2022年2月15日火曜日

臓器提供の新聞記事

   2022, 令和4年の最初の投稿がですが, 遅れ遅れて2月の後半になってしまいました. 遅まきながら今年も宜しくお願い致します. とは言え, もうこのブログも風前の灯(昨年も言いました)かと思われますが, 何とか火を消さないようにしたいと思います. その力となるのは, 袋小路のコロナではなく, まだ未来がある, そして遣り残しがある, 臓器移植です.

  足元の病院での心不全ケアチーム作りも始めて1年半になっていますが, コロナ禍もあって中だるみの感もあり足踏み状態です. そういう中で昨年10月に, ある心不全新薬の発売記念セミナーを近隣の循環器内科の先生方と企画させてもらったのですが, opening remarksを使って我々のチームの紹介をさせてもらいました. これまでの30例ほどの症例の概要を報告をしたのですが, タイミングよく症例報告も出来ました. 約半年の入院治療の後に何とか在宅に移行できた60歳代の末期的虚血性心筋症の患者さんです. コロナもあってリハビリも思うように進まず, かえって廃用が進んでしまい, 緩和ケアも考えるようになりました. しかし, ご本人が自宅(独居です)に帰りたいという強い希望もあり, 自立が難しく移動は車椅子で何とか可能な中で退院にこぎつけたので, 紹介しました. 心不全ケアチームの思い入れの深い症例で, スタッフもこれがチーム医療だと頑張ってくれました. 退院後も在宅で落ち着いておられるので, 心臓関係の地域のニュースレター的なところに症例報告として投稿しようと準備しています. こういう経験がチームの結束を高め, 目標設定に向かって協力する機運が高まることを期待しています.

 さて, 臓器移植ですが, 紹介したいことが直近で二つありました. 一つは新聞記事でもう一つは日本学術会議の移植・再生医療に関する公開シンポジウムです. 今回は新聞記事だけにします.

 29日の毎日新聞の夕刊第一面に「悲嘆の家族救ったカード, 夫の死 臓器提供で心に光」, という大きな見だしが目に留まりました. 最近は臓器移植, なかでも臓器提供を扱う記事は殆どなく, 移植への社会の関心が薄れていく現実のなかでこういう記事を心待ちにしていました. 素晴らしいと思って読ませてもらいました. 一時代前の懐かしい黄色い意思表示カードの写真が出ていました. また, 死後に臓器提供されたご主人の在りし日を偲ぶ, 家族が寄り添っている素晴らし写真もありました. 柏崎市の当時63歳の男性が自宅で心臓発作を起こし, 救急病院で心肺蘇生が行われ, 心拍動が再開した後に専門病院に移送されました. 転送された時, 病院受付の事務の方から奥様が臓器提供の意思表示カードについて聞かれたので, ご主人が生前に意思表示カードの話をされていたので, 自宅にあったものを見つけて病院に持っていかれました. そのカードには脳死と心停止でのほぼ全ての臓器に丸が付けられていました. 搬送後も意識は戻らなく出来る限りの救命措置でも助からないという状態になったようです. コーデイネーターから臓器提供の話を聞き, 生前のご主人の意思を尊重し,ご家族が提供に同意された経緯が具体的に紹介されています. 結果として臓器提供は心停止後の腎臓と眼球でした. この話は2003年に遡るので, 今になってどうしてこういう記事が出たのか分からない所がありますが, 奥様が当時を振り返ってその気持ちを伝えたいというのが本当のところかと推察されます. 

  要点は, 搬送先の病院が臓器提供施設であったこと, 病院が意思表示カードの有無を聞いてくれたこと, そしてカードがあったことから家族全員が納得して提供に至ったこと, と纏められています. また, 子供さんお二人も学校の授業で臓器提供の話を聞いたことがあったということでした. この話は約20年前とは言え, 今も現実に起こる(起こっている)ことであり, 臓器提供の根幹に触れる貴重な記事であると思います. 救命センターといった先進医療施設以外で, 入院時に臓器提供の意思表示について確認することはまだなか出来ていない現実もあります. 意思表示は, 臓器移植ネットワークのカード以外に運転免許証と健康保険証の裏に印刷されていて, 提供しないという意思も含め自分の考えを知ってもらう機会は身の周りに探さなくてもあるわけです.

  私としてはいくつかの疑問もあり具体的なところは記者に直接聞きたいところでありますが, ここではポイントのみ書いてみます. それは, ①脳死と心停止両方での臓器提供に〇を付けておられたが, 提供は脳死ではなく心停止後の腎臓(と眼球)であったことと, ②記事のなかに脳死という言葉はカードの記載内容についての所だけそれ以外では触れられていないこと, です. ①についてはご遺族のご意思があったのかも知れませんが, 一般読者にはその理由をしっかり伝えることでこの記事の価値は上がったと思います. 美談だけではなく, 臓器提供の現実的な課題を伝えてほしかったと思います. このことは2022年の今も変わりないはずですから. また, 敢えて加えるなら, 2010年の臓器移植法の改正のことです. 本人の意思が不明の時は家族が判断できるということの紹介が欲しかったと思います.

  読者がこの記事にどういう反応をされるか大変興味あるところではありますが, 臓器提供が低迷しているなかでこのような明るい話(心に光)が出ることは大変重要なことなので紹介した次第です. もう一つの話題の公開シンポでも, 臓器移植のことや提供のことに対する社会の認識が薄いままであり, これをどうした良いか熱い議論になっていました.

 追伸:昨年の最後の投稿で紹介した心停止ドナーからの心臓移植の論文ですが, 掲載されましたので1ページ目を紹介します.