2015年1月15日木曜日

補助人工心臓ー3


       補助人工心臓の進歩と今後の展開について書いた矢先に何とも痛ましいことが報じられた。デバイスラグが解消されつつあると言いながら、旧態依然とした国の認可制度の実態が浮き彫りにされた。拡張型心筋症で心臓移植が必要となった女の子が阪大病院で簡易型の心肺補助装置を付けて海外渡航準備中に脳梗塞を起こし、脳死となった。両親は心臓以外の臓器の提供に同意し、肺、肝臓、腎臓の移植が他院で行われた。ご両親が子供さんを亡くした悲しみの中で、同じように臓器移植を待っている他の子供さんへの思いから臓器提供となった。

今日の新聞ではご両親のコメントに、簡易型ではなく世界で使われている小児用の補助人工心臓が自分の子供にも使えたら、という思いからこの問題(目の前にあるものが制度の縛りで自由に使えないこと)をあえて出された。ベルリンハートという体外式ではあるが小児用のものが日本でもやっとその導入が始まっている。既に5例と思われるが治験で使用され、何人かは心臓移植にたどり着いている。しかし、制度上は治験が済んだ後の最終認可審査には更に1年といった待ち期間がある。治験後にも新薬と同様に救済的な目的で治験に準じて使用する道はあるがそう簡単ではない。阪大では簡易型の後でドイツ製を使う予定であったが、その前に血栓による脳梗塞を起こしてしまい、そのチャンスを逸したという。補助人工心臓でも血栓の危険はあるが、簡易型の心肺補助装置はよりリスクが高く、長期使用向きではない。外科医側も苦渋の選択であり結果だけで責めることも出来ないが、何ともやりきれない思いがする。

デバイスラグ問題では、海外で既に実績があって十分科学的な根拠が出ているものでも、我が国に導入するには書類審査、治験、そして最終審査と手続きがいる。時間は短縮され、デバイスラグはかなり改善したと行政はおっしゃるが、今回の子供さんの事例にはどう考えるのか。補助人工心臓では既に海外で実績のあるものでも、型通りの最小数の臨床治験が求められる。治験の症例数も以前は新しいものは40例、海外で実績があっても20例という時代もあったが、今では6例程度に緩和された。しかし、海外で数十例、数百例の実績があるものに、日本人は別と言って数例で試してみることの科学的根拠はない。海外でその経験を持つ心臓外科医も日本に沢山いる。まさにお役所仕事ではないか。この数例の治験に企業は多額の資金を投入する。その結果、認可された後の保健償還価格は海外の2倍にもなる。そうなると医療費が高いからと使用制限が出てくる。悪い連鎖である。

今回の子供さんの死を決して無駄にしないで欲しい、と皆が思っているであろう。このデバイスラグ問題への解決策を関係行政は遅滞なく進めるべきであり、学会関係者も更なる努力をしてほしい。