2014年6月10日火曜日

混合診療,その後

本日の朝刊には政府の新成長戦略のことが紹介されていましたが、読売新聞はその中の混合診療について詳しく解説しています。骨子は前回紹介したところですが、どうしても理解できないところがあり、再度書かせてもらいます。なお、私個人は,混合診療には基本的に賛成ということを断っておきます。というのは、心臓血管外科や人工臓器、臓器移植では、ドラッグ・デバイスラグで長年苦労して来ましたから。
さて紙面では、政府は9日「患者申出療養」(仮称)を来年度にも創設する方針を固めた,とあります。混合診療について〈1〉患者の希望に応じ、幅広い分野の医療を受けられるようにする〈2〉受診できる病院数を全国的に増やす〈3〉申請から2~6週間以内に受診可能にする――ことが柱,であり政府は今月決まる新成長戦略に盛り込み、来年の通常国会に関連法案を提出する,ということです。
私なりに解釈すると、患者さんの目線、意見、を優先すると言う趣旨で始まり、対象の診療はまず患者さんの希望がスタートであり、それをこれから決められるであろう医療機関に相談して、そこから申請する、という流れです。新規(前例がない)ものでも6週間、前例があれば2週間で診査を終了して決定する、ということが書かれています。
さて、論点整理に入ります。まず、スタートが何故患者さんなのか、です。一見市民目線で良いかなと思われますが、現実にはとても難しい所です。患者さんの希望するものが、医療の安全性や科学性、将来性を考えて納得できるものが出てくるのでしょうか。ガンですと患者さんは一生懸命に調べるでしょうが、それでも多くはあまり根拠のない、個人的な思い込みや科学性の乏しい情報に影響され、医療機関に問い合わせや希望が殺到する、ということになりかねないのではと危惧されます。
ついで、準備です。ここでは、まず厚労省とか行政がしないといけないことがあるのではないでしょうか。日本医師会は反対しているから調査には協力のは期待できないでしょうが、医療機関で患者さんから混合診療になる可能性のある希望が現実にどういうものが出ているのか、特に医師がどういうものを対象にしたら良い医療が出来るのか、患者さんに満足してもらえるのか、といった調査が必要でしょう。また、これまで先進医療に申請していながら認可されなかったものはどういうものがあるのか、も対象になるでしょう。そういうものを患者さんや医療機関が分かり易いカテゴリーに分類してまず開示する、ということでも始めないと混乱ばかりが生じてしますのではと思います。
こういう基本となる仕組みを,規制緩和といってないがしろにしては、それこそ日本医師会の言うような医療の混乱という心配が生じてくるでしょう。また、下世話な話ですが、混合診療を実施した時に医療機関は保険診療に限って診療報酬が請求できるのでしょうが、申請書作成や薬や器具の管理、フォローアップなど、担当する医師や医療機関の労力はどうなるのでしょうか。申請医療機関や医師は、患者さんとどういう契約になるのか、この辺りをきちんとしないと、それこそ医療現場は大変なことになります。
日本医師会も、我が国の保険制度の原則論から反対するのではなく、今の医療経済の危機的状態をどう乗り越えるのか、国際レベルの良い医療を迅速に今の保険医療に反映させるか、という視点から対応策を出すというスタンスも必要ではないかと思います。混合診療拡大は、医療機関を限定するなかで( これがキーでしょうが)、地域医療と家庭医の役割を担う多くの開業医の方々の関与もあると思うからです。
このような基本的なことは織り込み済みかも知れませんが、現状を整理すると、今の混合診療構想はかなり現実離れのところがあり、現場ばかりか患者さん側も混乱するのではと思います。全国医学部附属病院長会議や病院関連団体の意見がどうなっているのかも知りたいところです。漠然とした構想から具体的にこれからどういうことが進むのか、今から,要フォローです。

追加:ここでは混合診療として話を進めましたが、冒頭の記事の、「患者申出療養」(仮称),ということは、ひょっとして我々が考える混合診療とは別次元のものかも知れないという気がしてきました。

写真は先日参加してきました、丹後半島のサイクリング風景です(スタート地点)。これから100キロのロングライドです。