2016年6月27日月曜日

医療ツーリズム、上海で会議

最近、海外、特に中国からの日本での健康診断や治療に来られる方が増えている。その背景には、日本の医療が進んでいることや医療費が欧米に比べて安いなどがあるが、政府の方針も後押していて、医療観光や医療ツーリズム、という言葉が賑わうようになっている。政府の後押しというのは、2010年に民主党政権時に「新成長戦略」に外国患者の受け入れの促進が盛り込まれ、その後現政権でも経済産業省がアウトバウンド・インバウンド双方向に力を入れている。戦略としてその支援組織、Medical Excellence Japanを立ち上げ、特に外国人患者受け入れ事業を支援している。海外からの患者受入数はここ45年で年間数万人から倍増する勢いで、2020年には40万人を越える需要があるという。
医療ツーリズムを進めるには海外の患者さんの募集から受け入れ施設を決めたり、費用の面や医療通訳のことなどでかなりしっかりした支援体制が要る。そういうコーディネーター役をする所も増えてきて、これには旅行関係の企業も積極的に事業展開し、受け入れ病院も各地域や専門病院を確保している。私が神戸市ポートアイランドにある公益財団法人神戸国際交流財団に在籍している時に、インドネシアの肝移植希望患者さんを受け入れるキフメック病院が近くで立ち上がったが、地元の医師会は生体肝移植についてかなり強硬に反対していたし、神戸市中央市民病院などの公立病院は市民や県民の医療で手一杯で、海外の患者を受け入れる余裕はない、という雰囲気であった。
今回、このテーマを取り上げたのは中国からの患者さんの国内での受け入れ事業に若干関与することになったからである。元々は岡山の医師と上海の医師の間で医学交流を推進する企画が始まり、私も嘗て西安第4軍医大学と阪大医学部の研究連携に関わったこともあり、お手伝いすることとなった。そして医師間の交流とともにその延長で両地区の華僑の方々の支援で医療ツーリズムの企画が始まった。今回、その中国側の拠点が上海に立ち上がったので出かけてきた。
一泊二日の慌ただしい行程であったが、医療ツーリズムはさておいて、上海訪問を楽しんで来たので書かせてもらうことにした。上海は阪大時代の西安訪問の帰りに一度寄ったことがあるだけで、今回は2度目であった。関西空港から上海までは直行便があり、2時間前後で着いてしまう随分近くなっています。上海側拠点事務所のキックオフ記念会は中心部から少し離れたホテルでこじんまり行われたのですが、日本側は岡山大学の代表(岡山大学のオフィスがある)や岡山の心臓病の中核病院の代表、そして日中友好協会の役員の方も参加し、中国側は行政、医療機関(大学病院)の代表に加え、元上海副市長、そしてなんと片山上海日本国総領事も来られ、盛り上がりました。上海事務所は上海市の許可をもらっていて、上海側にも医療ツーリズムへの期待が高いことが覗われた。因みに上海は国の直轄市であり、人口1400万人の中国最大の都市で、我が国へのビザ発行数も第1位、直近ではディズニーランドが開場し関空からの旅行者も多いという。
上海元副市長の年配の女性が来られていたが、名刺を見ると宋慶齢記念基金財団の理事長さんと読める。中国語は全く理解できないが、華僑の方によると孫文の話しも出てきて、歴史の重さを感じた。宋慶齢とは蒋介石夫人であった宋美齢の姉で、孫文夫人となった方で、有名な宋三姉妹の話しである。以前の西安訪問の時に楊貴妃が通った有名な温泉場、華清池を案内してもらったが、そこには1936年の西安事件で蒋介石が隠れていた部屋の窓ガラスが張学良軍の攻撃で破れたまま残されていたのが思い出される。蒋介石の本拠地は上海であり、ここから西安に向かったという歴史がある。そんなことを聞きながら、そう言えば上海は日中戦争では反日の大拠点でもあったことを思い出した。主に日本であるが以前から歴史物語を読むのが好きで、最近は船戸与一の「満州演義」を読んでいるので、このような話は興味がある。総領事との会話も得難い経験で、我が国の医療や医学教育について意見交換できたことは有難かった。
翌日は新しいオフィスを訪問後、時間があったので明時代にできた公園、古猗園、を訪れた。その中に満州事変を記念した小さな建物があり、説明文には「日本兵による残虐事件を忘れるな」とあった(英文説明)。日中では過去の歴史を見る目が違う、ということを垣間見たようであった。その公園に連れて行ってもらった目的は、隣にある食事処にあった。上海料理と言えば小籠包であり、そのレストランが一番おいしい、ということであった。小籠包だけでなく多彩な上海料理を堪能させてもらい、最終便で関空に帰ってきた。
さて、肝心の上海との医療ツーリズム活動はこれからで、私は学術交流面での立場と共に兵庫県の病院での展開も支援できればと思っている。上海や中国の歴史を学び直してまた訪問したい。充実した2日間であった。


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