2015年9月14日月曜日

臓器移植関連学会協議会


 この夏からの異常気象、特に記録的な集中的豪雨は、先週とうとう甚大な水害を起こすに至った。茨城県常総市では津波のような洪水で、水害の恐ろしさを見せつけた。宮城県でも洪水が発生している。これを書いているなかで阿蘇山の噴火も起こっていて日本中で自然の脅威が続いている。水害被災地の一刻も早い復旧を願うものである。
さて、昨日は日曜日であったが東京で臓器移植関係の会議があった。臓器移植に関連する学会や研究会などが一堂に会して、臓器移植の円滑な推進を進めるための協議会で、始まってもう10年近くになる。厚労省の管轄する会ではなく、アカデミアが集まって現場の意見をまとめて国に提言する会である。東京女子医大小柳名誉教授が代表世話人である。私は日本心臓移植研究会として参加している。当初は移植に直接関連する学会と研究会であったが、今は外科系だけでなく内科系、そして提供に関わる救急医学や脳神経外科関係、透析医療や小児科関係、看護関係、臨床倫理学会、など総数40近くになっている。厚労省の臓器移植推進室から室長がオブザーバーで参加してもらっている。
日本臓器移植ネットワークの混乱もあるが、それは報告のみで、昨日はなかなか中身の濃い議論があった。その中の大事なことを紹介する。
一つ目は法的脳死判定の前に行ういわゆる臨床的脳死判定についてである。患者さんが脳死状態になった後に主治医が家族に臓器提供の選択(オプション)提示する際、何処まで厳密な脳死判定が要るのかについては議論があった。法的脳死判定に近いものが要求されると、提供の場合には脳死判定を3回も繰り返さないといけなくなり、患者さんにも現場にも大きな負担になる。このことについては、今回厚労省は、法的診断の前は「脳死とされうる状態」と定義して、各施設が普段の臨床での検査に準じて判断して良い、ということになった。さらに法的脳死判定ではその施設に2名の資格を有する医師が必要であったが、1名は外部の施設からの応援でも良いこととなった。がんじがらめの規制からようやく現場の意見が取り入れられ、緩和されたことは歓迎すべきである。
その他、提供施設の負担軽減策や心臓移植の18歳未満のレシピエント選択基準が少し変わったことなど紹介されたが、もう一点は、厚労省の関係委員会等で決めたことはないが、大事なことが議論された。小児の脳死での臓器提供では虐待がないかの判断が必要である。これが大変難しく、児童相談所や警察への問い合わせなど、その手続きが家族への負担となり、結果的に臓器提供に至らなくなった事例が少なくないことも指摘されている。このことは私自身、かねてより何とか現場に負担なくスムースの判断できるようにならないかと思っていたので、協議事項にはなかったが厚労省の室長に現状について、また今後の対応について質問させてもらった。以下その内容である。
ガイドラインには虐待について、虐待があったり、その疑いがあれば提供が出来ないとある。しかし、どういう場合に疑いとするのか、どこまで虐待の否定を徹底するのか、など現場では難しい判断が求められる。この問題については、特に新たに行政で何か決めたということではなかったが、厚労省は何とか円滑な手続きが出来るよう説明や配慮をしているとのことである。児童相談の協力もそこに含まれているようであった。厚労省の対応はさておき、参加学会で関係する所から実際の問題点や要望などが出され、結構盛り上がった。小児科や小児救急の先生方からの現場で苦労されていることと、具体的問題提起もなされた。要は、虐待の可能性のない、ということの証明をどうするのかについてもう少しはっきりさせて欲しい、ということであった。予定外の話しではあったが、有意義な議論がなされたと思っている。今後、行政とこの協議会がより詰めた協議をして欲しいと要望させてもらった。

ということで、臓器提供の仕組みもようやく角が取れてきた感じがするが、臓器提供を根本的に増やすことについては、まだまだである。しかし、国会議員の有志の集まりがあって(臓器移植停滞に関する解決策を見出す勉強会)、臓器提供でない場合の脳死判定料算定など検討されているようで、その動きにも期待したいところである。日曜の午後、2時間の会議であったが、何か少前進していることを感じながらの新幹線での日帰りとなった。

  補足:
 改訂された大事なポイントを忘れていました。
 法律のもとでの脳死判定は2回行われ、死亡診断書が書かれるのですが、これまでレシピエント候補へのドナー情報の連絡(施設へ)は6時間間空けた2回目の判定が終わらないと出来なかったので、受ける側の判断の時間的余裕がなく、かなり慌ただしく患者さんへ説明等が必要でした。そうしているうちに時間がたってドナーの循環状態も悪化する心配が出てきます。これまで、1回目の判定で仮ではあるがレシピエントの選定を始めて、ネットワークから施設への連絡をして欲しいと長く要望していたことです。それがやっと可となったとの報告でした。これで少しは移植施設側も余裕ができるのではと思います。ただ、移植ネットワークにこれまで以上の複雑な対応が求められることのないようにしてほしいと思います。以上追加です。