2015年10月12日月曜日

熊本での移植学会、続報


 

 熊本の日本移植学会の続報が遅れていました。ノーベル賞で日本人研究者のダブル受賞があり、それに圧倒されたので少し筆が止まりました。

熊本では沢山の特別企画があったのですが、小児での臓器移植のセッションのことを一部ですが紹介します。途中から聞いたので、限られてしまいますが、印象的だったのは国立成育医療研究センターの笠原群生先生の小児での肝臓提供と肝移植でした。我が国では小児の肝臓移植は年間約120例程度に行われれてその生存率は5年で85.7%と良好とのこと。疾患は主に先天性の胆道閉鎖症(7割)であるが、緊急性が求められる急性肝不全や肝腫瘍で不良とのことで、これらについては適応時期の適切な判断が要るとのことであった。小児肝移植は当然ながら生体肝移植に頼っていて脳死肝移植は限られる。しかし改正法施行後、小児の82例が脳死肝移植登録したが脳死からの移植は14例に行われている。注目すべきは、そのうち9例が成人からの脳死肝臓提供であった。

これはサイズの大きな成人ドナー肝臓の一部(分割移植)を小児に移植するという技術進歩によっている。小児ドナーが極端に少なく、生体肝移植にも限界があることから、肝臓では成人ドナー肝の分割移植によって小児も恩恵を受けているのである。小児を対象とした分割移植技術の進歩は目覚ましく、肺移植では岡山大学の大籐先生が新術式を開発しているが、肝臓でも目覚ましい進歩である。心臓では補助人工心臓が繋ぎでの役割をもつが肝臓では人工肝臓は未開発で、緊急時には難しい生体肝移植の代わりに脳死での分割移植を成人肝移植チームとの協力で進めるのがいいとの笠原先生のメッセ―であった。

もう一つは、大阪大学心臓血管外科の上野講師から小児の心臓移植の発表があった。そのなかで、小児からの臓器提供ということで以前紹介した心臓待機の子供さんからの脳死での臓器提供の具体的な内容の報告があった。ドイツ製の補助人工心臓が治験制度の縛りによって救えなかったという報道であったが、実際はそれを使えるように準備していたが、その前に脳梗塞を発症した都いうことであった。結果的には小児補助人工心臓の認可が早まり、またその子供さんの脳死での心臓以外の臓器提供もなされた訳である。

ここで、私がフロアーから発言させてもらったのは、先にも書いたことである。臓器提供者とレシピエント側がお互い接点を持たないようにすべきという脳死移植の古くからのポリシーについてである。もうここまで成長した脳死臓器移植で頑なに守られているのは如何なものか、状況によって提供者の遺族の意思も尊重していいのではないか、というボールを投げさせもらった。行政の上から目線でのこのポリシーの遵守への暗黙のプレッシャーには違和感を持つものであり。座長は、米国ではその縛りは緩くなっていることも紹介され、今後の課題ということで締めくくってもらった。

小児の脳死での臓器提供には社会の理解ととともに、マスコミの理解と支援が必須である。