2016年2月23日火曜日

脳死臓器移植の課題は何か

 2月も後半に入りましたが関西でもまだ寒い日が続いています。さて今月は投稿がまだ1件止まりですので、何とかしないといけません。今年に入って学会も幾つかありました。全国学会では、1月の成人先天性心疾患学会(大阪)、2月は日本心臓血管外科学会(名古屋)、がありましたが、何か話題性に乏しくてこのブログに挙げるまで至っていません。とはいえ、名古屋では海外招請講演の一つの、米国での心臓血管外科シミュレーショントレーニングについての講演の司会をさせてもらっています。この話は後日に回して、今日は臓器移植の話にします。またか、という方もおられるかもしれませんがお許しください。
脳死での臓器提供数は平成227月の法改正後、それまでの年10件程度からここ数年は50件近くまで増えていることはよく知られていると思います。昨年は58件とその前の51件より増えてきています。心臓移植もやっと年間40例を超えるようになりました。とはいえ、小児心臓移植では厳しいドナー不足が続き、渡航移植を目指した募金活動が今も行われ、ニュースでも紹介されています。脳死での臓器移植を我が国で定着させ医療として受け入れられるには少なくとも今の2倍(年間100件)は必要であり、望むべくは年間200件でしょう。心臓移植希望者は毎年新たに100人以上が登録され、現在400人以上が待機しています。年間40例では10年かかる計算です。植込み型補助人工心臓が登場して、年間の植込み数は昨年では140例とも言われています。このギャップはどうしたらいいか、明白でしょう。再生医療への期待もありますが、かといって脳死移植を過去のものにしていくほど現実的ではありません。
さて、脳死での臓器提供がどういう状況であるのかはなかなか情報がありません。日本臓器移植ネットワークのHPでは実数とともにかなりリアルタイムの提供例が公表されています。啓発活動も行われています。しかし、その陰と言いますか何が問題かは見えてきません。論点整理ということでは時々新聞等での調査記事があり、家族の同意が得にくい現状も指摘されていますが、継続的ではありません。そういう意味では行政の役割も大事です。厚労省には臓器移植対策室があって、法律が出来て以来、毎年現状の報告がなされ、また何年かに一度ですが詳しい分析も関連委員会で示されています。私もかってその委員会(臓器移植委員会)に参加していましたが、この委員会も現在は年1回開かれるかどうかという状況のようで、外に出される資料は限られています。
厚労省は年1回ですが国会の厚生労働委員会で臓器移植の実施状況等に関する報告が功労大臣により行われ、その報告者が厚労省のHPに出ています。ただ、これも型どおりの実施状況であり、表に出ている数であります。啓発活動にはこれだけ頑張っているということも記されていますが、分析的なことは何もありません。臓器提供の現実的な課題を審議する場は臓器移植では最も大事な委員会である健康局疾病対策課開催の厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会でしょう。私も長らく参加し、多難なスタートとその後の展開に向けて重要な議論と決定がなされて来ました。最近は年に1-2回程度しか開催されていないのですが、ここでの議論や提示資料をHPで見ることが出来ます。第42回の議事禄を含めこれまでの議事録や資料が閲覧できます。http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei.html?tid=127745
ここ何回かの議論は、提供施設の負担軽減がメインのようです。これは大事なテーマであり、移植関係の学会等で要望していることであり少しずつ進展があり、その努力は評価されるでしょう。しかし、ドナーコーデイネ-ターの実情は触れられていません。言い換えれば、課題は何かという詳細な分析を示す資料は見えてきません。例えば、ネットワークにコーデイネーターの来院の依頼があったのが幾らあって、その転帰はどうなのか。提供に至らなかった理由は何か、等の改善すべき原点の課題の提示がありません。これは何処がやるのか、ネットワークなのか、対策室なのか、はっきりすべきではないでしょうか。
要は、臓器提供に関わる課題についての継続的な分析とそれに対する取り組み(啓発だけでなくです)が社会で共有できていないと思われます。関係者の努力が少ないとは決して言いませんが、焦点を絞って議論し、具体的改善策を出す、ということにもっと絞るべきではないでしょうか。その一つがドナーコーデイネ-ターの育成と充実です。増やそうにも人材が集まらないとすればその背景や理由は何かです。関係者はお分かりのことでしょうが、この課題は共有されているのでしょうか。提供に至った表の数ではなく、その基となるドーネーションの実態の詳しい分析を半年ごとでも公表すべきでしょう。

下の図は昨年までの脳死での臓器提供と心臓移植の推移です。