2014年9月20日土曜日

移植医療の現場もようやく自立の時代に


  昨日は厚生労働省で第32回の移植関連学会合同委員会なる会議が開かれました。私は日本心臓研究会の代表として参加でしたが、主要メンバーは移植学会や救急医学会、脳外科学会、循環器や腎臓病や肝臓病などの基幹学会など何の通り移植に関係する学会多数が参加しますが、研究会はオブザーバー参加です。この委員会は臓器移植、特に脳死からの移植に関する諸々の決まり事を審議して承認するところで、臓器移植の円滑な推進に向けて国が管轄する委員会で、日本医学会の会頭が議長で、行政の所掌は厚労省です。

さて、この委員会のこれまでを振り返ってみないと昨日の決定の意義が分かり難いので少しおさらいをします。脳死からの臓器が長らく封印されたなかで、何とか道をつけるべく政府の所謂脳死臨調が出来て、19921月にその最終答申が出ました。これは脳死からの臓器移植を概ね是とすることで、あとは法整備ととともに仕組み作りが始まったわけです。臓器移植は脳死判定や適応基準、そして施設認定、など複雑かつ重要なことをしっかり決めておかないと社会不信をもたらす危惧があり、関係する学会が一堂に会して議論し道をつけていく、という流れになった訳です。この委員会は、近く出されるであろう臓器移植法案を見据えて、適応基準や施設基準を早急に纏める必要があり、19925月に第1回が開かれています(議長は当時日本医学会会頭であった森亘氏)。議論が白熱したのは心臓や肝臓の最初の実施施設をどう認定するかでした。毎月委員会が開かれ、1年少しの間に10数回開かれ、1993年には心臓移植では学会や研究会が推薦した8施設が特定されるに至りました。その間、内科系と外科系、文部省と厚生省、の間でずいぶんやり取りがありました。また、この時点では最初の数例はこの中の代表的な数施設で行うべきである、ということも合意されていたようです。

その後、レシピエントの適応基準やドナーの条件も決められて行き、省令という形で通知が出されて行きましたが、だいぶ時間が掛かって1997年にやっと法律ができました。そしてその直後のこの委員会で、心臓移植実施施設は東は東京女子医科大学、西は阪大と国立循環器センター合同チームが認めらました。もっと自由度を求めていた心臓外科学会関係者もやむ得終えない判断として受け入れたわけです。ただ、再開の数例を、とおうことがドナー不足もあって追加認定は何年も掛かったしいました。移植に関連する諸々の決め事が、本来は学術団体主導(プロフェッショナル)で決めていくべきところが、関係学会合同委員会という名目上は学会を大事にしているが、後ろでは厚生省(現在厚労省)が付いるお上主導となったわけです。こと脳死移植については社会的要素が多いことから、官のお墨付きがないと何も動けなかったわけですが。

とういうころで脳死臓器移植において行政がこの合同委員会を足掛かりにして20年以上も管理(あるいはサポートかもしれませんね)してきたわけです。勿論、小児の脳死判定や臓器提供については学会だけで出来ないところを行政のサポートもあって前に進んだことも否定できませんが、一方で臓器移植が成長する中で、現場の実情に合わない取り決めも目立つようになりました。例えばある患者さんに心臓移植の適応があると移植施設で判断しても、循環器学会の承認の手続きに時間が掛かり、補助人工心臓の装着が遅れて亡くなる方も増えてきたり、何事にも大そうな仕組みであり、その簡素化や現場の判断優先主義でいいのでは、という意見が醸成されてきました。

昨日の委員会で決まったことは、移植施設認定をこの合同委員会が決めるという規定を見直す時期であるという考えが出されたことと、もう一つ重要なのはレシピエントの適応評価(判定)をこれまで学会の組織を通して決定するとう決まりを見直すと決定したことです。後者では、適応評価基準の見直し等は学会で決めてこの委員会には報告でいい、ということと、施設の実績で学会がある一定基準を満たしている判断した移植施設では、施設内だけの判定で移植ネットワークに登録してもいい仕組みに変えたことです。この恩恵を受けるのは多分、国立循環器、阪大、東大に3施設ですが、大きな進歩でしょう。

具体的な事項は別にして、かかる決定は再開以来15年近くに亘って積み重ねてきた実績がやっと認められ、本来のあるべき学術集団主導になってきたと考えられます。脳死臨調以来の、マスコミは別にして、行政主導の縛りがとれてきたことを意味しています。移植関係学会合同委員会も今では年一回も開かれなくなり、持ち回りしたりしていることで、その役割も終わりつつあるとも言えます。とはいえ、最も大事なドナーを増やしていく、という意味で臓器移植ネットワークへの支援を含め、啓発に力を入れていって欲しいと思います。ということで、表題の意味がお分かりになったでしょうか。
  敬老の日は淡路島のサイクリングイベント(150キロ一周)に参加、10時間の制限がありますが、今年も完走出来ました。
 
 

 

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