2014年9月30日火曜日

心臓リハビリテーション


    福岡での日本胸部外科学会が終わりましたが、表記について考える機会にもなりました。これまで医師の専門医制度や看護師や薬剤師の生涯教育など何回か取り上げたテーマですが、最近少し考えることもあり、取り上げてみます。このテーマは医療の質の担保や安全管理、そして何よりも医療にかかわる社会的資産(リソース)の有効活用に対する社会の関心や期待にも関わることです。ということですが、まずは医師の専門医制度から入ります。ポイントに絞って書くようにします。
医療専門職に限らず弁護士でもそうですが、国家資格を取ったとたんに生涯教育が始まります。医療専門職では臨床現場で患者さんの診断治療やケアをしながら先輩から教えてもらうオンジョブトレーニングが基本になっています。徒弟制度的なところもある中での自己研鑚です。しかし、基本は出来てある程度任されるようになっても、ある一定レベル以上の専門分野を任せられる能力や資質を育てるには限界があります。そこで、第三者が関わる認定制度といったものが必要になっているわけです。専門医やその他の職種でもそうですが、我が国では認定制度で括られています。しかし、米国や欧州ではそのバックに生涯教育、継続教育、という名称がしっかり出てきています。その視点が我が国では薄いと言わざるを得ません。
まず医師についての専門医制度改革です。ここ数年で認証(認定)制度が変わろうとしていますが、後に悔いを残しかねない大事な節目になっています。今回の改定の主旨はまず学会や医師会を中心としたギルド意識からの脱皮です。そして論点としては、①自分たちの領域の発展を専門医制度を通して考えるという視野でなく、医師初期臨床研修後に長く続く連続(生涯)教育の制度を作るという大きな目標が基盤にあるのか、②資格をとれば何らかの処遇改善や健康保険制度でのメリットが付くことを将来的に約束できるのか(インセンティブ)、③基本となる専門領域(内科外科では2階も含みます)では地域医療の充実にも貢献する視点を持っているのか(国主導の医師の地域配分へ反発して自分たちの都合で地域医療の問題を返って悪くしないか)、④国際的標準(グローバル)を考慮するのか、そして最後に⑤プロフェショナルオートノミー(学会の見識)を名前だけでなく自己評価を含めて適切に発揮できるのか、といったことかと思います。
すべてなおざりには出来ないことなのですが、ここまで目標を掲げるには今となっては議論や準備不足で、先に新制度開始年度が決まり本質的な議論や学会側のコンセンサス作りが出来ないままに進んでいるのが現状と思います。とはいえ、新たな制度作りに個人的に関わったことですが、トレーニング(後期研修)を指導責任者が病院群を作って計画的かつ実のある内容にする、所謂プログラム制、が曲がりなりにも始まることは大きな進歩と思います。このプログラム制を形だけにしないよう、特に最初の教育部分(認定プログラム)を充実させながら、それに外れた施設は更新制度(まさに継続教育です)で分担してもらう、など病院の役割分担(棲み分け)も必要でしょう。更新制度の柔軟な扱いや充実が専門医が臨床現場で信頼される道と思います。
身近なところでは心臓血管外科専門医や呼吸器外科専門医のことが今回の福岡の学会で議論されました。といっても自身はあまり参加する時間がなく、いろんな大学の先生とのお話で得たのがきっかけです。 新たなプログラム制はいわば旧来の大学医局制度の刷り直しでもあります。初期臨床研修制度で医師の配分制度が半ば崩壊し、地域医療にも影響が出ているのは明らかです。学生教育は文科省、医師になれば厚労省が、というふうに臨床研修制度を使って継続性のない医師育成制度にしたことの功罪が議論されてきました。医師を育て医学の発展に絶対的な役割を果たして来た、また果たすべき大学医学部や附属病院の役割が弱体化し、若手医師に人気がなくなり、ひいては必要悪?(私自身も関わってきた責任がありますが)でもあった医局制度(関連病院への人事権)がかなり崩壊したわけです。このままでは医療は崩壊する、という危惧もあり、新制度でのプログラム制はある意味、大学医学部講座(あえて医局とは言いませんが)の頑張りを期待(復権)してのことであると私は大きな声では言えませんが思っています。
ただ、ここでまたぞろ旧態依然とした医局体制が復活してはいけなのです。プログラム制認定基準の基本は示されていますが、各制度はこれをどう組み込むかが注目されます。外科系では研修医(レジデント、卒後3年以降)にしっかり手術経験をさせるために、一つのプログラム(病院群)で必要な手術総数があり(指導者数も大事です)大凡の受入数が決まってきます。これがある意味外科系のプログラムの基本になります。しかし、この数に捉われて、無理に病院を集める(まとめる)という、あるいは巨大なプログラムを作ってしまっては、悪い意味での古い医局制度を復活させてしまう危険があります。
医学部の外科系教授はこれから大変苦労すると思いますが、いくら風呂敷を広げても全国で来る人数(心臓外科ではせいぜい200人位)は大体決まっています。3-5年後に検証が始まったときに、その内容が問われることのないように、具体性のある計画がいります。こういう苦労を積み重ねて行くことで外科系志望者が増え、地方にも若い外科医が行くようになっていくことを願うわけです。そういう意味からも、第三者機関や各制度のプログラム認定委員会の役割は大きいと思います。現状の医療を混乱させないことも大事ですが、それがために何も変わらなかったではそれこそこの制度改革は失敗します。

大学の指導者も、最初の論点の①をよく考えて欲しいし(これは国の問題ですが)、プログラム作りで大学間の無駄な軋轢を生まないよう、地方大学(こういう表現は使いたくないのですが)で外科医の育成に頑張っている教授やスタッフの意見をよく聞いて、都会主導ではない制度作りを是非して欲しと思います。現実離れしていると言われそうですが、敢えて老婆心としてのまとめとメッセージです。