018改定は、待機中死亡を減らすこと、地域格差(遠距離搬送を是正する)といった目的で、安定して待機している植込型補助人工心臓の優先度を下げ、短期使用の補助循環装置付きの患者(待機状態が安定していない)のを最優先にしたものです。新方式の妥当性を評価する報告がこの2020年に5つも出ていて、この論文ではそれらを全体で解析したものです。5つの報告はUNOSのデーターベースからとはいえそれぞれ異なった手法での分析ですが、旧方式と新方式を比較分析しています。結果は全体では新方式で一時的器械的補助手段が多く使われているのは当然ですが、早期死亡では3つの分析で新方式が劣っていたものの後の2つでは差がなく、一方で待機中死亡は減ったものが3であと2つは差がないといった結果でした。結論的にはこれからもUNOS-2018改定の現場に及ぼす結果の解析が必要としているが、そもそももう古い方式は採用されていないわけで、対照が後方視となるのは致しかたないでしょうが。 

      ここで言いたいのは新方式がどうのこうのということではなく、わが国では20年続いている制度の妥当性や問題分析を全国レベルで行っていないということです。背景にはJOTNのポリシー、個人情報の保護、にあるわけですが、担当学会や研究会の不作為の面があることは否めないと私は思っています。米国は年間心臓移植数が我が国の少なくとも50倍近くあることから、かかる分析もタイムリーにできる背景があるとはいえ、わが国ではどうにかならいかと思うわけです。待機中死亡のリスク分析は個々の施設では出てきているのですが、全国レベルでは出てきていません、AMEDの研究で動いているのかもしれませんが。 ということで、年末の反省会のような感じですが、その第一報にします。 

*:松田 暉. 心臓移植登録患者の待機中死亡に関する全国調査—臓器配分システム改定への考察—. 2019;54(6):291-298  

**:Varshney AS, et al. Outcomes in the 2018 UNOS donor heart allocation system: A perspective on disparate analyses. Journal of Heart and Lung Transplantation. 2020;39(11):1193-4.