2017年12月17日日曜日

新専門医制度で見えた内科・外科の不人気の背景は?


     再度 医師偏在に関連した話で恐縮です。
 新専門医制度が来年から始まるが、その一期生(卒後3年目)の応募状況が分かってきいている(日本専門医機構)。マッチングの一次結果なので最終ではないが、おおよその傾向が見えている。内科は2527人、外科は767人、総合診療は153人である。内科は全体の38%を占めるが、前年比(学会がまとめた登録数から)では約21%減少、外科は約6%減少という。外科はまだ何とか維持しているが内科はこれが本当なら大変である。一方、眼科の希望者、特に都会で目立っていると言う。内科外科は修練期間が長く、関連診療分野を回るので資格取得まで長くかかるが、眼科や皮膚科、耳鼻科はストレート研修できるので早く専門になれるという.こういうところが今の医学生に人気が出ているということになる。 
さて、ここでいう外科も内科も基本領域というもので、内科はその後に循環器、消化器病、糖尿病、呼吸器などに分かれていくので、この減少がどの分野がその影響を受けるかはこれからの問題である。外科も、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、乳腺内分泌外科、などに分かれて行く。ここで誤解が生じやすいのは、社会で言う内科と外科は、昔はそれで通じたが今はこのような大きな括りでの内科、外科は存在しなくなっている。標榜科名には内科、外科は存在していて、病院でも内科と書かれている、実は内科の専門外来の集まりである。総合診療的な意味を持たせている場合もあるが、これからは別に総合診療科(内科というより全体を見る)というものが登場してくるので、世にいう内科の存在意義は薄くなっている。外科でいう一般外科は消化器外科が担当ということが多かったが、内科は特に消化器内科がカバーしているわけではない。ジェネラルな内科という専門性を持った内科医は限られて、サブスペシャルといわれる内科系医師が担当してきたが、今回、内科系ではなく一つの基本領域として独立した総合診療専門医が創設された。しかし、希望者はまだまだ少ない。
この総合診療専門医の登場で、内科外科といったジェネラルな初期対応の在り方は変わってくるのか。初診でしっかり鑑別診断が出来、専門医へ送る役割を果たす総合診療医、プライマリーケア医、が必要であり、わが国ではここが弱点であった。英国のような家庭医制度もない。新たな総合診療医がわが国で定着してくのか、大事な判断が要る。総合診療医を育てる仕組みが殆どないことが課題である。内科医のほとんどが循環器や消化器などのサブススペシャルで活動しているのは、大学の講座がそうなっていて、総合診療科はあっても大きな講座にはなっていない。ここを何らかのテコ入れをする施策や処遇改善をするなどしないと育たないのではないか。地域医療を担う病院(自治体病院など)で少なくとも若手を指導できる一人の総合診療医がいるようにすることで、いわゆる内科医不足の一部は改善されるのではないか。
論点を整理しなといけないが、今回言いたいのは、内科と外科といった大きな括りでの専門医制度の在り方である。両者は基本領域で、実際の専門性の高い部分はとサブスペシャルになる。この内科外科分野の二階建て構図は新専門医制度の構想初期で議論になり、外科ではすでにこの仕組みが定着していることによって、内科も渋々同調した経緯があったと記憶している。しかし本音でいうと、内科と外科の基本領域としての存在意義は薄れている。では何故残っているのか。自分自身は外科の共通する基本分野は残すべきと考えていたが、 新制度つくりが混迷を来している中で、反省時期に入っている。初期研修もそうだが、臨床医学のベッドサイド教育のあり方の変化もあり、かなりの部分が医学部教育への前倒しで対応できると思われる。今更ではあるが、10年先には新制度の見直しで現在の内科外科のサブスペシャルが基本領域に下がる可能性もあるのでは思っている。すでにその前兆として現実にはサブスペシャル研修(修練)の前出しで基本部分の内科と外科は形骸化してきている。一方では、内科外科のこの二階建て構造が本来の目指す姿を考えれば、そして10年後に立派な成果が上がれば、また様相は変わってくるのかもしれない。しかし、そのような前向きの変化は期待薄というのが現実ではないか。
内科希望者の減少というところに帰ると、専門医資格が卒後5-6年で取れるかどうか、という卑近な話で恐縮だが、この修練期間の話は大事な論点であるということになる。そもそも専門医といってもその分野の標準的医療のためのトレーニングが済んだということで、医師の生涯教育の始まりであることを考えないと本質から外れるが。さて、外科では参入者が微減とはいえ増えてはこないとすると、これも問題である。しかし、地域医療での外科ではどういう分野で医師不足なのかの分析がないと話が進まない。それに加えて地域偏在があるので、一概に総数での話は誤解を生んでしまう。
専門医機構の発表では、都道府県別で、内科では20名以下が16県ある。外科では10名以下が27府県もある。これは地域医療での外科の崩壊にも繋がる。日本外科学会内部資料でも分かるが、都市部の有名大学は人気が高く、地域偏在は現実に起ころうとしている。都市部大学で1プログラム50名以上の枠を作って受け入れようとしている。関連病院が多いところは枠が大きいことになるが、これだけ地域偏在が問題視されているなかでのプログラムの在り方が再度問われるのではないかと心配される。内科希望者の減少が事実とするとこれは医療体制維持、医学部講座の役割維持、において大変なことであると思う。
専門医制度の背景は複雑である。医局講座制、学会の覇権争い(会員確保)、多すぎる自治体病院(集約化できない)、勤務医の働く環境、女性医師への配慮、などなど、で頭が混乱してくる。


しばらく更新していなかったせいか、歳なのか、論点整理に陰りが出てきた。自覚できるだけまだ許されるか。