2017年10月9日月曜日

チーム医療再考

1週間ほど前になりますが、以前勤めていた兵庫医療大学の開学10周年の記念会がありました。初代学長という大役を6年間務めさせてもらった大学が今年10年(実際は11年)目を迎えたので参加してきました。兵庫医科大学の姉妹大学としてポートアイランドに薬学、看護学、リハビリテーション学(理学療法、作業療法)の3学部でオープンしたのが2007年でした。ボーダレス、チーム医療を旗印に掲げてのスタートでしたが、私が退職後も次期学長や教職員、そして法人(兵庫医科大学)の多大な支援により、新設ながら立派に成長しているのを見るのは嬉しいことです。チーム医療は医療現場では当たり前になってきていますが、医療系の学部教育でこれを掲げられたのは兵庫医科大との連携があってのことで、学部教育での合同チュウトリアルも軌道に乗っていて安心しました。かっの医学部出身の教員は、医学部学生と混成させた演習なんかうまくいかないのではと危惧していたが、見事に花を咲かせましたね、と感慨深く話していました。

さて、医療界ではチーム医療という言葉が氾濫しています。健康保険でチーム医療加算というのが続々出来てきて、また介護や先進医療での複雑な医療の展開が進む中でチーム医療をどう進めるか真剣に議論されています。先日も、日本手術医学会という学会が東京であったのですが、理事を務めている関係で参加してきました。この学会は、手術という場での沢山の課題を、多職種が集まって議論する学会で、外科医以外に麻酔科医、そして看護師、臨床工学技士、薬剤師、など多彩です。今回は東海大学の麻酔科の教授が会長でしたが、盛り沢山の内容のなかで、チーム医療や多職種連携、という名がついたものが目につきました。まさのチーム医療オンパレードで結構面白かったのですが、些か食傷気味の処もありました。

というのは、何か新たな医療を始めるにあたり、あるいは質の向上を目指す上、何か踏み絵みたいな使い方がされている所もあり、ちょっと待って、本質は別でしょう、と言いたくなる場面もあります。ひねくれた人間ですいませんが、本質は何かの議論が薄いまま(失礼します)で時代の流れで進んでいるようなことが多いのではと思います。そこで、本質云々でいうと、手術医学ではやはり外科医がどう思っているか、どう行動しいているかです。例えば、最近注目されている認定看護師や特定看護師制度、周術期管理では麻酔学会主導の周術期管理チーム制度、など手術がらみの新たな取り組みがあって、シンポジウムでも取り上げられました。演者は、日本看護協会代表、先進的病院の看護部長、そして麻酔科学会の重鎮、がそろっての議論でした。新たな手術管理認定看護師制度や特定看護師制度もあり、それなりに面白かったのですが、肝心の外科医がそこにはいなかったのです。そもそもこの学会はプロパーの外科医の参加は少ないのですが、何か物足りない結果に終わった感じでした。究極のチーム医療の場である手術における種々の課題を解決していくには、手術をする外科系医師の理解と協力がないと進まない現実があり、そこにはもう問題がないのか、という疑問が出てきます。大学病院や優れた教育的病院はいいでしょうが、一般の病院ではどうかでしょう。

多職種が関与する医療で、職種間、医師間のコミュニケーションが十分とれているか、それこそチーム医療がうまく動いているかの要と思います。今回の学会でも、この職種間のコミュニケーション、言うべきことしっかり言う、これが大事という教育講演もありました。チーム医療体制は保険加算を取るためのものか、という問題提議もありました。時代に流されてチーム医療!で浮足立つのではなく、例えば手術の現場では外科医(外科系)がどう対応すべきか、他職種の意見をしかり聞けるか、という本質の議論をもっと進めることが大事ではないか、というのが外科医としての感想でした。

最後に、医療者がチーム医療に積極的に参画するためには、それぞれの専門分野で自己研鑽が必要であると共に、チーム医療とは何かを各自が考え、自己の意見をしっかり言えるようにすることが今さらながら大事と思った次第です。何か、学長時代の卒業式の挨拶みたいになってしまいました。

兵庫医療大学の大学祭に行ってきたのでその写真を紹介します。大学のシンボルであるフクロウと目の前の神戸の海を取って、海梟際という名前です。







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