2019年2月18日月曜日

心臓外科医と働き方改革:施設集約の役割



1月にこのブログ再開してから次に何を書こうかと思っているうちに早くも2月の後半になってしまいました.次はスキーのこと,と書いていましたので少し紹介しますと,1月下旬に例年行われる心臓血管外科ウインターセミナーが北海道の富良野でありました.研究発表をしながらスキー,スノーボードを楽しもうというものです.もう33回目を迎えル内長い歴史があり,毎年場所を変えての開催で色んなスキー場に行けことが楽しみです.私も阪大在職中に安比高原で特別講演にエベレスト登山を達成された三浦雄一郎さんを迎えて開催しました.タイムレースもあるのですが,70歳以上の参加は私だけになってしまいましたが,生涯スポーツとしてスキーを今も続けられるのはお世話になった整形外科医の方々に感謝です.その後とこれからの予定を考えると,今シーズンの雪上日数は久しぶりに2週間になるようですが,調子に乗って怪我をしないように注意が肝腎です.

さて,本題の働き方改革ですが,現政権の目玉商品で種々の対応が主に残業時間の制限,ということで進んでいます.しかし,医師は別ですよ,というのがこれまでの方針でありましたが,ここに至って急に医師対応も政府が強力に進めてきました.概要としては5年後に医師の時間外勤務時間を年間960時間,付き100時間に抑える,というものです.段階的ではありますが,これは種々の形態があり,専門分野も異なる医療現場ではかなり混乱するのではと予想されます.ただ,単に時間制限では本来の趣旨にそぐわないので,その他のサポートシステムも提案されています.そのなかで,タスクシフティングが注目されています.これは米国で普及しているNurse Practitioner (NP)Physician Assistant (PA)といった医師以外の専門職種に医師の仕事を分担してもらおうというものです.これらの職種の必要性は心臓血管外科分野でもう10年以上前から推進しようとしているもののです.前者は我が国では特定看護師制度として手術室での手術への直接介助,ICUでの医師の仕事の代行,などが一部の病院で進みつつありますが,まだまだ一般的ではなく,これを抜本的に増やしていくことも提案されています.この特定看護師制度は当然進めないといけませんが,それだけでは根本的な解決は難しいわけです.

この医師の勤務時間の合理化,残業時間の適性化は沢山ある専門職の中で心臓血管外科が最も深刻な問題肖直面していることは広く知られています.難易度の高い手術が多く手術時間が長い,手術が終わっても術後管理で数日帰れない,修練期間が長い,など容易に時間外残業時間を少なくすることが難しい分野であります.先日の岡山市での日本心臓血管外学会でもこのテーマで熱い議論がありました.その議論の中で私も発言させてもらったのは,働き方改革を進める上で我が国の特殊な事情,即ち小規模病院が非常に多いという背景です.医療の質の向上,若手医師の専門医修練制度の効率化,医療費の無駄を少なくする,高度医療の普及,などでこの問題がキーになります.そこで登場するのが施設の集約,であります.心臓血管外科分野で若い人の修練を国際レベルに上げる,言い換えれば手術経験数の抜本的増加,にはが避けて通れないのが施設集約です.これはそれぞれの病院の設立背景も違い,地域医療の確保もあり,心臓血管外科診療をどこかで纏めることは容易ではなく殆ど実現していません.最近になり,公的病院の合併が一部で進んでいるのはその動きでもあります.

ここで議論になるのは,心臓血管外科医の働き方改革における施設集約です.しかし,ただそれを原則論で強調しても動かないわけで,そこで私の以前からの持論ですが,施設集約は専門医制度とのリンクさせることが重要であるということです.この働き方改革議論の進む中で,心臓血管外科文(分野では専門制度も改革していく,ということが非常に大事あります.担当学会や心臓血管外科専門医認定機構の方々の奮起を望むものであります.医療現場が混乱しないような配慮も当然必要ですが,知恵を集め,若い人たちの意見を聞きながら,そして最後は大学教授の英断を期待するものであります.この動きが加速することを願っています.



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