2014年10月23日木曜日

iPS細胞で心筋再生治療、新たな展開

 今日のニュースですが、iPS細胞の研究でまた新たな展開です。京都大学の山下教授のグループがヒトiPS細胞から作った心筋組織シートをラットの心筋梗塞モデルに移植し心機能の回復が得られたと言うものです。心筋細胞だけでなく心筋組織のシートであり、これをヒトiPSから作ったこと、しかも動物で成果が出来たこと、ということが素晴らしいことです。世界初です。

これまで阪大では骨格筋芽細胞シートの臨床応用を進めていて、心筋症の患者さんの心機能が改善したことが報道されています。この筋芽細胞を用いたシートでは心機能の回復はサイトカイン効果という、植えた細胞から出てくる生理活性因子(蛋白)によることが明らかになっています。ということは、シートにした細胞自体が心筋と同じように,また残った心筋と繋がって、収縮したりするものではなく、いわば薬を放出する装置的な役割と考えられています。またこれまでのシート治療は使われる細胞に制限があり、真の心筋再生(新たに心筋細胞が出来る)とは言いがたいところがありました。そこで当然の流れとしてヒトiPS細胞からの心筋再生の研究が活発となり、阪大や慶応義塾大で精力的に進められているようです。そういうなかで、今回の京都大学の成果は大きなステップを刻んだわけです。なお、培養した細胞をシート状にする技術は東京医女子医大の岡野光夫教授の発明した温度応答性培養装置であり再生医療研究を大きく発展させています。

さて、これまでの心筋細胞シートでは心筋以外の血管や支持組織を組み込むことが出来ないという大きな課題がありました。細胞に酸素や栄養を送るライフラインが出来なかったということです。これに対し京都大の山下教授らは、ヒトの皮膚細胞から作ったiPS細胞(元の細胞)にこれまでと異なった刺激因子を加えることで、心筋細胞だけでなく血管となる細胞(内皮細胞と平滑筋細胞)も同時に出来ることを発見し,これらの細胞が混在したままでシートにする成功しました。心筋組織シートです。さらにラットでの実験でこのシートが4週間後にも生き残ってかつ血管も出来ている、というまさに心筋組織が生着していたという結果です。また心機能改善効果は2ヶ月後にも続いていました。
(この部分、一部修正しました)

今後は大動物での実験や、がん化しないか、どの位の大きさまで作れるのか、特発性心筋症ではどうなるのか、などなど課題は沢山あります。しかし、iPS細胞を使った再生医療が、眼科領域から心疾患にも確実の進んできています。他の大学の成果も併せて、日本版シート工学による心筋再生治療を実現していって欲しいと思います。

さて、またまた余分なコメントです。TVニュースでも心不全の究極の治療である心臓移植はドナーに依存するという限界があり、これに変わる再生医療といういつものフレーズが出てきます。米国では人口が約2倍でも心臓移植は毎年2400例ほど行われています。日本は年間50例にも届きません。人口比で24倍です。子供さんは相変わらず米国に行って移植を受けています。日本ではだから再生医療を、ではなく、心臓移植もしっかり普及した上で再生医療も、というべきです。今、心臓移植を待っている多くの患者さんは再生医療まで待てないのです。今、全ての臓器でドナー不足は深刻なのです。