2013年10月20日日曜日

仙台で日本胸部外科学会開催

  先週は仙台で日本胸部外科学会があり(平成25年10月17-19日)、前日の16日に台風の後を追う格好で出かけてきました。水曜日には評議員会なるものがあり、それに間に合うよう予約していた午後の伊丹―仙台便が無事予定通り運航で、ラッキーでした。土曜の昼まで、ほぼ3日間仙台国際センターでセッションを選んで参加してきました。もうシニア―メンバーですから座長とかの出番もなく、気ままに、のんびり仙台を楽しんできました。といっても、街に出たのは二日目の夜だけで、大学の現役若手リーダーと寿司屋さんに行ったくらいです。台風であまり漁に出られなかったとか、三陸の牡蠣は夏が暑かったのでまだ出回っていないとかありましたが、おいしい寿司とお酒で楽しいひと時でした。
     日本胸部外科学会はもう66回を迎える歴史ある学会で、心臓外科、呼吸器外科、そして食道外科の3つの分野をカバーする外科の中の伝統ある基幹学会です。一方で、米国の胸部外科学会(AATS)は世界をリードするこの分野のリーダー格です。若手医師の教育にも確固たる制度を作っています。外科医の卒後教育(専門医制度、レジデント制度)を3つの分野がまとまって一つの専門医の資格にしています。胸部外科、と言う名称が公的に確立されています。日本では、診療科(標榜出来る)としてはその名前はありません。患者さんに分かり難い、ということで心臓血管外科、呼吸器外科、と分けられました。その結果、かって胸部外科講座(教室)という名称で歴史を築いてきた幾つかの大学の講座は、今は心臓血管外科と呼吸器外科に分けられています。今回の主催大学である東北大学も胸部外科講座でしたが、心臓と呼吸に分かれ、呼吸器外科講座の近藤丘教授が会長であります。
  学会前日の評議員会では専門医制度の委員会報告もありました。新たな制度作りが進む中で、総合学会である日本胸部外科学会の役割が大事であることをお願いしてきました。色々誤解もあって、会員にも不安があったようですが、坂田理事長も学会(理事会)の役割の中の最重要事項として取り上げられたのは収穫でした。胸部外科学会が3分野の専門医制度でのイニシァティブを是非とって欲しいと思っています。この辺りのことは、学会の英文誌、General Thoracic and Cardiovascular Surgery、の最新版に私のレビューが出ていますので、興味ある方はご覧いただければと思います。タイトルは、Where does the new regime of medical specialty certification go? です。
    さて、この学会も最近は3つの統合学会としての役割は何かが模索されてきました。各分野の専門的な研究成果はそれぞれに任せて、分野横断的な研究成果を発表できる、各分野の医師が別々ではなく一堂に会して議論する、そういう機会を増やそうと傾向がみられた学会でした。その中で今回期待したのは、心臓と肺の移植に関する合同企画でした。近藤会長が肺移植のリーダーであることから私たち心臓移植組がお願いし、会長の裁量で実現したものです。具体的には、日本移植研究会と日本肺および心肺移植研究会の合同シンポ、でありました。二つの研究会はほとんど接点がなく、別々に運営され、学術集会も冬と秋に分かれて行われています。海外では米国が主体となって国際心肺移植学会が組織され、世界をリードしています。日本もそろそろ一緒になったら、という事もあって今回合同シンポが実現しました。テーマは共通するものとして、ドナーコンディションと移植成績、と言うものでした。限られたドナーからの貴重な臓器をどうしたら最大限活用できるか、大事なテーマで、臓器提供現場で活動する移植医たちの努力と苦悩がよく分かり、有意義なセッションでした。
   来年は福岡での開催ですが、継続してもらえるよう次期会長にお願いしておきました。臓器移植は内科医との連携が大事で,内科医が来ない外科系学会でこういうことをするのは問題があるのですが、両分野の移植外科医が集まって考えることも沢山あるので、意味はあると思っています。近い将来、心臓移植と肺移植が同じ土俵に上がって会議や議論が出来るようになることを願いながらの参加でした。
   仙台と言えば牛タンではなく、2年半前の大震災を考えないわけにはいきません。学会会長や東北大学の方々も、仙台に来られた機会に海岸の方に行って津波の被災地にも是非見に行って欲しいというお話もありました。仙台はもう震災のダメージが見られない活気のある街ですが、津波の被災地の復興はまだまだなので、東北の人たちに元気付を付けてもらう意味でも足を延ばしてほしいということでした。私は残念でしたがそういう行動は出来ず、せめて地元の特産物を少しでも多くお土産に買って帰る、と言うことにさせてもらいました。
    また次の台風が近づいていますが、伊豆大島の皆さんの安全を願いながら仙台行の話をここで一旦置いておきます。急に寒くなってきましたので、皆様風邪をひかないようご注意を。写真はホテルから市街の様子です。学会会場の方向と思います。

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