2014年7月22日火曜日

在宅薬学会

この連休中に大阪で第7回日本在宅薬学会が開催されました。私は顧問でありますが、その理由は①発起人であり理事長の狭間研至医師が阪大第一外科の同門であること、②学会設立時に兵庫医療大学で薬学6年制教育に関わっていたこと、と思います。昨年から薬学教育からは脱出しましたが、これまでの延長でサポートさせてもらっています。在宅医療には薬剤師の関与が重要であるという先見性の高い活気ある学会です。今回は初日しか出席できませんでしたが、在宅医療と薬剤師が当然ながらメインテーマで、中でも薬剤師がチーム医療に一員として果たす役割についてのシンポジウムがあったり、特別講演で厚労省保険局長の唐澤剛先生の社会保障と税の一体化(追加、正しくは「地域包括ケアと薬剤師・薬局の役割」)の講演があったり、私も結構楽しんで聞かせてもらいました。感想を以下に書かせてもらいます。
狭間理事長がそもそも言い出したのは、薬剤師もバイタルサインをとりましょう、であり、これが従来の薬剤師を薬局や病院薬剤部から表に出すきっかけとなったのであります。当初は先頭で言っているのが医師であることもあって周囲は懐疑的でしたが、今はこれが大きなうねりになって薬剤師を在宅へと動かしています。今回も在宅医療の現場からの声を聞いて、在宅医療を支えているのは看護師と薬剤師であると認識しました。バイタルサイン、という一言が世の中の医療を変えたと言っても良いでしょうが、狭間理事長の周到な計画と全国を走り回るエネルギーがそうさせたのでしょう。
その現場の話でよく話題になるのは、お年寄りが本当に沢山の(15とか20種類)内服薬をもらっていて、それが殆どの服用されずにおかれている(溜められている)事実でしょう。医療費うんうんもありますが、医師の責任もあるのは当然です。保険薬局の薬剤師さんが敢えてそこにメスを入れようとしていることも分かりました。経営より患者さんの健康、が薬剤師の心意気として感じられました。日本の医療費は,技術料が安く,薬代に多く使われていることは以前から指摘されていることですが、薬剤師の役割が変わってきたことで改めて注目され、また改善が期待されます。こういう問題を日本医師会はどう考えているのでしょうか。医師の側からすれば、日本の恥でもあります。製薬業界もこれに甘んじていないで自らこの問題に踏み込んできて欲しいと思います。医療の無駄を一つ一つ洗い出して改善するのは誰の責任なのでしょうか。出席の方も指摘していましたが、薬局に来る処方せんが3ページにもなる、何とならないのか、欧米のように1枚だけ、3種類までしか書けない(根拠は不明)ようにしないと、といった意見はどこにぶつけたらいいのか。大学病院でも診察医ごとでは処方薬の制限が既ありますが、複数の診療科にまたがると瞬く間に数が増えていくのが実態のようです。
さて、今日書きたかったのは、前にも少し触れた,在宅医療の「宅」とはです。狭義の宅は,自宅でしょうが、それは不可能に近くなっていますし、これからはこの宅、をどうするか国の施策にかかっています。そういうなかで、唐沢局長は、社会保障と税の一体改革のあらましを説明されました。超高齢化社会突入、団塊の世代が高齢者に入る2025年問題、消費税の使い方、そして地域包括ケアシステムがどうして必要になったかの説明でした。この目玉の「地域包括ケアシステム」は、高齢者への医療と介護の今後を住まいを軸(中心)にして進める施策で、住み慣れた地域で,安心して暮らし続けられるように、医療・介護・予防・住まい・生活支援、を一体的に提供します、という謳い文句であります。この問題に何人かのパネリストは意見を出していました。」皆さん地域で本当に頑張っておられますが、たとえば東京都の中心の区ででは、住宅事情や人口過密もあり、ケア付き住宅などの宅を新たに作ることは不可能であること、自宅で一人住まいをしていて現在のマンパワーや関与する職種ではケアが行き届かない現実、介護と病気が分けられないこと、などなどが浮き彫りにされていました。
私が思うに、まだ状況を充分把握していませんし、これから10年先のことは読めませんが、この包括ケアシステムの第一印象は、ほぼ地域への丸投げではないか,ということです。必要なときに必要な医療・介護サービスを受けられる社会へ、と言いながら、一方では地域の老人クラブ、自治会、ボランティアー・NPOなどガ支える仕組みと書かれています。国は予算面でいろいろ支援することがパンフレットに書かれていますが、ひねくれた見方をすれば、国は最低限のお金で、後は自治体や地域でお互いに支援して、住みよい地域を自分たちで作って行きなさい,と読めるのではないでしょうか。行政は、空き家が多い集合住宅や団地の活用も考えておられるようですが、余った所の活用が主で良いのでしょうか。ケア付き老人ホーム(例え)などを国がしっかり用意するべきと思うのは素人考えかも知れませんが、デンマークの老人介護対策を見れば分かります。地域中心で出来る所と、そうではなく根本的な施設や支援システムが不可欠な所、の切り分けも必要でしょう。
公衆衛生や介護などの全く素人の外科医が思いつきで言っても何にもなりませんし、失笑を買うだけでしょうが、このブログの「論点整理から課題解決へ」の趣旨に沿って気ままに書かせてもらいました。それにしても、薬剤師の意識も役割も変わって来たことを実感した1日でした。来年の大会が楽しみです。

写真は狭間研至理事長の大会総会での挨拶。