2016年1月11日月曜日

iPS細胞治療


暖冬でスキー場は北海道以外どこも困っているようですが、私自身今年はまだ出かけていません。体があちこち傷んできているので、もう少し準備してからと思っています。

さて、新年の話題と言えば再生医療、特にiPS細胞の話題が目につきます。読売新聞の元旦の一面が阪大のiPS心筋細胞シート治療が17年度には臨床治験申請、という大きな見出しです。その後も、各紙で山中教授も登場してここ数年でのiPS細胞の臨床応用の計画が出ています。高橋政代先生の網膜への移植の次は何か、神経(脊髄)、心臓、パーキンソン病、肝臓病、などが順次臨床治験を目指しているようだ。このようにiPS細胞の研究が加速されているのは、国が再生医療の臨床治験承認審査の壁を低くしたことによる。ここで大事なのは、臨床試験ではなく臨床治験から始められるということである。治験から始めることで、早期の保健医療での普及が期待される。筋芽細胞シートによる心不全治療が期限付きではあるか既に保険治療として認められ、先鞭をつけている。

今日のNHK-BS放送(再放送)では山中教授が登場してiPS細胞の現状と展望についてである。これから始まるであろう臨床応用のなかの有力な3つの応用が具体的に紹介され、山中教授の大事なコメントも聞くことが出来た。取り上げられた病気は、パーキンソン病、心不全、そして難病、であった。まずは、パーキンソン病で、京都大学iPS細胞研究所高橋淳教授はiPS細胞由来神経幹細胞を作製し、これからドーパミン産生神経前駆細胞を作製する研究を進めていて、動物実験(ネズミや霊長類)ではパーキンソン病の改善効果が証明され、これから人への応用への準備を進め行くとのこと。パーキンソン病にはこれまでドーパミン産生細胞の人への移植は試みられている。それは人工中絶した胎児の中脳を沢山集め、それを患者さんの脳に移植するものが主であった。また胚性幹細胞ES細胞から産生した細胞の移植も可能性があるが、共に倫理的な問題もある。高橋教授のiPS細胞を使ったこの研究はパーキンソン病治療への大きなステップになるであろう。因みに、高橋淳教授は網膜で世界初のiPS細胞を移植した高橋政代先生のご主人ということでした。夫婦そろってiPSの臨床応用に取り組んでおられるわけです。山中教授のコメントは、大量の細胞が要ることでガン化のリスクが高まること、脳内に植え込むので技術的に難しいことが課題と言われていた。しかし、山中教授の期待度も高いようであった。

心臓は阪大の澤教授の心筋シートで、映像では研究の進捗状況を山中教授のところで発表するところが紹介された。澤教授は17年度に臨床治験を申請するとのことである。阪大からの発表の途中で山中教授が立ち上がって、培養細胞分析であろうか、一つのスライドについてがん化の危険があるのではという部分を指摘されておられた。澤教授のこのことは想定内で、さらに改良していくというようなコメントであった。心筋シートはとてつもなく大量のiPS細胞が必要であり、精度が落ちてがん細胞が含まれてくるリスクが生じる。ただ、山中教授の最後のコメントで、リスクとベネフィットも考えないと、ということもおっしゃった。ほかに治療のない重症心不全への治療効果が大きければごく少ないリスクが許容されるか、という命題にも対応しないといけない、という意味かもしれない。重要発言であった。このiPS心筋シートは数年先には実施されて心不全治療の一つになることを期待するが、一方では巨額のコストがかかり、多数の患者さんに自由に応用できるのか、産業化が出来るのか危惧されるところもある。移植にとって代わる医療になるのかも未知数であろう。しかし、これを契機により簡便でコストのかからない新たな心筋症への細胞治療やサイトカイン治療が芽生えて来るのではないか、そこに興味ある。補助人工心臓との併用療法もしかりである。また、体に残っている心筋や血管になる幹細胞を体内で増やして心臓に集める、といったことが出来てくるのではないか。

もう一つは、難病への応用で、まれな遺伝的疾患治療への研究も紹介されたが、肝不全への応用でも素晴らしい成果が出てきている。横浜市立大学臓器再生医学講座の谷口英樹教授の研究である。この話は、別に書かせてもらう。

もう一つ別の話であるが紹介したいのは、本日のやはり読売新聞第一面でのニュースである。iPSで白血病治療、と出ている。京都大学では白血病細胞(がん細胞)を攻撃する免疫細胞(キラーT細胞)をiPS細胞から大量に作って、白血病患者に投与する、免疫療法への応用を計画している。まだ動物実験レベルであるが、19年に治験開始と書かれている。iPS細胞は何でもあり、という感じである。ただ、がん化のリスクが残っている(可能性はゼロに近いであろうが)細胞を血液中に多量に投与することは、新たな医学倫理的な検証が要るのではないかと素人的に思ってしまう。

ということで、今年は再生医療の話題で賑やかになりそうです。