2013年9月9日月曜日

日本移植学会で

    先週は京都宝が池の国際会館で、アジア移植学会と日本移植学会が合同開催で行われました。会長はアジアが高原阪大教授(腎移植)後者は澤教授(阪大心臓血管外科)で共に阪大であり、言い換えると阪大の移植関係者の合同開催と言ってもいいでしょう。アジアの方は週の前半で、大雨や天候不順で海外からの出席者には気の毒でしたが、後半は天気も回復し日本移植学会は盛会に終わったことは母教室関係のものとして良かったと思います。アジアかも沢山来られていましたが、各国の臓器移植の現状が良く分かり、どうしたら脳死(死後)の臓器提供が進むかが議論になっていました。といっても、宗教や国民性で欧米に遅れていた脳死臓器提供も、各国は国が制度を作り後押しをして随分成果を上げていました。その中で、我が国は依然として後進国で、ここ数年提供が増えているとはいえ、桁違いの差に改めて根本的な対策が必要と思いました。韓国は宗教的な背景が異なるとはいえ、最近は年間400例に達する脳死での臓器提供があり、心臓移植も年間100例近くまで増やしています。日本がいまだに年間50例弱の臓器提供に比べると大きな差があります。臓器提供の比較では、人口100万人当たりの数が出ますが、世界トップのスペインが約30、欧米では少なくとも10を超えています韓国は数年前の8から今は10に近くなっていますが、日本は1にも満たない状況です(0.3-0.4)。  
   一方、肝臓移植では生体肝移植が米国や海外ではドナーの死亡例があったりして、減少傾向にあることも分かりました。日本は依然として肝移植は生体に依存していますが、生体肝移植数は減少傾向(日本で年間500が400程度)にあることも示されました。心臓移植は脳死移植しかないのですが、我が国の脳死臓器提供は人口や待機者数を考えても、年間500例、少なくとも数百例はあって欲しいと思います。どうしたいいのか、これでいいのか、何故か、など討論が盛んに行われましたが、学会は議論だけではなく具体策を実行をすべきと思います。
     さて、私は今度の日本移植学会で、会長の澤教授の会長講演の司会と、特別企画の「脳死移植の歩み」、という所での出番でした。最初の法律が出来てからの心臓と肝臓の最初の症例の話を紹介しろ、というものです。心臓は私、肝臓は当時信州大、現在は順天堂大の川崎誠冶教授が演者でした。今さら再開例は、という昔話はさておいて、今何をすべきかを主に喋らせてもらいました。今のドナーの数では到底移植医療は成り立たないから、移植学会は奮起してほしい、というメッセージでした。一方、補助人工心臓は心臓移植には無くてはならない存在ですが、その適応や今後の展開についても普段考えていることを述べさせてもらいました。人工臓器も再生医療もこれから大事ですが、共に臓器移植を基盤にして発展するものであり、また存在するものであり、ドナー不足をまず解消する努力をしてほしい、という内容でした。会長の再開例をもう一度若い人に知ってもらうという意向とは異なったかもしれませんが、普段考えていることを聞いていただけたと思っています。 
    この学会は、数年前からですが、看護師の方の参加が増えています。これは移植コーディネーター制度が定着してきた証拠と思います。設立に関与した者として嬉しいことです。学会では看護系セッションも結構あり、その中の一つに阪大関係の発表と心肺移植の術後の患者さんの発表もあったので聞きに行ってきました。ミニ口演で、討論時間はあまりないのですが、フロアーからあまり質問もないので、というか対象が移植施設に限るのでしょうがないところもあるのですが、少しコメントと質問をしてきました。一つは、心臓移植と心臓リハについての東大病院理学療法士の方の発表であり、もうひとつは阪大移植医療部移植コーディネーターの心肺移植待機患者ケアの発表でした。何か、参考というか刺激になればと思ってのコメントでした。まだまだ話題は多いのですが、私の印象に残ったことを主に紹介しました。
     昨日、2020年のオリンピック開催地が東京に決まって日本中が湧いていました。本当に良かったと思います。決まると決まらないでは、日本の国際的信頼、わが国の経済発展、国民生活、そして震災復興、なかでも福島の汚染問題、に大きな影響が及ぶからです。原発汚染問題もオリンピック準備もこれからスタートでしょうが、皆で支えるのが大事でしょう。まあ、これで政治や経済の東京一極集中が益々進むのでしょうが、大阪とか関西はどうなるのか、という思いもあります。科学で頑張りますか。

 図の説明 左は我が国の脳死臓器提供の推移 法律が変わって増えているが年間50例に至ってていない。




  韓国の脳死下臓器提供数の推移 折れ線は提供総数、棒グラフは心臓移植数。

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