2014年3月1日土曜日

  専門医制度と第三者機関


 昨日は私が理事をしている日本専門医制度評価・認定機構の臨時理事会と社員総会があった。この機構は四半世紀に渡って我が国の認定医や専門医の制度作りを担ってきたが、その大きな役割にも幕が下ろされることになった。というには、長らく学会主導で進めていた専門医に関する仕組みが、2004年に政府の規制緩和から広告できる制度に変わり、それから10年弱で大きな見直しをすることになった。その趣旨は、外形基準という枠組みをクリアーした制度を国が認める(広告できある)ということで返って混乱し、いろいろな専門医が学会という団体の存続や会員確保という思惑で乱立してきたことにある。このような危機感から、学会が仕切るのではなく専門領域で専門性を決めて、かつそれを認定するのは当事者ではなく第三者機関で行う、という方針を現在の機構が出したのが4-5年前である。これに厚労省は積極的に乗ってきて、これを機会に制度作りに国がより関与し、医師の配置を管理して行こうという考えであった。しかし、地域医療における医師確保を専門医の研修施設指定や認定の仕組みに入れようという思惑は学会(医師側)からの猛反対で消え去った。地域医療や医師の配置に専門医の制度を使うのはもっての外ということであった。厚労省も及び腰になったが、今の機構のスタンスとしては専門医研修(育成)については国民目線で考え、地域医療の確保にも配慮し、医師の不適正な配置を助長させない仕組みを作るとして、研修プログラム制の導入を決めてきた。
それまでは良かったが、その後が問題を引き起こした(と私は思っている)。今の専門医機構は学会主導であるからもう仕事は止めて、新しい専門医の認定や評価を扱う第三者機関が作られることになって、先般その具体的な内容が公表された。3月1日で新たな一般社団として登記するまで進んでいる。何が問題かというと、これは学会や医師側のエゴではなく、仕組み作りの根幹に関わる思想の問題であると思っている。今までの学会主導は悪いから第三者(中立的)でやるという、いわば実態からかけ離れた空論に自ら惑わされたのである。というのは第三者機関が新しい日本専門医機構として立ち上げることになり、その準備委員会が立ち上がったが、その中に日本医師会やいくつかの既存の病院関係団体がはいり、日本医学会が主導して組織作りが進んだ。私の所属する今の機構も池田理事長が組織代表で入っている。そして、定款ができ、発足時の社員(議決権がある)には学会関係ははいれないということで、日本医学会、日本医師会、そして全国医学部病院長・学部長会議の3団体で始めることとなった。設立後の社員としては、あまり馴染みのない二つの医療研修や医学教育の公益法人が入ることとなった。ここで注目すべきは、日本医師会や一時名前が挙がっていた病院関係の団体は何ら第三者ではなく、医師の確保では利益相反があり、特に今まで専門医制度に反対して来たのが日本医師会である。学会はダメという呪縛に振り回されて、実際の専門医制動作りで頑張ってきた学会は執行部の蚊帳の外において、実務はしっかりやってもらう、という仕組みである。自己矛盾である。
今の機構も、第三者機関設立の内容には口出しできない雰囲気ができてしまって、新機構の組織委員会からは報告程度であり、現機構の組織としての意見は出せないままで上意下達式に、まさに寄らしむべし知らしむべからず、方式である。医師の原点としてやってはいけないことである。先月の社員総会で上記の社員構成が紹介された。このような不可解なことが分かってきて、各学会は新機構の意思決定機関である社員に学会を入れろ、そうでなかったら参加しないことも有りうる、という強行意見が出された。その後、新機構の執行部もこの要求に折れる形で、何とか軟着陸させるということになり、昨日の臨時理事会と社員総会で事が決まった。今のこの機構の社員は総数85(学会がほとんど)あるが、基本領域の18と新たに出来る総合診療専門医を加えた19団体を新機構の社員に入れる案が議論された。結論としてこの要求を新機構の準備委員会である組織委員会に機構の機関決定で提案することに決着した。学会ではなく何らかの集団とすることであるが、曖昧な話である。学会という文言はダメという金縛りに自ら落ち込んでいるが、周囲からしたら猿芝居になるのではないか。第三者、中立、といっても国民目線の団体は入っていないことも不思議である。
前にも書いたが、世に第三者機関というのが盛んに出てくる。何が第三者か、世論への言い訳や、看板倒れもあるのではないか。専門医制度改革でも今はしまった、もっとほかの方法があったのではと反省している向きもある。というのは専門医資格を取っても、待遇が変わるわけでもなく、個人の時間とお金の負担ばかり増えて、得るところはあまりない。まだ先が見えてこない。厚労省も医師の配置での関与は薄れてしまっている。迷惑するのは若い医師では困る。米国の制度を見習おうとしたが、表目面だけに終わらなければいいが。
まあ、機構の理事もこれで終わることになり、新機構には関与する歳でもないので、好きに言わしてもらっている。理事会でも同様の物言いをしているが、物事を決めていく筋道を少し間違え、ボタンの掛け違いをやると、あとで修復するのに大変な時間と労力がいる。もう1年でもじっくり構えて、これから20年先の医療を担う若手医師の育成と医師の生涯教育を充実させるために英知を集めるべきではなかったか。時間に追われてのスタートになった。
何を言っているか、こうしてオールジャパンで意見を集めてのスタートであり、後は学会関係者がしっかり意見を言って、実行していけばいい。その場は作ったのに何を今更ぐちゃぐちゃ言っているか、という声も聞こえてくる。これからは外から成り行きをしっかり見ませてもらおう。ここまで読んでいただいた一般の方には、難しい込み入った話にお付き合いくださり有難う御座いました。専門医について書くのはこれで終わりそうです。