2015年7月17日金曜日

改正臓器移植法実施から5年

    今日は改正臓器移植法が実施されて5年目の節目の日であった。昨日から東京で日本小児循環器学会学術集会が東邦大学小児科の佐地教授の会長の下で開かれている。 第11号台風の影響で朝早く家を出てから東京お台場の会場についたのは午後2過ぎで、お目当ての移植に関するシンポジウムに何とか間に合った。
この学会では小児の心臓移植と肺移植推進を目標に委員会活動や学会でのシンポジウムなどで実績を上げてきている。私もかって学会会長もさせてもらい、移植委員会も立ち上げてきたので思い入れも強い学会である。今回のシンポジウムは小児心臓移植と補助人工心臓の二つの柱で開催された。

     今年の特徴は、既に紹介しているベルリンハートの保険適応が始まることから、会場は大いに盛り上がっていた。とはいえ移植適応の子供さんが人工心臓を着けてもその先の移植は門戸が狭く、海外に依存している。そこで我が国で小児の臓器提供を如何に増やすかが心筋症の子供さんを助け道であることから、小児救急・集中治療医である埼玉子供医療センターの植田先生が演者として発言された。内容は先に紹介したものであったが、会場を埋め尽くした会員へのインパクトは大きかったし、頼もしいものであった。何とか小児救急での問題を社会や行政に示し、脳死と臓器提供に関わる課題を解決しないといけない、というメッセージであった。特に、虐待児の除外という現場の負担について、改正法(補足)のに書かれていることから、虐待の可能性の排除について100%は現実的には無理であり、そこには現場の裁量があるという話は興味深かった。

     その前のセッションでは宇宙探査機のハヤブサで有名なJAXAの川口淳一郎さんの特別講演があった。お話も上手で聞き入ってしまったが、言われた言葉の一つに、「規則(規制?)がなかったとしたら自分は何が出来るかを考えろ、であった。規則で縛られた中で何が出来るかでは限界があるから、発想を変えないと飛び出せない、ということである。臓器移植という法律や行政の監視という融通の利かない環境にあるなかで、我々は今何をすべきかについて、この言葉は大事なことを問いかけるものであった。シンポジウムではフロアーからの発言の機会は無かったが、チャンスがあればこのことを言いたかった。目からうろこ、の話である。


     植田先生と後で立ち話をしたが、臓器提供ではない場面での脳死の扱いについて法整備が必要であるというご意見で、移植法再改正ではなく救急や終末期医療の面から検討がされているということであった。脳死と人の死におけるダブルスタンダードの解決への道は始まっていると感じた。

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