2015年1月14日水曜日

補助人工心臓の話題-2

 前回は補助人工心臓の話題でしたが、その補足ということで科学雑誌Newton(ニュートン)に掲載されていた内容を紹介します。この雑誌は科学についてイラスト付きで解説するユニークなもので、昭和56年から始まっている息の長い人気雑誌です。昨年の11月号に補助人工心臓が紹介されているといことを教えてもらいました。人体大図鑑の特集で、その中に心臓の解剖や働きが紹介され、心臓病の所に特別インタビューがありました。一人はロバート・ジャービック博士(米国、ジャービックハート社社長)、もう一人は日本人ですが中好文コロンビア大学医学部外科学教授(米国ニューヨーク)です。ジャービック先生は人工心臓開発の世界のリーダーで、完全置換型(完全人工心臓)であるジャービック7(セブン)を世に出しました。この完全人工心臓(自己の心臓は取り除いてしまう)1982年にヒトに植え込まれ、その後は名前が変わりましたが今でも使われているものです。このジャービック博士がその後に開発したのがジャービック2000で、それまでから一転して小型で心臓を残す補助人工心臓です。2015年以降、我が国でも使われているものですが、ニュートンではこのジャービック2000についても詳しく解説されています。
個人的な話しになりますが、阪大時代1997年の臓器移植法成立の前から心臓移植を我が国で進めるには長期の待機期間を乗り切れる植込み型補助心臓が不可欠であると考えていました。そして在職中に拍動型のノヴァコールやTCIハートメイトを導入していったのですが、当時から米国では拍動型ではなく連続流ポンプの技術が進んで一気に小型化されていきました。連続流ポンプの方が体に優しく合併症も少なく、何より病院から退院できるメリットがありました。また、移植への繋ぎではなく、永久使用も始まっていました。そういう中で海外の学会などでジャービック2000が小型で性能が良いことから日本人に適していることに注目しました。日本びいきの米国のフレイジャー博士(テキサス大学)がこのポンプを日本に導入したらと応援してくれ、私自身もジャービック博士と可能性を相談をしてきました。
このジャービック20002013年に日本でも認可されていますが、実は2005年に日本で最初に阪大病院で植込みを行っています。私が阪大を定年で退職したのが20053月なのですが、退職前にジャービック博士から日本で使うなら阪大病院でやっても良い、という連絡が来ました。私は退職しましたが、当時の澤芳樹准教授や後に千葉大教授になった松宮護郎講師と相談し、臨床試験ということで医学部の承認を取ってもらうことが出来、2例に植え込んだのがその年の10月頃だったと思います。フレージャー先生にも来てもらったのですが、教授不在の時にもかかわらず、臨床治験前の試験的な使用が出来たことは阪大病院の太っ腹なことを物語っています。
ジャービック2000が日本で認可されたのは2013年ですから、試験導入から8年も経っています。それでも最近は移植のブリッジですがポンプが90グラムと小型であり、小さな体格の患者さんやポンプ本体が心臓の中に入ることから心臓の構造的な異常のある症例で選ばれているようです。また、ベアリング(軸受け)が当初のピン型からコーン型に変わって血栓の問題がかなり少なくなったことも後押ししています(このことはニュートンには記載ありません)。欧州での永久使用では外部のバッテリーとコントローラーに繋げルケーブルをお腹ではなく皮下を通して頭まで進めて耳のうしろから外部に出すものが使われ、現在の最長は9年弱ということです。この耳のうしろに出すケーブルは日本では認可されていませんが、永久使用の適応が認められればこの方法がとられるのでは思います。
さて、もう一人のインタビューの相手である中教授は阪大心臓外科の同門で、米国に渡って22年になり、ニューヨークのコロンビア大学医学部の心臓外科で臨床に従事して15年ほどになります。移植と補助心臓チームの責任者です。中教授は米国での補助人工心臓の現状を説明し、主にHeatMate-IIという機種を主に使っていてジャービック2000は現在臨床治験中とのことです。記事には、移植への繋ぎと永久使用がコロンビア大学では半々位ですが、移植への繋ぎは主に65歳までで、それ以上は永久使用、という仕分けで、境界線上に沢山の患者さんがおられるとのことです。永久使用ではジャービック2000の耳のうしろにケーブルを出すのが感染症が少なく、また水泳やお風呂にも入れるので、日本人向きというお話しです。ジャービック博士も、永久使用ではスキーやサッカーをしている方もおられ、人工心臓を植え込んでいると言うことを忘れる位に体に馴染んでいるとも言われています。
といったことでニュートン記事の紹介というか受け売りになってしまいましたが、これから具体的な話しが始まる永久使用について一般の方によく分かる内容で感心しました。

補助人工心臓の話題はこれ位にして次のテーマを探します。
Jarvik Heart社のHPから写真転載です。 
心臓左心室に埋め込まれた本体。
耳の後ろに回すケーブルのシェーマ 青色矢印は皮下トンネル、緑矢印が外のケーブルとコネクション部。灰色矢印が携帯型コントローラー。黄色矢印がバッテリー。