2015年12月7日月曜日

医師偏在と新しい専門医制度


      先日は外科系の専門医制度の会合が東京であった。日本外科学会が中心となって関連する学会の専門医制度の関係者が招集される委員会で、年2回ほど開かれる。私はかって認定制度から今の専門医制度に切り替える時に制度設計で、今度の改革ではプログラム制の基本案作りに関わったことから、この委員会では顧問という格好で参加させてもらっている。新専門医機構(もう辞めているが)の上から目線ではなく、かといって現場の勝手にならないよう調整役、といったところである。また、問題点があれば機構へしっかり意見が出せるよう、後押ししている。

外科専門医制度を含め基本領域と言われる18の1階に位置する専門医制度(学会ではない)では新たなプログラム認定基準作りに追われている。それは今年卒業した1年目の医師が2年間の初期臨床研修が終了し3年目からの後期研修(専門医性の修練)が始まるのが20174月であり、それに合わせて2016年秋には公募での募集が開始しなければならない。外科専門医は進んでいるが全体の大本でもある内科専門医制度はどうも遅れていて、種々批判が出ているようである。

さて、基本領域とは初期研修を済ませた3年目の医師が必ず一つの領域での後期の修練を選ぶもので、内科、外科、整形外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿器科、小児科、産婦人科、放射線科、精神科、形成外科、救急科、麻酔科、皮膚科、病理、臨床検査、リハビリテーション、そして新たに作られる総合診療専門医を合わせて18ある。これにサブスペシャルと言われる2階に位置するものが今の所29制度がある。外科の中の消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、は1階の外科専門医(所謂一般外科に相当するとも言える)をとった後の2階に位置づけされている。整形外科や脳神経外科が1階で基本領域として認められ、卒後(初期修練2年の後)ストレートにその分野に進めるのと大きな違いである。内科の2階には、循環器、糖尿病、消化器、呼吸器、糖尿病、血液、神経内科、など13領域がある。ことらもサブスペシャルと言いながら、臨床現場では基本領域扱いである。内科も外科もこの2階建て構造の持つ課題を持ちながらここまで来てしまった。

1階、2階の話はこれ位にして、今回は医師偏在に関係する大事な話にしたい。各専門医制度で修練施設病院群(プログラム)を作る際に、大都会の大学講座が関連病院を出来るだけ集めて何十人も修練医を集めてしまえば、地方の大学や病院は修練医がいなくなる。ひいては地域の病院のその分野の医師不足になる。勿論、たくさん集めた大学が地方への医師派遣をしっかりやってくれればいいが、そうはいかない。ここは機構も危惧するところで、この度出された注意点でも、地域医療体制について指針を出している。プグラムの申請状況をみて地域別に大きな偏在がないか検証することと、募集しても専攻医(後期修練医)がゼロというプログラムが出ないようにすること、そして地域全体で専門医を育成するよう配慮する、という内容である。厚労省への配慮であろうが、どこまで機構に強制力があるか、また専門医修練医師の分布に激変が生じないように、ということも書かれているので、対応は複雑である。いずれにせよ、この問題で社会的批判が出ないように各学会(制度)の自主的な配慮が求められる。

ここで新制度は大学医局の復権であると批判する見方もある。復権という表現は好ましくないが、初期研修導入前のように(地方)各大学が医師派遣において社会的貢献が出来るように戻す、という趣旨は大事と思っている。大都会の大学講座が復権といってさらにヒエラルキー(教授を頂点とする支配構造)を強くするのは時代に逆行するので、大講座の教授先生方はパワーで人集めするのは自重すべきである。

もう一点、外科専門医のプログラム認定を医師偏在是正(増悪)という視点から見ると面白い。今の所、基幹施設としてプログラムを申請する施設は200程という。ほぼ想定内で、大学が全国で80幾つかあって一大学で複数のプログラムを作るところもあるので、大学以外で基幹施設として手を上げるところも結構あることになる。大学医局復権という訳でもなさそうである。ところが初年度の想定募集枠は3,000近いという。アンケートでの3年間の数字と1年度の数字が混在しているようであるが、その3分の1ではないようだ。ここで最近の外科専門医制度修練に入ってくる医師は年間600800名である。以前2千人近くもいた時代があったが今はまだ減りつつある。希望は千人かもしれないが、毎年の卒業生は全国でせいぜい9千人であるから、外科に1割も来るのかである。昔、阪大で卒業生の3割もが一つの外科教室に来た時代があったが、外科が敬遠される今の時代にはそんなことは望めない。もし800人の予想人数に2千もの枠を作ると、要らぬ競争が起こり空席のプログラムが多数出来てきて、それこそ大混乱となる恐れがある。実数とあまり解離しない募集枠をもける努力をして欲しいとお願いしておいた。新制度で外科医の地域偏在が増悪か、などという新聞の見出しが出ないことを願っている。

ということで、新しい制度の実態が徐々に明らかになっていくが、医師の地域性偏在、専門分野別偏在の解消になるのか、注目したい。

 
 添付は、新たな制度の仕組みを表している。(専門医制度機構の資料から)