2015年3月27日金曜日

成人先天性心疾患


最近の心臓外科で関心が高まっているなかに、成人先天性心疾患、という領域があります。生まれつきの心臓の異常で、生直後(新生児期)に外科手術をしないと生存できない重症の場合もありますが、ファロー四徴症や心室中隔欠損症など多くは小児期に根治手術を受けています。また、心房中隔欠損症のように成人なるまで症状の出ないものもあります。こういった小児期に手術をした方で成人期までフォローされている方や手術を受けていないで大きくなった方等の数がどうしても年々増えてくるわけです。我が国では毎年約100万人が生まれてきますが、その1%は生まれつきの心臓病を持っていて、かっては長生きできなかった病気も外科治療や内科治療すごく進歩して、今では90%が成人期まで到達されます。15歳とか18歳以上の先天性の心疾患を持った方は1997年には約30万人に達して数では小児患者と同じ位になり、今では新たに臓病で小児期に手術や治療を受ける子供さんより多くなっています。
こういった小児期に根治的な手術や一時的な手術(姑息手術と言いいますが)を受けた方は、全員ではないですが、残っている病変による心不全や不整脈、そして肝臓障害などを持った方が少なくなく、小児循環器医や成人循環機器医、そして心臓外科医がフォローしている訳です。ただ、こういった方は大人ですから、小児科医が見るには限界があり、精神的なことや全身の管理、不整脈治療、再手術など、成人の先天性疾患特有の病気についてのプロが管理する必要が出てきています。そういなかで、成人先天性心疾患専門の診療科や専門医が登場してきていますし、学会も出来て毎年一月ですが活発な活動をしています。
このテーマを選んだのは、私がかって小児期に外科治療に携わってきた方の多くが、30歳とか40歳といった成人になって来ておられるからです。その中の一部の方では病変が残っていたり、解剖学的な異常、不整脈などから心不全が強くなり、再手術や別の心不全治療を受けるようになってきています。私の心臓外科医としてのルーツは小児の先天性心臓病であったことから、学術的にも関心が高いわけですし、いまでも昔の患者さんのフォローをさせてもらっています。経過が順調で、社会人として制限なく活動されている方も多い中で、薬を飲んだり、生活の制限をしたり、人工弁の管理をしている方などがおられます。年賀状でのやり取りが多い中で、何人かは外来でフォローしています。多くは昔話をしたりして年1回の同窓会的なところもありますが、大人まで頑張ってきた心臓と仲良く付き合えるようサポートしています。
この成人先天性心疾患の話題は、兵庫医療大学の学長ブログ時代にも一度取り上げました。(2010,10,15, Friday) その背景には、心不全が進んでしまって残された治療が心臓移植しかない、という方が少ないですが出てくるようになったからです。肺も悪くなると心肺同時移植が必要になってきます。阪大では既に二人が心肺移植を受けていますが、先天性の複雑な心臓病で肺高血圧を来したかたです。心肺移植は必要なくても心移植の可能性がある方は少なくないのですが、ドナー不足で長期の待機や補助人工心臓治療も考えるとその選択は難しく、保存的治療が優先されている状況です。
成人先天性疾患の患者さんは、チアノーゼ(唇が紫色になる)もなく、一見心臓病を持っているとは見えない方が多いのですが、ペースメーカーや利尿剤などに頼っている方も少なくありません。成人先天性心疾患という患者さん群があることは一般にはあまり認識されていないのですが、大人の心不全患者さんのなかで占める比率は年々増加していて、専門の医師やチーム、施設が今後増えてくることを期待しています。

先日、東京新橋のホテルから見えた夕方の東京タワーがきれいでした。