2017年11月2日木曜日

日本学術会議の提言

 先の臓器移植市民公開講座の紹介が神戸新聞に掲載されましたので。

 それから、日本学術会議で出された提言、「我が国における臓器移植の体制整備と再生医療の推進」なるものが届きました。日本学術会議の臨床医学委員会・移植再生医療分科会からのものです(委員長は九州大学外科の前原喜彦教授)。内容は、これまで関係学会等が検討してきたものを日本学術会議という国のアカデミアの最高機関が改めて社会にメッセージを出したもので、意義は大変大きなことと思います。内容的には、再生医療は別ですが、脳死下臓器提供増加、心停止下臓器提供増加、に加えて組織移植における法整備が加わっています。脳死臓器提供増加では、提供施設の負担軽減が基本で、さらに臓器配分システムでの地域制(リージョナル制度)の検討、まで踏み込んでいます。提供施設のコーデイネーターについては当然しっかり触れられています。この提言を読むだけで、今の日本の臓器移植・組織移植の課題が浮き彫りにされていて、どう対応すべきかも良く分かります。素晴らしい提言です。

 一方でこの提言に対して国が(国会や行政)どう対応するのか、この提言がどれだけインパクトや影響力があるか、注目されます。ただ、内容的にはこれまで行政や関係学会の動きが緩慢であることへの警鐘とも取れます。

 以下感想です。 この学術会議の提言を読んでまず思ったのは、こういう提言をしなけれなばならない背景の分析はどうなのか、ということです。これは提言という性格から、要点しか書かれていませんが、大事なことであると思います。医学教育分野で、脳死と人の死の教育をどこまでやっているのか、二つの死の定義の存在、などへの踏み込みはこの提言の趣旨が体制整備であることからやむを得ないのでしょうが。

 とは言え、僭越ながら個人的に踏み込んで欲しかった(検討はされたかもしれませんし、既に出されているかも知れません)と思う事項は、国の財政的支援の現状はどうかという視点です。言い換えれば、日本臓器職ネットワークへの予算措置、都道府県への支援(コーデイネーター配置への予算など)、臓器・組織移植関連診療報酬の支援(臓器提供業務については触れられています)、死体臓器・組織移植支援への国の予算の費用対効果や諸外国との比較など、であります。国がこの提言の具体的内容について、これまでどれくらいお金を付けているのか、ということをこのような視点で踏み込んで提示して欲しいと思うわけです。この学術会議の臓器移植担当の部会の活動として既に出されているのかもしれませんので、この意見は私の調査不足かもしれません。しかし、いずれにせよ学術会議の提言に恐れ多くも物申すと言いうことではなく、どうフォローするのかということとご理解くだされば幸いです。

 なお、再生医療の推進、も同時に書かれていますが、これはやはり別扱いではないかと愚考します。臓器移植(主に死体からのもの)と再生医療は、社会の目で見ると相対する医療手段として捉えられているむきがありるからです。そもそも再生医療は社会が科学技術の進歩という点で大変注目している状況であり、臓器提供システムの話とは背景が異なるのではと思うからです。少し脱線しましたが、学術会議の委員の先生方には、この提言の纏めへのご尽力に最大の敬意を表していることを付け加えさせてもらいます。

 この提言は、日本学術会議HP 
    http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t252-3.pdf で閲覧できます。