2015年1月7日水曜日

 今年も補助人工心臓が話題です


  年始から全国的に厳しい冬となっていますが、皆様は如何過ごされたでしょうか。今日7日は七草粥の日で松の内も終わります。正月気分から抜け出していよいよ仕事に専念、ということでしょうか。私は年末のスキーと温泉ぼけからまだ抜けきれなくてのんびり気分ですが、昨日は手洗い初日で大動脈基部再建手術に参加させてもらいました。幸先の良いスタートかと勝手に思っています。
新年第2稿はまた新聞記事からです。もともとこのブログも学長時代からですが朝の新聞記事から話題を拾い出すのが一つの楽しみでもありました。14日の読売新聞朝刊に補助人工心臓について取り上げられていました。以前から何度も話題にしている植込み型の永久使用(Destination Therapy) についてです。年末の22日に関連する学会が集まる協議会で決まったことの紹介でありますが、見出しは使用緩和、移植待機患者以外に拡大(学会指針)、とあります。

植込み型補助人工心臓は国産も含め我が国では2010年以来当初の2機種から現在は4機種、近々更に一つが参入します。なぜこのように植込み型が沢山出回っているのかですが、これは米国や欧州では心臓移植自体が多いこともありますが、移植適応患者さんへの使用、いわゆるブリッジ使用、以外に上記の永久使用が急速に進んでいるからです。遠心型や軸流型といったテクノロジーの進歩によって小型非拍動流ポンプが登場しこの世界は一転しました。血栓や感染対策も進んで、携帯型のバッテリーと小さなコンピューター装置ですから日常生活も可能になりました。退院して在宅や社会復帰出来るという大きなメリットがあり、国際登録では、2013年で永久使用が1114例と移植へのブリッジの640例を遙かに超える状況になっていますし、永久使用は年々増加傾向にあります。

このようなテクノロジーの進歩に対して、我が国では移植へのブリッジのみで認可(健康保険償還あり)されて、最近は年間100例になるほど植込み手術が増えています。ただ心臓移植は年間40例程度ですから、待機患者さんはどんどん増えています。この間、施設認定や実施チームの研修も進み、移植とともにその成績は良好であることより、適応の拡大を学会主導で進めてきたわけです。
適応拡大は二つの柱があるでしょう。一つは年齢、もう一つは医学的な要件で、共に移植の適応とならない重症心不全患者さんです。前者では今の移植登録は65歳未満が一応の決まりですから、65歳以上で年齢以外は心臓移植の適応基準に合い、本人が希望し、家族が支援できるといった要件になるでしょう。年齢の上限は指針では特に決めていません。でも、個人的予測では70歳前後までではないでしょうか。因みに私はぎりぎりの所にいます。ということですが、前にも指摘しましたが医療を受けるに当たって年齢制限を設けることは基本的にあってはいけないことなのです。そういう意味で上限は置かないことは正しいことでしょう。

もう一つの対象は、65歳未満でも免疫的なことやその他の臓器の状態、などから移植適応は難しいが、補助人工心臓治療は可能であると判断された方でしょう。共にですが、重症度は心臓移植に準じるか少し軽めになるかも知れませんが、基本はこの治療で5年程度の延命が出来、かつ社会復帰が出来る、ということです。新聞では、余命が5年以上、とありますが、従来の治療で5年以上ではなく、最大限の治療でも半年とか1年程度の余命ということです。

さて、これからどうなるかですが、厚労省がこの指針に対してどう対応するかが焦点です。手順としては、企業や研究費負担での臨床試験か臨床治験、というステップがまず必要です。これをどこで、いつから、そして何例にするのか、ということと、適応基準の具体案策定や施設認定(現在の認定方針との関係)など沢山の作業が残されています。いずれにせよ、デバイスラグの問題を学会が取り上げ、厚労省に陳情してから5年ほど経ちますが、補助人工心臓の普及ではいよいよ正念場にさしかかってきました。

この適応拡大は心不全治療のある意味のパラダイムシフトをもたらしますが、一方では医療経済、高齢者医療、終末期医療、医療倫理、など沢山の関連する問題が生じてきます。しかし、これを必要とする心不全患者さんは移植希望患者さんより多いはずですから、移植に限っていたこれまでの状況と違って、心不全に関わる多くの循環器内科医の理解も重要であります。ある意味、ここが一番の問題ではないかとも思います。
読売新聞の記事を掲載します(2714日、朝刊)。

 追記: 生命予後5年ついては説明不足でした。移植では適応にならない心臓以外の病気があるときは、専門家の判断でその病気自体の平均余命が5年以上、ということです。悪性腫瘍(化学療法を受けている患者さんは除外)とか糖尿病とか、肝障害、などでの話しになります。言い換えれば、心臓が元気になれば(補助心臓で)5年の生命予後が期待できる場合と言うことになります。また、補助心臓の機能として5年は維持できると言う前提です。少しややこしいですが、今後はQ/Aなどで解説があると思います。