2014年7月7日月曜日

小児の心臓移植を支える方々

 先週は岡山で小児循環器学会が開かれた。50回の記念大会で、岡山大の佐野俊二教授が会長。先天性心疾患の診断治療について、循環器小児科と小児心臓外科がジョイントする学会で、海外からも多くの招聘者もあり、賑やかに開催された。会員懇親会では、再び「マグロ解体ショウ」があって大いに沸いていた。  

     さて、最終日にあった「心臓移植への提言:心臓移植を受ける子どもと家族への多職種連携支援」について紹介する。これまでは関連学会では移植の成績とかドナーの問題が多く取り上げられたが、今回は外科医、小児科医、レシピエントコーデイネーター(Co,看護師)、チャイルド・ライフ・スぺシャリスト(CLS),臨床心理士、そしてソーシャルワーカー(SW)、が一堂に会した多職種が集まるこれまでにない企画であった。重い心臓病を持った子供さんが心臓移植という究極の医療を受けるときに、単にチーム医療では片付けられない多くの課題があり、まさに選ばれた専門家が集まらないと移植にも到達出来ないし、手術も成功しないし、移植後の管理や社会復帰も出来なくなる。そこには子供特有の問題へ対応できる専門家が不可欠である。今回の演者はそれぞれ違った施設からであるが、こういった方々各施設で揃えるということがこの10年ほどで進みつつあることも分かった。小児の心臓移植はまだ我が国では10例のも満たないし、11歳以下の小児の心臓移植ができる施設も4施設と限られているとはいえ、関係者の努力でこの仕組みも我が国で着々と進んでいることが垣間見えた。  

   トップバッターの外科医は、米国で活躍中の今村道明先生で、米国で小児心臓移植や補助心臓の経験ではトップを走っている。我が国からの小児の患者さんを引き受けておられる。発表では、米国での小児(18歳未満)の心臓移植は昨年470例(55施設)で待機は平均で2か月である。アーカンサス小児病院での移植チームについて紹介があり、小児の外科医は二人であるが、内科医、肺専門医、病理、NP(ナースプラクテショナー)、栄養士、などが基本チームに加わっているのが特徴である。日本人の外科医がここでチーフを務めていることは多いに誇れることである。今村先生は心不全のセッションでも講演されていたが、これからも多くを学びたい方である。小児科医としては東京女子医大の清水美妃子先生が登場し、小児循環器医の役有の重要性を強調されたが、我が国の小児での心臓移植適応患者数は約50例と予測されていた。

   レシピエントCoがお二人登場(国循と埼玉医科大)され、その役割を紹介されたが、今や日本の心臓移植はこの方々なしでは進まないことが分かり、日本移植学会が中心となって教育認証制度を作ってきた成果と考えるとうれしい限りであった。とはいえ、多くの役割が降りかかっていて、看護師は患者ケア、という枠組みでは限界があることも明白になってきたようだ。役割から言うと、いつまでもコーデイネーターで良いのか,と言うことである。移植の準備から登録・待機、そして移植後フォローと、守備範囲が広すぎる。VADのことまで担当するのは無理である。では数を増やせば良いのか,というとそうでもない。コーデイネートする職種と、より治療に介入できる看護職者が別にいても良いはずである。この辺りのことは最後に述べる。

    今回の企画には、SW、臨床心理士、そしてCLSが登場したのが特徴である。臨床心理士としては阪大病院の方が登場したが、この方は私の在籍中から小児の移植に関わって頂いていた。子供さんへの生体肺移植を行ったが、10歳の子供さんは当初は移植を受け入れるのは難しい状況であったが、病気のこと、移植のこと、薬のこと、などを2日月程かかって説明し、移植に到達できたのもこの方のお蔭であった。その後も大事な仕事をされている。最後に紹介するのはCLSである。日本ではまだ馴染みが少ない職種であるが、米国に教育認証制度があり、それを取った方が日本で30人もおられるそうである。そのお一人で、阪大病院の小児医療センターで活躍中の方の発表があった。CLSは治療経過に添った心理面の治療介入を通して患児と家族に心理社会的ケアを行う医療専門職と説明された。がんや移植、慢性疾患で入院中の子どもさんを、心理学をベースに遊びや漫画などを通してサポートするまさに病気の子供さんの命を支える専門職で、演者のかたは阪大病院で素晴らしい成果をあげられている。移植医療には限らないが今後我が国の小児医療では不可欠の職種と思われた。阪大小児科の大園教授の英断に敬意を表したい。一方、我が国ではこういう心のケアを専門とする医療専門職が臨床心理士にしてもなかなか制度化されないのは何故であろうか。医師側にも責任があるのではないかとも感じられた。  

     さて、私は最後にコメントをさせてもらったが、10年でのこの分野の他職種連携が進んでいることにびっくりしながら、関係者の努力、移植施設の病院上げての努力に敬意を表した。一方、Coの方からの発表で,看護師というベースから当然ではあるが、患者さんのケアが中心であることが述べられた。医師側はキュアであり、平行線の様に見えるが,そこを橋渡しするのがコーデイネーターであり、登場した各専門職である。しかし、米国のNPを見ても分かるように、あるいは日本のICUでの看護師の医療への介入を見ても、看護師はケア、という概念をどう変えていくか,移植現場でも問われている。私は移植医療現場がその良いテストの場であると思う。座長の東京女子医大看護学部の日沼教授に振ってしまったが、今後は専門看護師や特定看護師の出番を期待したい。しかし、日本では看護の高度専門職や今回登場した他の医療専門職者にその役割に応じた働く場を病院側がどう提供できるかが問われている。この点ではまだ緒についた所である。管理側の見方である、移植医療が進まないと雇えないとか、診療報酬加算がないと無理、といイタチごっこである。何とかならないかという意識を新たにした。司会のもう一人は,阪大の福島教偉教授で、素晴らしい企画と要点を絞った議論に感謝。