2015年3月14日土曜日

医薬分業、規制改革会議で議論

3月に入って前回紹介したように全関西学生スキー選手権大会があり、ご無沙汰していました。大会は春の雰囲気の中で無事終了しましたが、最終日は寒波がぶり返って3月とは言え真冬並みの気象でした。今シーズンの雪上活動は終了です。

    今日のテーマは、先日12日に東京で行われた内閣府の規制改革推進室公開ディスカッション「医薬分業における規制の見直しについて」についてです。1月に次いでこのテーマだったようです。私の仲間がFacebookで紹介していたので知ったのですが、阪大第一外科の同門で薬剤師界では売れっ子の元?外科医である狭間研至氏がパネリストとして登場したこともあって、FBでは盛り上がっていました。

さて、医薬分業というテーマに直接関わっていた訳ではないのですが、新設の兵庫医療大学で6年制の薬学教育にお付き合いしたこともあり、関心があり、また狭間氏の元上司でもあり、同氏が立ち上げた日本在宅薬学会にも創設から参加させてもらったりしています。新しい薬剤師の登場で医療での関わりがどう変わるか、また何を期待するか、関心がありますのでこの話題を取り上げました。因みに、兵庫医療学長時代のブログでは何度か薬学教育や薬剤師関連のことで書いています。2009427年制薬剤師教育20091130日は米国の薬学教育201058日はトロントで薬局に薬を貰いに行った時の話、 2013118日は大衆薬ネット販売解禁、等です。

今回の公開ディスカッションの議事資料は下記のWebで見ることが出来、私のコメントもその資料を基にしています。ディスカッサントには、厚労省、日本医師会、健康保険連合会、日本薬剤師会、アカデミア(医療経済学)、そしてしんがりは日本在宅薬学会(狭間研至理事長)でした。

http://www8.cao.go.jp/kiseikaikaku/kaigi/meeting/2013/discussion/150312/gidai2/agenda.html

 
    イントロの政府からの資料ですが、事前のアンケート調査(約1000人対象)で医薬分業という言葉やその内容を知っている人は50%程度で、この制度で処方する医師と調剤する薬剤師の役割分担について、必要があるという人は25%程度で、思わないか分からないが残りを占めています。コストでは約60%が高くなると思い、70%が薬は医療機関に近い薬局に行っている、という背景が示されています。国民側から見て、形骸化している制度であることが明白のようです。

さて、今回の規制の見直しの対象になった医薬分業とは何かといいますと、医師が診療して薬の処方をして、患者さんはその場(その医療機関内)で薬を貰えた時代から、医師(医療機関)は診療を担い、薬剤師(薬局)が調剤を担当することを原則的にですが決めたものです。医薬分業法というものが登場して半世紀以上になります(1956年施行)。目的は、医師と薬剤師がお互いに独立した機能を発揮することで、医療の安全性の面から医療の質の向上、また医療保険経済面でも効率化(無駄を少なくする)を図ることであったと思われます。その流れを加速させたのが、ここ20年位に広がった大病院での院外処方へのシフトであります。大病院では調剤のみのために沢山の薬剤師(薬剤部で働いていて病棟には来ない)を抱える必要があることと、自前で薬を出す経営上のメリット(薬価差益の減少)がなくなってきたことが背景です。阪大病院でも私の前任の松澤病院長(現住友病院院長)時代に院外処方に切り替えたのですが、文科省はその年度の薬剤費や処方代が大幅に減少する(実質の損益ではないのですが)ことでクレームが来ていたことを思い出します。一方、現実では診療所や小規模の病院では今でも院内処方が多いことや、院外処方といっても名ばかりで大病院では門前薬局がひしめいていて、何をかいわんや、というところもあります。

60年近くなって何故これを見直そうとしているのか。医薬分業は患者視点から問題がないか、①利便性の問題(医療機関と薬局が構造上離れていなければならないこと)、②薬代が高くなるが患者さんへの薬の説明や疑義紹介などでのメリットがあるのか、の2点であると規制改革会議の説明です。構造上の分離は意味があるのか、薬のコスト高(調剤費は年々増加傾向)は患者のためか、が論点です。処方箋を出す側と薬を出す両者の独立性の確保が法律で決められているのですが、同じマンションで入口が別でも一体的な構造とみなされて医療機関が訴訟で敗訴しています。両者の出入り口が構造上離れていなければならないが、隣接していても公道面していたら許容されるとか、まさに現実離れの規制の課題が浮き彫りになってきているということです。

