2017年3月23日木曜日

金沢市で日本循環器学会開催


 先週の週末は金沢市で日本循環器学会が開催され参加してきた。第81回という伝統ある学会で、循環器内科、心臓血管外科、放射線診断科、小児循環器、リハビリテーション医学、循環器看護、さらに成人先天性疾患も加えた我が国で心臓血管疾患の最大の学会である。会長は金沢大学循環器内科の山岸正和教授で、山岸教授は大阪(阪大、警察病院、国循)で長らく仕事をされ、仲間のような先生でもある。会場は金沢駅前のホテルと公会堂などで集約され、駅前地下広場は受付やクロークなどに当てられ、駅から直行で手続きが出来るという便利さも有り難かった。私は前日に東京で用事があり、朝一の新幹線、かがやきで金沢には9時前に到着し、聞きたかった心臓移植のセッションに間に合った。関東からは北陸新幹線開通で金沢は本当に近くなったのが実感できた。因みに、その前の週は役員をしている全関西学生スキー選手権大会が妙高高原であり、北陸新幹線、サンダーバードには何度もお世話になっている。
学会参加者は総数で13000人と発表されたが、実際はこれ以上の人が集まっている。金沢は新幹線も開通し駅前はホテルが集中しているが、学会参加で満員御礼、宿が取れなかった多くの人が近くの温泉から電車で金沢まで来ているという。地元新聞も大きく取り上げて、金沢及び近郊の経済効果は30億円という。これも新幹線効果か。
さて、3日間で沢山の会場似分けて多くの領域のセッションがあり、重点的に聞きに行き、発言もしてきたが、幾つか拾って紹介する。ただ、心臓血管外科のセッションは少なく201つ位かもっと少ないもので、外科医の参加者も年配者ばかりで若いのはあまり見られない。とはいえ、学会参加と共に教育セッションとか医療安全講習とか専門医の更新に必要なポイント確保が参加者にとって大事で、私もその一人。確かに専門医制度で学会が潤っている、という面も否定できない。
まず、先に述べた移植関係は、ガイドライン解説講演の1つで、「心臓移植に関する提言」、であった。この提言は今回公表されるもので、磯部光章教授心臓移植委員会委員長としての作成の意義と今後については聞きそびれたが、その後の臓器移植ネットワーク、適応判定委員会、補助人工心臓によるブリッジ、移植後管理、そして小児心臓移植と心肺同時移植では、それぞれの分野のリーダーが現状を述べた。私には提言としての位置づけははっきりせず、現状報告の感じであった。最後にフロアーから質問させてもらったが、心臓移植待機患者や移植後患者の登録データーベースがどう活用されているのか、これを科学的に分析して移植優先順位の改正をすべきではないかということであった。優先順位基準が国際的に見て旧態依然としている。待機中の無駄な死亡を減らすべく、ドナー不足ということで切り捨てるのではなく学会としてしっかり進めて欲しい、というお願いをした。磯部委員長からこれは大事なことで現在鋭意取り組み中である、と言うことであった。例えば、ステータス2という低い優先順位は現在ではまず移植に届かないが、2年後くらいから結構死亡される方が増えてくることもあり、改正の必要性が共同の認識であると思われたのは収穫であった。
その後、教育セッションを聞きに行ったことで、同時開催の「韓国と日本の合同セッションとして心不全の外科治療」は聞けなかった、プログラムでは、韓国2カ所の代表的施設からこれまでの一施設で600例といった大きな心臓移植の成績の発表があり、我が国からは澤教授が日本の話しをされた。韓国が年間心臓移植を日本の4倍の数を行っていること、我が国で20年を要した数が韓国では2年程度でこなしているということを我が国のマスメデイアは伝えてない。さて、教育セッションは心臓リハビリと血管疾患の血管内治療、であった。心臓リハは心不全や心筋梗塞後の管理では非常に重要な分野で、私自身も兵庫医療大学でリハビリ分野の方々と交流が始まり、自身の病院でも盛んに行われていて関心が高い分野である。テーマは、運動療法の主体は有酸素持久運動か筋力トレーニングか、であった。それぞれ心臓リハビリで有効性が示されているが、筋トレと言ってもアスレティックジムでボデイービルをするようなものではなく、レジスタンス負荷といって一定の負荷に対して筋力を回復させるものである。長期臥床で下肢筋力が落ちて歩けなくなった場合などにベッド上でも行われ、これは下肢だけでなく心臓にも効果があり、2つはそれぞれ役割分担があることも分かった。血管外科について省略する。
次いで紹介するのは、埋込型補助人工心臓(VAD)関連したものである。この領域は複数のセッションがあり、外科系や移植関連学会ではよく見られるが、循環器学会、内科系学会)、では異例のことで、時代が変わったという感じである。中でもVADの永久使用Destination TherapyDT) についてはホットな議論あった。推進派というべき移植医や心臓外科医がその必要性と治験の妥当性を述べたが、東京医科歯科大学の磯部教授が問題発言があった。教授はDTについて、私はDTを終末期医療と考えているので良く準備して勧めるべきであるという慎重論であった。このDT=終末期医療には他の演者から異論が出た。確かに最終的には終末期医療ではあるが、基本は前向きの医療であって、誤解を招くということであった。私としては、DTありきで進んでいる現状への警鐘として一部納得できることであった。現在、DTの治験が進んでいるが、それが終了した後の種々の議論の前倒し的でもあった。
もう一つDTについてはその後に研究会があった。その中で感心した発表は、東北大学の看護師さん(移植コーデイネーター)のものであった。現在心臓移植適応年齢が60歳から65歳に引き上げられているが、DTはこの年齢を超える患者さんが当面対象になると予想される。しかし、65歳以上の移植適応となるような患者さんの実態調査が全くなされていない現実がある。そこを考慮して、東北大学ではVADを移植ブリッジとして60歳以上(65歳未満)4症例に植込みを行っている。報告はその詳細であったが、年齢が高いことで体力の低下や長期心不全治療で抵抗力も低下し、管理に難渋することもあるという内容で、発表者はしっかり現実を見極めて、何が問題かを提示していたので素晴らしい発表であった。こういうことをしっかり議論しないでDTありきで進めるのはどうかと思う私の持論と共鳴するものであった。

長くなったので、第一弾はこれ位にします。





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