もう少し現状分析をしますと、分業率は67.0%で、かつ年々増加していること、この20年で薬価差(23年度約8%)および国民医療費に占める薬剤費率は低下(23年度20%)していると厚労省は説明しています(ただ、これらは過去10年では横ばい)。また、後発医薬品使用率は漸増し薬剤師からの説明で変更している割合が数年目から増加していることも注目されます。そして厚労省は、かかりつけ薬局での薬学的(この言葉は?)管理をチーム医療の中で進めることを描き、今後の方向性は、かかりつけ薬局を作る体制、かかりつけ医(医師会主の主張に配慮か)との連携、そしてセルフメディケーション、そして地域包括ケアの推進、で絞めています。

薬剤師会の立場からは、医薬分業を薬物療法における安全性と質の向上、と考えていて、平成18年の医療法改正で薬局が「医療提供施設」であることが明記されたことと、平成24年から薬学教育が6年制になったことと病棟薬剤業務加算として100点が加わったこと、を紹介しています。調剤という概念が見直され、医薬分業における薬剤師の役割が変わりつつあり、こと、疑義紹介と薬剤費の削減や残薬減少、医師と協働で医薬品訂正使用サイクルが動くこと、そして病院薬剤師の役割も大きく変わってきたことを強調されています。
 
ここで狭間氏の発表内容を公開資料より拾い出してみましょう。タイトルは「在宅支援から見えてきた薬局・薬剤師の果たすべき役割」でした。薬剤師の在宅や居宅療養患者への管理指導料が加算されルようになり、薬剤師の在宅・介護医療での質や効率の向上に寄与していますが、特に6年制の薬剤師がこれから世に出てきてチーム医療の大事な担い手になることから、薬剤師の役割は大きく変わりつつあり、医療現場も変わらねばならない、という趣旨ではないかと想像します。医師であり(呼吸器外科医)、薬局経営に関わり、そして薬剤師の生涯教育、特にバイタルサイン教育、でリーダーシップを取っている同氏が選ばれたのは当然でしょう。同氏のメッセージはが薬剤師の職能拡大へと向いていることは、6年制終了の薬剤師の参加だけではなく、既存の薬剤師の活躍を期待してのことで、規制緩和という切り札の中での同氏の発言は大きな意味があるでしょう。因みに、今朝のTBSの放送でも登場していました。

まとめますと、医薬分業という医療制度上の理想像と現実との乖離がまさに規制改革の対象になってきているということでしょう。構造上というそもそもおかしな規制が長年続いていたわけで、薬剤師の役割が変わりつつあるこの時期に、見直し議論が熱くなってきたということです。個人的には、この議論は大衆薬のネット販売という規制改革とは別の、医療体制に関わる大事なことなので、6月の答申までしっかり議論を進めてほしいと思います。狭間氏は継続して発信しいって欲しいと思います。私は、配布資料もとにこれを書いていて肝心の議論を聞いていないので、何とも締まりのない内容であるはありますが、今回はその範囲で書かせてもらいました。実際の議論については情報を集めてみます。
薬を貰う側が院内処方より割高になることが適切なのかは議論の余地があるでしょうが、調剤薬局にしろ、病棟薬剤師にしろ、薬剤師が説明や受け渡し、フォロー、医師との連携について信頼される役割を果たし、在宅医療の現場や普段のコスト面でも信頼されるようになるには、まだまだ薬剤師側の努力(生涯教育の充実)と医師側の理解と協力が必要と思います。薬剤師がここで頑張って欲しですし、関係者は特に6年制卒の薬剤師の行く先(受け入れ先)や、専門性の生涯教育に尽力してほしいと思います。

明日は、兵庫医療大学の第3回の卒業式(学位授与式)がありますが、薬学部卒業生にはこういった医療環境の変化が目の前にあり、そこでの新薬剤師の活躍が期待されていることを自覚して巣だって行って欲しいと思います。

 野沢温泉でのスナップを掲載します。野沢の風情を懐かしく思われる方も多いかと思います。





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